いよいよ今シーズンもスタートしました。香川は4月2日、3日と福岡ソフトバンク3軍との交流戦2連戦。リーグ内での公式戦は9日からとはいえ、大勢のお客様にも球場に足を運んでいただき、選手たちはいい緊張感の中で試合ができたのではないでしょうか。
 2011年の開幕投手を務めたのは右腕の高尾健太。もう1カ月前にはこの日の先発を決めていました。彼が開幕で投げるのは3年連続3回目。ただ昨年は立ち上がりに失点するなど、決していい内容ではありませんでした。

 今年は本人にも「今シーズンこそ」という思いが強いのでしょう。誰よりも仕上がりが良く、2日の開幕戦でもストレートが走っていました。一冬を越えてスピードも140キロ近いボールが投げられるようになり、キレが増しています。NPB相手に昨年からの進化を見せられたと思っています。

 さらに上を目指すには、ストレートが良くなった分、いかに変化球をしっかり投げられるかが次のハードルになるでしょう。僕も現役時代、ストレートが140キロそこそこから、147、8キロにアップした時、スライダーの抜けが変わった経験があります。腕の振りが速くなった分、変化球を投げる感覚が微妙に変わってしまったのです。今の高尾も変化球では、やや腕の振りが緩んでしまう傾向があります。ストレートと同じ振りで緩急をつけられれば、もっと打ちにくいピッチャーになるはずです。

 2試合目に先発した左腕の前川勝彦も「今年こそ」と意気込んでいます。昨年と比較すると、彼もストレートが良くなり、3日の試合では143キロを計測していました。昨シーズンは安定したピッチングをみせていたものの、夏ごろからストレートの球速が落ちました。それだけに今シーズンは1年通してストレートでしっかり抑えてほしいと感じています。

 ソフトバンク戦で2戦とも最後に登板したのが、新人の冨田康祐(青山学院大)です。彼は現時点ではクローザーとして考えています。速球があり、フォーク、スライダーと合わせて強気のピッチングができる点が、抑えに起用した理由です。チームに合流した当初は、コントロールに難があったのですが、下半身から強化したことで、制球力もまずまずのレベルまで上がってきました。ソフトバンク戦では先頭打者を出さなかったことで2試合連続三者凡退。今後は走者を背負った時に、コントロールを乱さず投げられるかがポイントです。

 伊藤秀範が出遅れているため、現状、チームで試合に出られるピッチャーは7名と決して多くありません。ソフトバンク戦では、監督の方針もあり、その7選手全員を起用しました。4月末のゴールデンウィーク期間中には3連戦の後、1日置いて6連戦が待っています。ここを乗り切るには3番手、4番手の先発が不可欠です。

 その候補のひとりになりそうなのが、前回も紹介した高卒の河野(かわの)忠義です。実際にキャンプ、オープン戦で投げてもらうと、思った以上にフィジカルがしっかりしていました。最初はピッチングよりも体力強化を考えていただけに、これはうれしい誤算でした。まだストレートのスピードは130キロ台ですが、投げ方も良いので、この先145キロくらいにはアップするでしょう。セットポジションやクイックも一通りはできるので先発は充分に可能です。1、2年先でのドラフト指名を見据えてムリはさせないようにしながら、経験を積ませていきたいと考えています。

 やはり選手は実戦でプレーしないと成長しません。それはNPBも一緒です。今季からソフトバンクとは定期的に交流戦を実施することになりましたが、これはお互いにとってプラスになるでしょう。ソフトバンクのメンバーは育成選手中心で、1軍はおろか、2軍でもなかなか試合に出られない選手が多いように感じました。彼らもこういった機会がなければ、成長の機会を得られません。もちろんアイランドリーグの選手にとってもNPBを相手にするのは、いい目標ができます。ぜひ、この動きが12球団に広がるといいですね。そのためにも、香川が独立リーグ日本一の球団として、今季もその実力を示していきたいと思っています。


天野浩一(あまの・こういち)プロフィール>:香川オリーブガイナーズコーチ
1979年4月12日、香川県出身。高松東高、四国学院大を経て2002年、ドラフト10巡目で広島に入団。2年目には貴重な中継ぎとして49試合に登板した。06年オフに自由契約となり、翌年、香川に入団。前期は先発、後期はリリーバーとして41試合に登板し、7勝6敗13セーブの好成績で最多セーブを獲得。リーグ優勝および独立リーグ日本一に大きく貢献した。08年はプレーイングコーチとして福井に入団。23試合に登板し、0勝2敗8セーブと主に抑えとして活躍した。09年は藤田平前監督の後任として福井の指揮を執った。現役時代(NPB)の通算成績は121試合、5勝6敗、防御率4.45。
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