パ・リーグの優勝争いは、早くも福岡ソフトバンクと北海道日本ハムの“2強”に絞られた観がある。

 6月27日現在、ソフトバンクの貯金が20、日本ハムが16。2位日本ハムと3位オリックスのゲーム差は8だ。
 しかし、この両チーム、強化スタイルは全く異なる。潤沢な資金力を背景にFA選手や実績のある外国人を次々と獲得するソフトバンクに対し、日本ハムはマネーゲームに参戦しない方針を貫いている。
 チーム強化において、日本ハムが最も重視しているのがドラフトだ。エースのダルビッシュ有、成長著しい中田翔はともに高校時代「ヤンチャ」と言われた選手である。それを理由に指名を見送る球団もあったが、日本ハムの高田繁前GMによれば「大社啓二オーナーから“プロに入ってちゃんと教育していけばいい”という言葉を頂き、それで思い切って指名したんです」とのこと。個性的な選手が多いのも、このチームの特徴だ。

 もちろん、せっかくの“金の卵”を獲得しても、育て方を間違ってしまっては元も子もない。しかも日本ハムは1軍が札幌で2軍が千葉の鎌ケ谷と距離が離れている。そこで導入したのが選手の“のびしろ”が一目で分かるソフトウェアである。これはデトロイト・タイガースが使っていたものを参考にして、約8000万円かけて作り上げたものだと高田は語っていた。
「私がGMの時には2軍監督、コーチ、スカウトからのメールが毎日のように入りました。それを見るだけで2軍選手の状態、アマチュア選手のその時点での評価が手に取るように伝わりました」

 蛇足だが、高田が東京ヤクルトの監督に就任した時、このソフトウェア導入を進言したが「高過ぎる」と却下されてしまったという。
 カネよりも知恵の力で球界をリードする日本ハム。地域密着の旗印とともに、球界にひとつの方向性を示していると言えるだろう。

<この原稿は2011年7月18日号『週刊大衆』に掲載されたものです>

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