第1177回 九位一体で「共助」P.Uの活動がパラ界に光
NF(国内競技連盟)とはいっても、パラスポーツの場合、ほとんどが弱小だ。2015年6月にパラリンピックサポートセンター(パラサポ)が都内の日本財団ビル内に開設される前は、多くの団体が、役員の自宅を事務所代わりに使っていた。
資金もなければ、人手も足りない。2021年に東京パラリンピックが開催されたことで、パラスポーツに対する社会的認知度は高まったが、やがてそれも頭打ちとなり、東京大会前のつましい姿に戻りつつある。
そんな状況を打開するために、23年9月に発足したのが「P.UNITED」(ピー・ユナイテッド)である。日本車いすカーリング協会、日本障害者カヌー協会、日本障がい者乗馬協会、日本パラ射撃連盟、日本身体障害者アーチェリー連盟、日本知的障害者水泳連盟、日本知的障がい者卓球連盟、日本パラ・パワーリフティング連盟、日本パラフェンシング協会の9つの競技団体が大同団結し、共同でマーケティング活動に乗り出した。
ひとつの団体では、やりたいことはあっても、やれることは限られている。しかし9つの団体が力を合わせればスケールメリットが得られやすくなる。先の9団体は、そこに目を付けたのだ。
田中辰美代表によると、とりわけ力を入れているのが「広報」「イベント」「セールス」の3部門。「広報がうまい団体がある一方で、実務が得意な団体もある。足りない部分は、皆で補い合えばいい」。三位一体ならぬ九位一体である。P.Uの高阪学戦略アドバイザーは「こうした取り組みは世界にも例がない」と話す。このプロジェクトが注目される所以だ。
だが、好事魔多し――。加盟9団体のひとつである日本身体障害者アーチェリー連盟にガバナンス上の不備が発覚し、日本パラスポーツ協会(JPSA)は今年度末までの資格停止処分を決めた。複数の理事が辞任、決裁に支障をきたすなど杜撰な組織運営の実態が明るみに出た。
これを受けてP.Uの監督不行届を指摘する声もあるが、それはいささか筋違いのように思える。というのも、P.Uはあくまでも任意団体に過ぎず、法人格を有した9団体を指揮監督する立場にはないからだ。ペナルティを科すことができるのは統括団体のJPSAだけだ。
しかし、そうした非力な面を考慮しても、P.Uの活動は有益だと考える。それはタテ社会のスポーツ界において、ヨコ連携で課題解決に挑もうとする姿勢自体が目新しく、チャレンジングなものだからだ。「自助」でも「公助」でもなく、共に助け合い、共に支え合い、共に学び合う「共助」。その実践はパラスポーツの未来に多くの果実をもたらすだろう。
<この原稿は25年3月5日付『スポーツニッポン』に掲載されたものです>