昔、ワイドショーに「なっとくいかないコーナー」という名物コーナーがあった。もし、平成の世にもこのコーナーが続いていたら、おそらくスワローズファンの誰かが投書していたはずである。「この記述は納得いかない」と。
 日本野球機構オフィシャルサイトをのぞくと、2010年度、つまり昨季の東京ヤクルトスワローズの成績は144試合、72勝68敗4分け、勝率5割1分4厘、4位である。これはいいとして監督の欄には高田繁とある。確かに昨季、スワローズは高田監督でスタートしたが、成績不振の責任をとって5月26日に“休養”を発表した。翌日からの98試合、“監督代行”として指揮を執ったのが現監督の小川淳司である。ならば彼の名前も付記しておくべきではないか。

 小川は代行就任時には19もあった借金を完済し、シーズン終了時には4つの貯金をチームにもたらした。彼が指揮を執るようになってからの戦績は59勝36敗3分け、勝率6割2分1厘。この勝率は昨季、セ・リーグの最優秀監督に選ばれた中日監督・落合博満の5割6分をはるかに上回る。
 だから小川こそが最優秀監督にふさわしかったのだと言いたいわけではない。私が「納得いかない」のは「最優秀監督賞」でありながら、誰が候補に挙がり、選出を巡ってどんな議論が交わされたのか詳らかではないことである。それとも「代行」はこの賞の有資格者ではないのか。

 ここで問題提起したい。パ・リーグの監督に贈られる最高の賞は「優勝監督賞」だ。これは議論の余地がない。ところがセ・リーグの場合は「最優秀監督賞」だ。つまり賞の理念として必ずしも優勝監督を選ぶ必要はないのだ。
 セ・リーグのアグリーメントによると「最優秀監督賞」は「セ・リーグ統括の上申に基づいて理事会が表彰することを適当と認めたもの」とある。ならば、どんな「上申に基づく」ものなのか、そこを知りたいのがファン心理というものだろう。

 もし面倒くさい、厄介だというのであればセもパ同様「優勝監督賞」にすればいい。その方がすっきりする。だが個人的には戦力の不均衡を前提に「優勝監督=最優秀監督」とみなさない米国式の方が納得できる。読者諸兄はいかがか。

<この原稿は11年5月4日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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