『ROUND AFTER ROUND.6』無駄なき全力。仲間を増殖 ~D.LEAGUE~

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 Valuence INFINITIES(バリュエンス インフィニティーズ)は日本発のプロダンスリーグ「D.LEAGUE」に参画して3季目となる。2季目の23-24シーズンはレギュラーシーズン3位でチャンピオンシップ(CS)進出。今季もROUND.7終了時点で3位に付け、初のレギュラーシーズン&CS制覇を狙ってるブレイキン、ヒップホップ、ハウスを軸とするチームだ。

 

 1月9日に行われたROUND.6はKOSÉ 8ROCKS(コーセー エイトロックス)の“ブレイキン対決”だった。過去2シーズンの戦績は1分け1敗と未勝利。チームにとって特別な相手だったが、チームにとってもB-boyのMAKOにとっても特別なラウンドとなった。その理由はこのラウンドのショーケース「No Waste」は、昨季のCS決勝で披露する予定だった作品だったからだ。

 

 MAKOにとって、このラウンドに思い入れが強いのはCS1回戦で敗れたのが、自らがディレクションを担当した作品だったからというのもある。

「自分のせいとまで言ったら、たぶん仲間にも『言い過ぎだ』とは言われる。でも自分の中に“あそこで勝てていれば可能性あったのに”というのはずっと思っていました。だからこそこの作品については、“いつかは世に出したい”と強く残っていました。今回のKOSÉ戦で出すことが決まり、練習が始まると、当時のことをね。感じていたこととかも思い出しますし、“負けたから出せなかったんだよな”って思い出してしまう。だからこそ全力でやる必要があった。勝ち負けも大事ですが、全力でこの作品を皆さんの前に届けることがめちゃくちゃ大事だろうなと思っていました」

 

 作品をそのまま変えなかったわけではない。今季からジャッジシステムが変わり、「シンクロパフォーマンス」「エースパフォーマンス」という特異パートが増えた。新メンバーにパリオリンピックブレイキン男子日本代表のHIRO10(ヒロテン)が加わり、開幕戦に続き、このラウンドにも出場した。本番まで振り付けの変更、パート替えも加えていった。

 

 迎えたラウンド当日、INFINITIESが先攻。ドラムのリズムに合わせてシンクロパフォーマンスでスタートした。ドラムのリズムがテンポアップすれば、ダンサーたちの踊りも加速する。HIRO10がソロで魅せる。鋭いパワームーブ、バシッとフリーズを決め、仲間にバトンを渡す。極め付けはエースパフォーマンスのTSUKKIだ。ピンスポットに照らされながら逆立ちした状態で回転しながらステージ中央へ。そこからエアトラックス、ヘッドスピンで回りに回った約20秒間、一度も足が地面に付くことはなかった。ラストは8人で緩急を見せつつ、締めくくった。最後は8人が立ち上がり、「どうだ!」と言わんばかりの締めくくり。最後は倒れて終わるROUND.1の「ALL OUT」とは、また味わいの違う全力パフォーマンスだった。「僕らにしか出せないカッコ良さ、僕らができることを全部あのショーに詰め込みました」とはエースパフォーマンスのTSUKKIだ。INFINITIES独特のユルさもエッセンスとしてありつつ、ダイナミックな回転技で観客の心を躍らせた。

 

 後攻の8ROCKSは「天」をテーマに和風な衣装で、レギュラーダンサーに復帰したISSEIを中心としたアクロバティックに舞った。組み技でメンバーを宙に放り投げるコンビネーションの高さも光った。ジャッジは「オーディエンス」「シンクロパフォーマンス」の2項目は8ROCKSが獲得。それでもINFINITIESが残りの4項目を取り、4対2で8ROCKS戦初勝利を掴み取った。勝利の瞬間、思わず涙するメンバーもいた。

 

 その想いの強さをTSUKKIもラウンド後の囲み取材で、こう語っていた。

「KOSÉさんとは1回負け、1回ドロー。“3度目の正直”ということで僕らもめちゃくちゃ気合いを入れて練習してきました。その結果、無事に勝利できてうれしく思います。綺麗につくるというよりは、自分たちの気持ちをぶつけようと。本当にリハから死にそうな顔でやっていたし、あそこからエースをやるのは体力的にもめちゃくちゃきつかった」

 圧巻のエースパフォーマンスを魅せたTSUKKIはチーム初のMVDを受賞。チームにとって特別な想いで迎えたラウンドを特別な思い出として刻んだ。

 

 MAKOにとって特別なラウンドだった理由はもうひとつある。チームが彼のお面付きチケットを販売したからである。応援席にMAKOの顔が並ぶという異様な光景。本人にその感想を訊ねた。

「(お面付きチケットの話を)最初に聞いた時は、もうほんとに“何を言っているんだ”と思いました。どうなるか全く想像できなかったから。でも会場で実際に見たら、めちゃくちゃ面白かった。我々のとんでもないアイデアから誕生した企画ですが、ファンのみんながそれに乗ってくれたことがうれしかった。D.LEAGUEで僕らが観に来てくれた方と触れ合う機会は、入場時とお見送りで近くを通る時、あとはラウンド当日のイベントぐらいしかない。会場でこうやって、ひとつのことを一緒にできたというのは、めちゃくちゃ楽しいし、嬉しいし、パワーをもらえる以上にひとつのコミュニティができたような気がしました。またラウンド前にお面付きチケットを買っていただいた方たちとイベントをやらせてもらいました。普通になんかもう応援してくれているみんなと、楽しい時間がつくれたので、いい思い出になった。僕にとって最高のイベントになりましたね」

 

 人との繋がりを大事にする男である。今季の折り返し地点を迎えたタイミングで、MAKOに意気込みを聞くと、「もちろんレギュラーシーズンの優勝とCSの優勝はチームとして、個人としても狙っている」と返ってきた。だが、その結果以上に求めることがあるという。

「今、こうやって観に来てくれている人やD.LEAGUEを目指す子供たち、ダンサーも増えてきた。Dリーガーとしては勝つこと以上に、D.LEAGUEというフィールドが広がり、いろいろな人が交わり、参加できるコミュニティとして大きくなっていったらうれしいです。この市場を盛り上げていくことが目標ですね」

 

 少しヤンチャで、どこかゆるいノリを内包させるINFINITIES。だが、ダンスを楽しむこと、ダンスの味方を増殖させることに関しては全力で振り切っているように映る。

 

>>ROUND.6のショーケース

 

(文/杉浦泰介、写真/©D.LEAGUE24-25)

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