監督として初めてのシーズンが幕を開け、1カ月が過ぎました。24日現在、新潟アルビレックスBCは9勝8敗3分けで上信越地区2位。首位の群馬ダイヤモンドペガサスとのゲーム差は2.0です。ここまではよくも悪くも想定内の戦いをしています。昨季の成績を見た限りでは、得点は多くは望めないと考えていました。もちろん、得点力不足解消への対策は重要視していましたが、やはり急激に良くなることはありません。ですから、ピッチャーを中心に守り勝たなければならないと思っていたのです。その期待通り、ピッチャーがしっかりと抑えてくれていますし、つまらないミスでの失点もほとんどありません。あとは、得点力をどうアップしていくか、というところです。
 開幕して1カ月が経ち、私自身もようやく各選手の能力を把握できるようになりました。そこで最近では、適材適所を考え、打順を組み替えました。代表的なのは平野進也(東福岡高−武蔵大)。これまで5、6番に入れていたのですが、21日の富山サンダーバーズ戦から3番に起用しました。すると、21、22日(信濃グランセローズ戦)と2試合連続で打点を挙げ、24日の富山戦でも打点こそなかったものの3試合連続となるヒットを記録しました。

 平野が3番で活躍している背景には、4番の青木智史(小田原高−広島−HAL−マリナーズ1A−SFBC−ウェルネス魚沼−SB−セガサミー)が調子を上げてきたことがあります。開幕直後はケガもあって、なかなか本来の力を発揮できずにいましたが、ここにきてようやく力強いバッティングが戻ってきました。そうなると、相手のバッテリーとしても彼の前にランナーをためるわけにはいきませんから、特に四球で出すことは許されなくなります。ですから、3番打者と勝負しないわけにはいかないわけです。これが、4番打者が不調の場合、3番打者には四球になってもいいからと、ギリギリのコースで勝負してきます。打者の方としても「自分が打たなければ」という気持ちがありますから、ついついボール球に手を出してしまいがちになります。

 しかし、青木が復調してきたことで3番の平野は「自分が打てなくても、後ろには青木さんがいる」と、いい意味で楽に打席に入ることができているのでしょう。チームにとっても、3、4番に当たりが出てきたことは非常に大きいですね。とはいえ、得点力不足が解消されたわけではありません。24日も7安打で3得点の富山に対し、新潟は5安打で無得点に終わりました。チーム成績を見ると、安打数(163)はリーグトップにもかかわらず、得点と打点はその逆でリーグ最下位なのです。

 得点力アップのために欠かせないが機動力です。よく「機動力=盗塁」と考えられがちですが、何も盗塁だけではありません。例えば、ヒットとヒットとの間の打席を有効にすることも立派な機動力です。たとえ連打が出なくても、ヒットが出た次の打者が四球や、進塁打となるような凡打を打てば、チャンスが広がり、次につながります。例えば1死一塁の場面、次の打者が内野ゴロに倒れたとします。しかし、この内野安打で一塁ランナーを二塁に進められたのか、それともダブルプレー、あるいは二塁フォースアウトとなるのかでは、同じ凡打でも全く意味が異なります。こうした考える野球が、 今後の得点力不足の突破口の一つになると思っています。


<橋上秀樹(はしがみ・ひでき)プロフィール>:新潟アルビレックスBC監督
1965年11月4日、千葉県生まれ。安田学園高から1984年、ドラフト3位でヤクルトに入団。捕手から外野手に転向後、92年にレギュラーを獲得し、3度のリーグ優勝、1度の日本一に貢献した。97年に日本ハム、2000年に阪神に移籍し、その年限りで現役を引退。2005年に東北楽天のコーチに就任し、07年からは3年間、野村克也元監督の下でヘッドコーチを務めた。著書に『野村の「監督ミーティング」』『野村の授業 人生を変える「監督ミーティング」』(ともに日文新書)がある。今季より新潟アルビレックスBCの監督に就任した。
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