東京山九フェニックス、接戦制しV3! ~全国女子ラグビーフットボール選手権大会~

facebook icon twitter icon

 2日、第11回全国女子ラグビーフットボール選手権大会決勝が東京・秩父宮ラグビー場で行われ、東京山九フェニックス(関東1位)がPEARLS(関西1位)を13-5で破り、同大会3連覇を達成した。大会MVPにはフェニックスの攻守を支えたCTB古田真菜が輝いた。

 

 HC不在という窮地を乗り越え、女王が王座を守った。

 

 体調不良の吉田永昊HCに代わり大隈隆明氏がHC代行として指揮を執るスクランブル登板にも選手たちは慌てなかった。「新体制になってから永昊さんと密にコミュニケーションを取ってきました。決勝前から永昊さんが寝る暇もないくらいやってくれていたのは分かっていました。“今日は永昊さんのために勝とう”と思っていました」とはキャプテンのLO佐藤優奈だ。このリーダーを中心にフェニックスは堂々と戦った。

 

 前半12分、素早いパス回しから最後は左サイドのWTB奥野わか花がトライエリア(インゴール)左隅に飛び込んだ。18分にはSO西亜利沙の突破で相手の守備網を崩す。西のパスを受けたFB松田凛日が迫りくるディフェンスをハンドオフで制し、ゴールポストの間にトライを挙げた。前半は10-0とリードして終えた。

 

 昨年も決勝で敗れているPEARLSも意地を見せる。前半からスクラムで優位に立ち、後半最初のスクラムも相手の反則を誘う。10分にはラインアウトからトライエリアに迫り、最後はNo.8齊藤聖奈がねじ込んだ。5点差に詰め寄った。

 

 その後は一進一退の攻防で互いにスコアを許さない。37分、フェニックスが途中出場の黒川碧のPGで1トライ1ゴール以上の差を付けた。残り3分間をボールをキープしながら時間を使い、ノーサイドの瞬間を待った。最後は80分経過を報せるホーンが鳴り、黒川がボールを外に蹴り出した。フェニックスが3連覇を果たした。

 

 チームを支えた佐藤という大黒柱の存在も大きかった。PO小牧日菜多はHC不在の時期を「リーダーを中心にいい練習ができていたと思います」と証言する。佐藤は準決勝後、自身のリーダーシップについてこう語っていた。
「今シーズンは新体制になってスタッフが変わったということもあり、結構主体性を持って選手たちで成長しようっていうところもありました。だから結構プレシーズンから関東大会まで、多分みんなが嫌がるぐらいすごいガミガミ言いながらやってきました。たふん私が言いたいことは言い切ったし、伝わっていると思う。あとは言ってきたこと、やってきたことを全部出せるように、最後はみんなが楽しめるような声がけをしていきたいなと思ってます」

 

 本人曰く「嫌がるぐらいガミガミ言った」とのことだが、チームメイトは佐藤をどう見ていたのか。
「自分にも厳しいんですけど、しっかり周りにも言うべきことを言う。たぶん優奈の背中を見ていたら、“ついてこう”って、みんなが思える。おそらくチームで一番ハードワークをしていますもう誰にでもちゃんと言うべきことを言うし、コーチにも『こういうことをしたいです』などと、しっかり軸を持って言ってくれるんで、優奈の発言に誰も迷わないです」(古田)
「石見智翠館高校からの1個上の先輩。その時からリーダーシップを感じていましたが、今回佐藤キャプテン率いるチームでやってみて、一体感ありました。アメとムチがしっかりしている」(奥野)
「一言で雰囲気を変えられる。そこの部分で私たちはついていくだけやし、逆に私たちの意見もすごく聞いてくれる。すごいいいリーダーやなって思っています」(小牧)

 

 佐藤は試合後の会見で、こう話した。

「今シーズン、新体制で初のキャプテンで正直悩んだり、うまくいかないことの方が多く感じました。その中で本当にフェニックスの関係者の方々が支えてくれて、ひとつひとつ試合を重ねながらチームが成長した結果、今日最高の試合ができたと思う。みんなに感謝の気持ちでいっぱいですし、本当にうれしいです」

 

 大会初の3連覇を成し遂げたフェニックス。鋭いアタックと堅い守りで掴んだ王座は、今後もそう簡単に手放しそうにない。

 

(文・写真/杉浦泰介)

facebook icon twitter icon
Back to TOP TOP