『ROUND AFTER ROUND.4』破壊と創造で築く王朝 ~D.LEAGUE~
日本発のプロダンスリーグ『D.LEAGUE』の24-25シーズン、3連覇を目指すKADOKAWA DREAMS(カドカワ ドリームズ)はROUND.5終了時点でレギュラーシーズンの首位に立った。ROUND.4からD.LEAGUE史上初となる2戦連続のSWEEP勝利。KEITA TANAKAディレクターと、今季からレギュラーダンサーに加わったKELOに話を聞いた。
まずはKELOのD.LEAGUEデビューとなった昨年12月5日のROUND.4について触れたい。テーマは「和魂躍彩(わこんやくさい)」。襖をギミックに使い、ダンサーを隠したり、登場を強調したりして魅せた。8人が8体のからくり人形のように妖艶かつ、不気味に踊る。得意のアクロバットなども織り交ぜ、DREAMSワールドに観客を引き込んだ。
メンバーのDaichiは、このラウンド終了後、「今回のポイントは大トリ。初めてのKELOさん登場で、自分たちがKELOさんと新しいものを見せるという目標と、皆さんの期待に応えつつも裏切ることをテーマにしていました」と振り返った。エースを任されたKELOは表情、仕草含め絶大な存在感を放っていた。“人間離れ”したようなオーラについて聞くと、本人は「音楽と、あの空間でKDのメンバーとつくっていく上で自然とああいう表情、表現になっていきました」と答えた。
全6項目を取ってのSWEEP勝利。対戦相手avex ROYALBRATS(エイベックス ロイヤルブラッツ)のディレクター兼ダンサーのYuta Nakamuraは「得点として見れば厳しい結果となりました。KADOKAWAさんたちが考えた計画がしっかりとハマッていた。CSっぽいネタ。項目をすべて抑えてきている。かつKELOさんのアーティスト性もすごかった」と完敗を認めたほどである。
このラウンド、実はKEITA TANAKAによれば当初は別の作品を予定していたという。男性メンバーのみの陣容はDREAMSとしては初の試み。「結果的に男子のみになった」とはKEITATANAKA。DREAMSの公式YouTubeで続編の存在を明かしていたが、次のROUND.5ではKELO+男性メンバーから、KELO+女性メンバーという布陣に変えて臨み、D.LEAGUE初の2戦連続SWEEP勝利をもぎ取った。
今季のDREAMSはチームの2連覇を支えた主力のMINAMIとRionが契約形態を移行し、レギュラーダンサーからは外れた。KEITA TANAKAはこう語る。
「かなりのチャレンジです。ぶっちゃけるとROUND.3までは全敗も覚悟していました。それでもチームを壊したかった。メンバーにも伝えましたし、KELO、Rion、MINAMIともたくさん話をしました。トライ&エラーを繰り返してやってきた。壊して再構築しながらも皆で手を繋いでいる。少しずつ、おぼろげながらですがかたちになってきたかなと感じています」
実は新メンバーのKELO、昨季のROUND.12でSPダンサーとして起用される予定だった。しかしメンバー登録申請がギリギリ間に合わず、実現しなかったのだ。今季は満を持してレギュラーダンサーとして加入。だが実績もあり、DREAMSのメンバーとの年齢差もある。ROUND.0でDREAMSの中にいる彼を見た時、私は異質な存在に映った。一方で浮いてしまうリスクもあるのでは、と。この点をKEITA TANAKAにぶつけると、「浮いていますよね。普通に」と笑いながら返ってきた。
「とにかく時間がかかると思っていました。今はある意味、表現できるようになってきましたが、僕が思っているものはもう少し先にある。まだ実験段階という感じですね。正直、負けることも覚悟していました」
その彼をあえて、チームに加えた理由を聞いた。KEITA TANAKAはひとつ間を置き、こう答えた。
「やっぱり、自分たちのKADOKAWA DREAMSを壊したい、と思ったんです。メンバーには『去年の自分たちのままではオワコンだ』と。常に創っていく。観ている方々もライバルたちも新しいものを見たいし、戦いたいと思っているはず。KELOという異物がチームに入り、KADOKAWA DREAMSを壊してくれることを期待しました」
壊すというと少々過激な表現に聞こえるかもしれないが、変化や進化のための必要な作業ということだろう。加入前からDREAMSの作品を追いかけていたというKELO。「KDの作品も好きですし、出ている選手たちとも交流がありました。こうやってチームに加われて自分は幸せです。ただこれはじまりに過ぎないと思っています。一緒にやってみて、どんどん進化していく確信はあります」と手応えを口にする。
KELOが既にしてチームにもたらしているものとは――。リーダーのKISAによれば「持っているアイディアやイメージを自分たちにシェアしてくれる。化学反応を起こし、今までになかったKDの色がひとつ増えた」という。DREAMSはメンバー30人の大所帯だ。それでもKISAは「チーム全員でつくりあげている作品だと感じています」と胸を張る。KELOにとってもメンバーの存在が刺激になっているのは、次の言葉からも明らかだ。
「これまで、いろいろなダンサーを見てきましたが、KDはひとりひとりの個性が強い。“こうしたい”“ああしたい”を自分の中に持っていると感じました。外から見ている時にはわからないことでしたが、いざチームに加入し、話していく中でみんなのダンスと向き合う姿、創作に対する意欲を知れた。こんなダンサーたちに会ったことがない」
今後に向け、KELOは「3連覇をするつもりで入ってきた。そこは絶対。世界にどんどん羽ばたいていきたいです。日本と言えば『KADOKAWA DREAMS』と、最初に思い浮かべられる存在になりたいです」と意欲を燃やす。以前、KEITA TANAKAは「日本人がなし得ていないタイトルを獲りにいきたい。ダンスに限らず、エンターテインメントの権威を。シルク・ドゥ・ソレイユに肩を並べるようなチームになりたいんです」と語っていた。それがDREAMSの目的地だろうか。
「シンプルにやるべきことをやる。その積み重ね。ただそれだけです」とKEITA TANAKA。やるべきことをやる――。これはKEITA TANAKAが常々、メンバーに話しているDREAMSのフィロソフィーと言っていいかもしれない。
(文・写真/杉浦泰介)