5年ぶりの決勝トーナメント進出にわいた前年から一転、昨シーズンの日本リーグでは7位に終わった伊予銀行男子テニス部。今シーズンは日本リーグ昇格に向けて、10年ぶりに全国実業団対抗テニストーナメント(日本リーグ昇格決定大会)に臨まなければならない。チームにとって、また専任監督として3年目を迎えた秀島達哉監督にとっても、今シーズンは正念場といっても過言ではない。果たしてチーム再建へのカギとなるものは――。秀島監督に強化ポイントについて訊いた。

 走り込みを中心に基礎体力の強化を図った1年目。競った展開になった際、流れを変えられる武器をもとうと、サーブ強化に努めた2年目。秀島監督就任後、伊予銀行は毎シーズン、テーマをもってチームづくりを行なってきた。では、3年目はどんなテーマを掲げているのか。
「今年はスピード系の練習に力を入れています。持久力はついてきたものの、実際のテニスではただ走っているわけではありません。コートの中で左右前後に振られながら、止まったり走ったりを繰り返す。そういった切り返しの速さについていくだけのスタミナが、うちのチームはまだ不十分。日本リーグでの最大の敗因もそこにあったと思います」

 秀島監督は日本リーグ後、チームには何が足りないのか、その答えを探し出そうと、学生チャンピオンを何人も輩出している早稲田大学やプロ選手の練習を研究した。すると、圧倒的な違いとして浮き彫りとなったのが、切り返しの速さを養うための練習だった。実際、その練習をさせると、若干の差はあれど、総じて弱いことが露呈したという。
「これまでは競った試合では後半になると、スタミナがもたなくなっていました。でも、ムダな動きをせずに切り返しが速くなれば、余計なスタミナを使わずに済むんです。そういう選手はどんなところに打っても、いつの間にか追いついていて、コートが狭く見えるもの。相手にプレッシャーをかける意味でも非常に大きい」

 そこで、これまであまり取り入れられていなかった「ボレー&ストローク」の時間を増やし、切り返しに必要な瞬発力のアップを目指している。もちろん、一朝一夕で身に着くものではない。しかし、着実に成長していると指揮官は確信している。継続は力なり――。今後待ち受けている舞台に向けて今が踏ん張りどきだ。

 さて、今シーズンの伊予銀行男子テニス部にとって、最大のヤマ場となるのは10月だ。例年通り、順調に予選を突破すれば、前半には山口での国民体育大会が控えている。そしてそれが終了すると、2週間も経たないうちに日本リーグ昇格をかけた実業団対抗戦が待ち受けているのだ。体調管理もさることながら、オムニコートの国体に対し、対抗戦はハードコートであるため、サーフェスの違いにも対応しなければならない。

 オムニコートとハードコートではボールへの対応の仕方がまるで違うという。オムニではボールが地面に落ちて跳ね返ってくる打球のスピードは比較的遅い。そのため、ベースラインでの粘り強さを強みとするグラウンドストローカータイプに有効だ。伊予銀行にとっても、力を発揮しやすいサーフェスといえる。一方、ハードはバウンドしてからの打球がグッと伸びるため、ビッグサーバーに有利なサーフェスだ。オムニからの場合は、特にスピードへの対応が不可欠で、慣らす時間が必要となる。しかし、国体と対抗戦との間は短く、加えてオムニは滑りやすいために足への負担が大きい。そのため、十分な休息も必要だ。

 今月14、15日、国体県予選を兼ねて行なわれた全日本選手権県予選では植木竜太郎選手と広瀬一義選手が決勝に進出し、7月の四国予選に出場することが決定した。順調に勝ち進めば、植木・広瀬ペアで10月の山口国体に臨むこととなる。つまり、彼らが国体から対抗戦へ、どのような状態で入っていくことができるか。これが、日本リーグ昇格へのポイントの一つとなる。

 例年以上に重責を負った今シーズン、奇しくも伊予銀行は新体制でスタートした。2007年からチームを支えてきた日下部聡選手に代わり、萩森友寛選手が新キャプテンに就任。さらに早稲田大学時代に2年連続で全日本学生選手権ダブルス優勝に輝いた佐野紘一選手が加入した。さらなる飛躍を求め、チームは今、時代の流れとともに変わろうとしている。いや、変わらなければならない時期を迎えていると言ってもいいだろう。ひと夏を越え、チームにはどんな成長が見られるのか。10月、伊予銀行の勇姿を期待したい。


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