女子サッカー拡大へ。宮本恒靖会長の本気度

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 先延ばしになっていたなでしこジャパンの新監督に、ニルス・ニールセン氏の就任が決まった。デンマーク出身の53歳でデンマーク女子代表、スイス女子代表を指揮した経験があり、2023年からは長谷川唯が所属するマンチェスター・シティのテクニカルダイレクターを務めてきた。なでしこジャパン初の外国人指揮官となる。

 

 新監督の人選を国内にとどまらず海外まで広げて、今のなでしこジャパンにとってベストな人材を探ったことで時間が掛かったようだ。これには元日本代表キャプテンとしても知られる宮本恒靖JFA会長の意向もあったように感じる。

 

 宮本は2024年3月の会長就任会見で3つの目標を掲げている。その1つが女子サッカーの拡大。2031年の女子ワールドカップ招致を目指すことも明言している。

 

 6月にインタビューした際、2023年にオーストラリア、ニュージーランド共催の女子ワールドカップを視察し、女子サッカーの盛り上がりを直に感じたという。「伸びしろしかない」というのが宮本の感想だ。

 

 そして彼はこう言葉を続けた。

「スペインとイングランドの決勝戦には7万5000人もの観客でスタジアムがいっぱいになって凄い盛り上がり方でした。競技レベルも高く、エンターテインメイント性もあって、なでしこジャパンの戦い方も高い評価を受けました。(女子サッカーの)可能性をあらためて感じましたし、我々としても招致していく準備をやっていこう、と。並行して環境を整えていきたい。日本の競技人口は5万人ほどで、たとえばU―15のクラブを増やせていない現状では小学校を卒業してサッカーをやめてしまう子も少なくありません。U―15のクラブを全国的に増やしていくことも大事な要素の一つだと捉えています」

 

 2018年にFIFAが女子サッカーの発展に力を入れていくことを発表してから、欧州をはじめ急速に盛り上がりを見せている。JFAとしてもより本腰を入れていくということだろう。

 

 代表の強化、ワールドカップの招致、そして環境の整備。「なでしこジャパンがワールドカップで優勝したときのような状態にしていくためには、WEリーグがもっと輝いて存在する必要がある」との信念のもとWEリーグの副理事長にも就任し、リーグ改革にも自ら乗り出す覚悟を示している。国内リーグの底上げは代表強化、人気向上、競技人口拡大にもつながっていくからだ。

 

 女子の登録数で言えば、JFAの公式サイトによると2023年度末で言えば5万2083人で、全体の6.2%に過ぎないという。全体の水準を引き上げていくには女子の拡大こそが重要なカギを握っている。

 

 役員改選においてはWEリーグのアルビレックス新潟レディースでプレーする川澄奈穂美をJFA理事に加えたことがトピックとなった。

 

「女性活躍社会の推進というストーリーも大切にしたいし、何より川澄さんの知見、経験はとても参考になります。理事会でもいろんなことをシェアさせてもらっています。彼女はとても発信力があるので、そういったところも実は大きい」

 

 女性活躍の推進は、現代社会が取り組むべき課題であり、JFAとして重点ポイントに置くという強い意志のあらわれが川澄理事の誕生にもつながっていると言える。

 

 女子サッカーを文化にしていくべく「なでしこvision」を掲げ、1つに「サッカーを女性の身近なスポーツにする」と謳っている。

 

 実現するためにはトップチームであるなでしこジャパンが強くなければならない。前回のワールドカップ、昨年のパリオリンピックはベスト8。世界一奪還に向けて、これまで以上に丁寧に新監督の人選作業を進めたというわけだ。

 

 女子サッカーの拡大へ。宮本会長のリーダーシップのもと本格化していく2025年になる。

 

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