トヨタV奥井章仁、2戦連続スタメン「80分間、愚直に」
30日、「NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25」ディビジョン1第6節を控え、トヨタヴェルブリッツがメディア対応。スティーブ・ハンセンHC、前節リーグワンデビューを果たしたFL奥井章仁がホストゲームの横浜キヤノンイーグルス戦に向けた思いを語った。

(写真:前節に続き、No.8でスタメン出場を果たす奥井 ©TOYOTA VERBLITZ)
2週間前にリーグワンデビューを果たした奥井。No.8でフル出場した福岡・ミクニワールドスタジアム北九州での埼玉パナソニックワイルドナイツ戦をこう振り返った。
「もらったチャンスをやるべきことはできたのが半分、できなかったのが半分。課題も見つかりました。1stキャップはうれしかった。相手はパナソニック。自分の立ち位置、現状というのはゲームに出ないと分からないこと。それが分かって良かった」
昨年2月、帝京大学卒業前にアーリーエントリーでチームに加わった。大阪桐蔭高校2年時に花園制覇、帝京大では1年時から出場機会に恵まれ、2年時からの全国大学選手権3連覇に貢献した。だが、リーグワンデビューは今年1月18日まで待たなければならなかった。大阪桐蔭高-帝京大で同期だったHO江良颯(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)らが一足先にデビュー。ヴェルブリッツで同期のFL三木皓正(京都産業大学出身)も開幕節(スピアーズ戦)でスタメン出場した。奥井は「悔しい気持ちもありましたし、同期の三木が出たことはうれしくもあった。そのうれしいと思っている自分が“情けない”とも思いました」と語った。
高校、大学とスタメンに名を連ねてきた奥井。屈辱とは言えないまでも、この現実を承服できるものではないだろう。
「何かをやろうとし過ぎていた。そこで自分を見つめ直し、もう一度自分のことに集中しようと。集中することでメンタルも揺らぐことはなかった」
チームはジャパン34キャップのFL姫野和樹、南アフリカ代表85キャップのFLピーターステフ・デュトイというバックローがケガで戦線を離脱。そこで23歳の奥井にチャンスが回ってきた。リーグワンデビュー戦では2つのスティール(ジャッカル)を決めるなど、アピールしたが本人は満足していない。
「80分間のパフォーマンスをもっと高めていきたい。3本ジャッカルを取りましたが、2本ペナルティーをしてしまっている。もっとレフリーに対し、クリアに見せるというのが課題。No.8で起用してもらっている以上、ボールキャリーのところでもっと存在感を出さないといけない」

(写真:デビュー戦は敗れたものの、好プレーが光った ©TOYOTA VERBLITZ)
とはいえ「身体を当てる部分は通用した部分もあったし、雰囲気を楽しめた」と手応えも掴んだという。スティーブ・ハンセンHCは試合後の会見で<「彼は非常に良いプレーを見せてくれたと思います。リーグワンでデビューするまでの長い間、準備をしてきた選手であり、チームの中でのリーダーの一人であります。非常に賢く献身的なラグビー選手であり、まだ伸びシロもあり非常に良い選手だと思っています>(「リーグワンHP」2025年1月20日配信)と評価した。「スタミナがあり、前後半走り切れる。スキルも備えているオールラウンダー」とは同じ帝京大学OBで、彼の5歳上のPR淺岡俊亮だ。
前述したように姫野とデュトイというバックローがケガで戦線を離脱している。その穴埋めとしてオーストラリア代表125キャップのFLマイケル・フーパーが電撃復帰。バックローの選手も補充したが、奥井にとっては定位置を掴むチャンスとも言える。実質ルーキーイヤーのため新人賞も狙えるが、奥井本人は「あまり気にしていないんです」と胸の内を明かす。
「トヨタのバックローは層が厚い。とにかくトヨタで出続けること。もらったチャンスをモノにしたい。メンバーに入ったからといって、ずっと選ばれる保証はない。毎試合、毎日のパフォーマンス次第。チームとしては誰が出てもいいと思うんです。強いバックローが揃っていますから。でもそこは代わらないように自分の持ち味を出し、残りたい。試合に出続けたい。毎日必死なので新人賞までは考えらない。トヨタのバックローで出る方がしんどいくらい」
今季のアーリーエントリーは母校・帝京大からPR平井半次郎、LO/FL青木恵斗、SO/FB小村真也が加入。これで帝京大出身は17人という大所帯となる。
「帝京の先輩に限らず、トヨタの先輩は優しい。僕が入った時も優しく接してもらったので、僕も後輩たちにそう接したい。あとはリーグワンのスタンダード、トヨタのカルチャーはしっかり伝え、チームに早く馴染んでもらうことで選手層は厚くなる。一緒に頑張っていきたい。後輩が来るのは楽しみ。同じFLの青木も来る。すごいプレーヤーではありますが、ライバルでもあるので、負けじと頑張りたいと思っています」
2月1日のイーグルス戦もNo.8でスタメンに名を連ねた。「自分が使ってもらっているのはディフェンスだと思う。タックル、ジャッカル、80分間、愚直にいき続けたい。あとはボールキャリーのところで、アタックの起点になりたいと思います」。プレシーズンから切磋琢磨してきた同期の三木はFLで先発出場する。「すごく楽しみ。まずは相手に勝つことにフォーカスしているので自分のやるべきことをやっていきたい」
ここまでヴェルブリッツは1勝1分け3敗で9位。満足のいくスタートを切れていないはずだ。週末、ダークグリーンの「8」が豊田スタジアムのピッチでどれだけ輝けるかが、今季の分岐点となるかもしれない。
(文/杉浦泰介、写真/©TOYOTA VERBLITZ)