羽生結弦が宮城で魅せた一瞬の振りに“石川でのケセラセラ”がよぎった ~notte stellata 2025~

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 プロフィギュアスケーター・羽生結弦が座長を務める「notte stellata 2025」初日公演が7日、宮城県利府町のセキスイハイムスーパーアリーナで行なわれた。狂言師の野村萬斎がスペシャル・ゲストとして参加し、会場に詰め掛けた6256人や配信、映画館などで視聴した人々を魅了した。

 

 アイスショー「notte stellata」は、羽生らトップスケーターとスペシャル・ゲストが東日本大震災の被災地から希望を発信することがコンセプトとなっている。

 

 会場前の広場には、羽生がモデルを務める防災啓発ポスターや、宮城の魅力を伝える広告が毎年掲示されている。開場するまで、広場前の出店で名物の牛タン、せり鍋、海産物など食べながら微笑むスケートファンの姿を見ると、和やかな気持ちになる。待機時間に痛感する寒さもまた、名物の美味しさをグッと引き立たせてくれる。

 

 今年は、メインアリーナに併設されているサブアリーナ内で石川・輪島の出張朝市も催されている。輪島塗のお椀、箸などが購入できるブースが設けられているのだ。

撮影:筆者

「やっと自分がプロに転向し、いろんな災害がありますが被災地に、徐々に思いを馳せることができ始めています」。2024年9月15日、羽生は石川県でこう述べた。彼を中心に、金沢市内にある健民スポレクプラザで「能登半島地震復興支援チャリティー演技会~挑戦 チャレンジ~」が行なわれた。羽生は自らの影響力を使い、被災地を支援し、同時に希望、勇気、元気を届ける活動を続けている。

 

 3月7日「notte stellata 2025」初日公演の挨拶で羽生はこう語った。

「時に寂しく、時につらく、いろんなことを思い出して悲しくなってしまうこともあるかもしれません。ただ、僕たちはここにいて、亡くなった者も生きている者(無くなった物も生きている物)も全てに対して魂から祈りを込めて滑らせていただきます」

 

 羽生らトップスケーター、そして野村萬斎たちの鎮魂の舞と希望を発信する圧巻の演技に、多くの人が感動しただろう。

 

 余韻に浸り、名残惜しさもある中、リンク上ではフィナーレが行なわれていた。記者席からその様子を見ていたのだが、ハッとした。

ⓒnotteltellata2025

 記者席からリンクは距離があるものの、羽生が一瞬、右足に体重を乗せ、ピタリと静止したように見えた。頭の中で一気に映像が巻き戻り、昨年の9月15日を思い出した。羽生のそのしぐさが、石川県で披露した「ケセラセラ」の振りと重なって見えた。

 

 囲み会見では時間の都合上、残念ながらこの旨の質問するには至らなかった。だが、「被災地に、徐々に思いを馳せることができ始めている」羽生結弦ならば――。石川県で頑張る人々へエールを込めて、あの振り付けを披露してくれたのかもしれない。

 

(文/大木雄貴)

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