後期も連敗スタートで、前期の終盤から数えて10連敗……。主力にケガ人が相次いだことが苦戦の最大の原因です。まず5月に外野守備中に梶田宙田中宏明が激突して、2人とも戦線離脱。梶田はセンターで外野の要、田中は4番で打線の要だっただけに、このケガは本当に痛かったです。さらに6月には打撃好調だった曽我翔太朗が相手捕手からの牽制球を顔面に受け、顔の骨を骨折してしまいました。
 まさに泣きっ面に蜂といった状態でしたが、今週あたりから田中と曽我が戦列に戻れそうな状況です。前回も書いたように、昨季と比べて今季はチームの打力が向上しています。ほぼベストメンバーで戦えるようになれば、巻き返しは十分可能でしょう。いや、巻き返さなくてはいけないと強く思っています。

 投手陣では山慎一郎が4、5月と7連勝で2カ月連続の月間MVPに輝きました。ところが勝負どころの6月に失速して3連敗。明らかに疲れが出て、球のキレが悪くなりました。まだまだ1年を通じて投げる体力がないことを本人も痛感したでしょう。今季は直球のスピードも上がり、NPBのスカウトも注目してくれるようになってきています。前回(7月2日)の香川戦では負け投手とはいえ、7回2失点と復調の兆しが出てきました。この夏は彼にとって、大事な季節になるはずです。

 そして左腕の吉川岳も5月以降は6連敗と結果が出ていません。ただ、彼の場合、ボール自体は走っています。問題はそれをコントロールよくコンスタントに続けられないところにあるのです。彼は左腕ということもあり、今季もスカウトがよくチェックに来ています。ひとつ勝てば流れも変わるはず。調子を上げて、NPBへもう1度アピールしてほしいと思っています。

 打者では西本泰承が打率.360と高アベレージをマークしています。彼の力からすれば、これくらいは打っても不思議ではありません。今季はもったいない打席がなくなり、1打席1打席集中できています。技術的には辻武史コーチの指導でスイングがシャープになりました。追い込まれても、おっつけてセンター中心に弾き返せるようになった点も、打率をキープできている要因です。とはいえ、今年のアイランドリーグはボールがよく飛び、打者優位のシーズンになっています。彼が真のドラフト候補になるためには、もっとスカウトの目を引くものが必要です。走攻守すべてが平均点では不十分です。ここまで来たら、さらに打って首位打者を狙ってほしいと感じています。

 このリーグにいる選手たちは「帯に短し、たすきに長し」というタイプが一般的です。守備はそこそこで打撃もそこそこ、走塁もまぁまぁ……。僕もスカウト経験があるから分かりますが、これではフロントに獲得を薦められません。去年、育成でドラフト指名を受けた安田圭佑には足という武器がありました。走攻守が最低限のレベルに達していることは当然として、その上で自分の強みは何なのかよく考えてほしいものです。夏は甲子園や都市対抗があり、高校、社会人の状況を踏まえながら、独立リーグにもスカウトが大勢やってきます。

 後期はチームとして優勝を目指すのはもちろん、個々人の目標に少しでも近づけるようアドバイスしていきたいと考えています。本当の勝負はここからです。暑い日々が続きますが、みなさんの熱い応援をよろしくお願いします。


定岡智秋 (さだおか・ちあき)プロフィール>: 高知ファイティングドッグス監督
 1953年6月17日、鹿児島県出身。定岡三兄弟(次男・正二=元巨人、三男・徹久=元広島)の長男として、鹿児島実業から72年、ドラフト3位で南海(現ソフトバンク)に入団。強肩の遊撃手として河埜敬幸と二遊間コンビを形成した。オールスターにも3回出場し、87年限りで現役を引退。その後、ホークス一筋でスカウトや守備走塁コーチ、二軍監督などを歴任。小久保裕紀、松中信彦、川崎宗則などを指導し、現在の強いソフトバンクの礎づくりに貢献した。息子の卓摩は千葉ロッテの内野手。08年より高知の監督に就任。現役時代の通算成績は1216試合、打率.232、88本塁打、370打点。
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