町野修斗、ニンジャになりてゴール量産

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 町野修斗がドイツの地で大暴れしている。

 

 ホルシュタイン・キールの1部昇格に貢献して迎えた2年目のシーズン、チームは下位に沈んでいるものの町野の奮闘が目立つ。

 

 年明け2戦目となった14日(日本時間15日)、ホームでのドルトムント戦。前半27分だった。相手のボールを奪い取った味方からパスをゴール前で呼び込み、そのまま右足で合わせてゴール左上に蹴り込んだ。狙いすましたコースに、正確無比かつ威力十分の一発。彼の充実ぶりが伝わってくるシーンでもあった。チームは町野の先制弾を呼び水に4―2で格上のドルトムントに勝利。降格圏脱出に向けて勢いがつく勝利になりそうだ。

 

 町野はこれで7ゴール目。欧州のビッグクラブから注目を集めるドルトムントのジェイミー・バイノーギッテンスや、レバークーゼンのフロリアン・ビルツらとともに9位タイにランクしている。リーグ戦はまだ折り返し地点であり、2ケタ得点はまず間違いないと見ていい。

 

 身長185㎝を誇る25歳のストライカーが順調にスケールアップしている。

 

 何でもできる万能タイプであり、守備のタスクもきっちりこなす。特に磨きが掛かっていると感じるのはポジショニング。味方からすれば〝いてほしいところ〟に、相手からすれば〝嫌なところに〟彼はしっかりといるのだ。

 

 2ゴール1アシスト(実質的には2アシストだったが)をマークした12月21日のアウグスブルク戦(ホーム)でも「位置取り」が光った。

 

 4―1で迎えた後半アディショナルタイム。町野が左からのクロスに対して正面に入ってワンタッチで渡した味方がゴール左に切りこんでいくと、ボールウォッチャーになる相手の視界から消えるようにファーへ。するとグラウンダーのクロスが届いて、フリーとなった彼は右足で押し込んだのだ。

 

 彼は元来、相手の目線を外す、惑わすことを得意としていた。周りを使いながら自分がフリーになる術とでも言えようか。気配を消すのが実にうまく、まさに忍者が敵から隠れる「遁術(とんじゅつ)」のようである。かつ、シュートチャンスのときには落ち着き払っているのも彼の大きな特長。ゴールばかりに前のめりになっていない。

 

 湘南ベルマーレ時代に一度、じっくりとインタビューしたことがある。表情を変えず、声色も変わらずで、なかなか感情を読み取りにくい。話を聞いた後にそんな印象を伝えると、彼は苦笑い気味にこう語ってくれた。

 

「何を考えているのかよく分からない、みたいに言われることもあります。そこはあんまり意識してないですけど(笑)。(精神的に)フラットな状態にしようとしているので、プレー中は自然体でそうなっているのかもしれませんね。

 意識的に、ゴール、ゴールとなったらリラックスもできない。でも逆にリラックスしすぎたり、ミスを怖れて半端なプレーばかりしていたら、ゴールを狙うシーンが来たときにそれを選択できなかったりというのも経験としてある。そのバランスを見ながら、うまくやんないといけないなとは思っています」

 

 精神的な「フラット」と「バランス」をうまく機能させているからこそ、周りをよく見て味方を活かし、逆に相手をあざむくことができる。そして何よりシュートチャンスで集中力を発揮できている。

 

 町野と言えばニンジャ、ニンジャと言えば町野。

 

 先のドルトムント戦でもゴールセレブレーションのニンジャポーズを披露。地元・伊賀の観光大使を務めており、「忍者の運命を僕が背負うくらいだと思っています。観光大使なので、しっかり任務を遂行していきます」とも語っていた。

 

 活躍を続けていけば、日本代表復帰も現実味を帯びてくる。冷静に任務をこなすニンジャストライカーとして、欧州の舞台でこれからますます注目を集めていくに違いない。

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