J新時代へ――“特別”な最終節を見逃すな

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 24年のJ1も残り1節、10試合となった。昨年は最終節を待たずに神戸が優勝を決めていたが、今年はまだ3チームに優勝の可能性が残り、かつ、3チームが降格の危機に直面している。

 

 しかも、優勝、もしくは残留を争う6チームのうち、実に5チームは敵地での試合となっている。最終戦を地元の大観衆をバックに戦えるのは、首位を走る神戸1チームのみ。これは、相当に大きなアドバンテージとみる。

 

 ただ、2位広島との勝ち点差はわずかに「1」。つまり、G大阪と戦う広島が先制点を奪った時点で、両者の立場は入れ替わり、また、神戸が湘南に先制されるようなことがあると、これまた得失点差の関係で広島が首位に立つこととなる。こうなると、3位の町田にもチャンスが出てくる。

 

 数ある競技の中でも、サッカーは先制点が極めて大きく意味を持つスポーツだが、この最終節に関してはまさに千金の意味を持つ。チームによって対応は違ってくるのだろうが、他会場の途中経過はすべてのベンチが把握しているはず。飛び込んでくる朗報、あるいは凶報によって、やるべきことや戦い方も変わってくる。

 

 では、どのチームが他会場に最初の凶報を伝えるのか。普通に考えれば、得点力の優れた広島が有利ということになるのだろうが、試合開始から15分までの得点数では、神戸、町田が広島を上回っている。これはもう、まったくわからないとしかいいようがない。

 

 いずれにせよ、最終節を迎えた段階で3チームに優勝の可能性が残り、しかも、3チームの勝ち点がすべて違うという状況は、なかなかあるものではない。当事者にとってはたまったものではないだろうが、第三者としてはドラマチックな90分を大いに楽しませていただくつもりである。

 

 残留争いに関しては、勝ち点、得失点差で大きく磐田を上回る柏が優位なのは間違いない。ただ、最終節の相手は良くも悪くも重圧から解き放たれた札幌。柏の立場からすると、相当にやりにくい試合となる。

 

 それでも、彼らの苦境も新潟に比べればまだマシかもしれない。勝ち点で磐田を「3」上回る彼らだが、得失点差の優位も「3」。もし、伝統的に極めて分が悪い敵地での浦和戦に敗れると、磐田が2点差の勝利を収めた場合は総得点の差で逆転を許すことになる。

 

 新潟としては、できるだけ早く他会場に凶報を届け、磐田の気持ちを折りに行くのか、はたまた、引き分け狙いに徹するのか。新潟「らしい」のはもちろん前者のやり方だろうが、この状況であれば、後者の戦い方を望む声も当然あるだろう。どんな結果に終わるにせよ、その戦い方は、今後の新潟というチームの哲学、方向性を決定づけることになるかもしれない。

 

 それにしても、同日同時刻にキックオフされる10試合のうち、6試合が特別な意味を持つという状況は、狙ってもつくり出せるものではない。まして、そのうち5試合は当事者にとって敵地での試合。いろいろな意味で、チームの、あるいはファンの底力が問われる状況となった。

 

 日本代表が圧倒的な強さを見せていることもあり、アジア各国のJリーグに対する関心も確実に高まってきている。来季のJ2には「RB」の名を冠した黒船も出現する。今週日曜日、日本各地で繰り広げられるであろうドラマは、Jが新たな時代に突入するための号砲になりそうな、そんな気がしている。

 

<この原稿は24年12月5日付「スポ-ツニッポン」に掲載されています>

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