『ROUND AFTER ROUND.8』“青い炎”で挑んだロッキン

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 Medical Concierge I'moon(メディカル・コンシェルジュアイムーン)は日本発のプロダンスリーグ「第一生命 D.LEAGUE 24-25 シーズン」で6位に付け、チャンピオンシップ(CS)出場圏内にいる。今季は昨季から5人の新メンバーが加わり、様々なジャンルへの挑戦が目立つ。2月6日に行われたROUND.8ではロッキン(ロックダンス)に挑んだ。

 

 このROUNDの作品はロッキンを得意とするRihoがディレクション、メンバー選定、エースパフォーマンスを担当した。昨季までの3シーズンはdip BATTLES(ディップ バトルズ)に在籍。今季からI'moonに加わった。

 

 テーマは「Power to the woman」。場内のスクリーンでこう説明された。「時にネガティブに捉えられる『女性だけ』という言葉。その色をポジティブに塗り潰す」。その言葉通り、力強いロッキンを披露した。Rihoは言う。
「作品をつくる前にみんなに“楽しいけど元気があるという作品にしたい”と話しました。結構、私がそういう性格なので、“楽しむけど負けねぇよ”と。ロッキンは笑顔なジャンルなので、その良さを出したいと思っていました」

 

 アフロヘアーのmiyuがリップシンクをしながらダンスをリードする。8人がソウルでファンクな出で立ちで、ロッキンを踊る。Rihoによれば作品には裏テーマがあり、それは「青い炎」だという。
「実はこの作品をdip BATLLESに当てる予定でつくらせてもらっていました。dipは赤い炎のイメージ。でもI'moonだって表には出さないけどすごい闘志を持っている子たちが多いんです。それに青い炎の方が熱いというのを聞いたことがあって、その熱さで“絶対負けないよ”という意味を込めていました」

 

 チームメイトが「1、2、3、4」とカウントアップした後、暗闇から飛び出してきたのがエースパフォーマンスのRiho。その打点は高く、枠からははみ出しそうな勢いを感じさせた。

「自分は結構アクロバットが得意なんです。あそこは(見ている人を)驚かせたかった。この後の展開で曲調が変わり、シンクロに入る。ここで盛り上げるところを1個つくりたいなって思ってジャンプさせてもらいました」

 

 シンクロパフォーマンスは8人の息が合ったロッキン。「あれは本当に大変でした。実は振りを全部変えていて、それを変えたのも1週間前ぐらい」(Riho)と突貫工事だったという。シンクロはスタメン以外のメンバーの支えもあって成り立っている。リーダーCHIKAの談はこうだ。

「出ていないメンバーから、“ここはもっとこっち”とか、“タイミングはこう”と言ってもらっています。今はメンバー全員の目がすごく肥え始めてきていて、スタメン8人にちょっとやそっとじゃ『揃ったよ』と言ってくれない。その全員の意識の高さ、注意力の高さがシンクロのクオリティーに繋がっているんです」

 

 8人はロッキンを約2分10秒、エネルギッシュに踊り切った。ジャッジは「エースパフォーマンス」を除く5項目を獲得し、5対1で勝利した。I'moonとしてはROUND.3以来の白星だった。「すごくいい作品だったなとも思うし。ただ、やっぱりエースが取れなかったことが自分にとってはずっと引っかかっています」とRiho。勝利後のステージ上でのインタビューで声を詰まらせたのも悔しさからだった。
「結果が出た時に、一番最初に感じたのは“悔しい”でした。自分のせいで1ポイント落とし、SWEEPを逃した。もしSWEEP勝ちできていたらI'moonにとってもすごくいい日になっていたはずのに、自分のせいで1ポイント取れなかったことは今後も、絶対いい意味で活力になるし、いい意味で引っかかっています」

 

 今やRihoはI'moonになくてはならない存在になりつつある。ROUND.9終了時点で6ROUNDに出場。エースパフォーマンスも複数回任されている。彼女は3シーズン在籍したBATTLESを離れた理由を、I'moonの公式YouTubeでこう気持ちを吐露している。
「D.LEAGUEに3年いて、“輝きたい”という気持ちはめっちゃ強かったと思う。3年間で1回も主役をやったこともないし、1回も単品で使われたことがない。“自分ってダンサーとしてどうなのかな”と強く感じた」

 

 失礼ながら私がRihoの存在をはっきりと認識したのは昨季のCYPHER ROUNDだ。AsahiとのDUOで出場し、ジャケットにパンツスタイルでロッキンを披露した。13チーム中9位タイに終わったが、エネルギッシュに踊る姿が印象的だった。そのことを話すと、彼女は「1人でも多くの人に自分の踊りが刺さるように、ということはどこに出る時も意識していることです」と答えた。

 

 今季、I'moonに加わったことで、Rihoの存在感は際立っているように映る。チーム内における立ち位置もBATTLES時代と変わった。彼女は忌憚のない意見を発っしているという。
「みんなが優し過ぎて、プラスなことしか発言しなので、私は“自分だったらこうしたい”という意思を伝えています。もちろん最初は心配でした。それこそやっぱ移籍してきた身ですし、みんなと育ってきた環境も踊ってきたジャンルも違う。ただI'moonは受け入れる態勢がすごい人たちしかいない。私に対し、否定的なことを言ってきたり、絶対しないんです。そこにもメンバーの優しさを感じています」

 

 昨季からチームに加入し、2季連続でリーダーを務めるCHIKAも「I'moonは本当に仲が良く、思いやりのある人が集まっている。変な喧嘩は1回もないですし、女性同士の妬み合いのようなものも全くないんです。みんながメンバーをいつも褒めまくっていて、素直に『おめでとう』『すごいよ』と言い合える」と口にし、こう続ける。
「でも時にはぶつかり合う場面が必要だったりもする。そういう時にRihoはズバズバ言えるんです。彼女が入ったことにより、フレッシュな意見が飛び交うようになりました。Rihoは『外からI'moonはこう見えていた』ということも率直に話してくれる。そういう彼女の素直さもI'moonにもたらしたいい影響だと思っています。今のI'moonはぶつからないといけないところでは、ガンガンぶつかれる。本音をぶつけ合い、涙することもあります。シビアな空気になったこともありますが、それは大事な時間だったと思っています」

 

 I'moonはROUND.9でSWEEP勝ちを収め、CS圏内の6位に食い込んでいる。昨季は2勝しかできず11位ともがき苦しんだが、今季はここまで4勝を挙げている。初年度からリーグに参画しながら未だ到達できていないCSという檜舞台も見えてきた。もし出場できればRihoにとってはBATTLES時代の21−22シーズン以来、2度目となる。
「1年目のCSは、オーディエンス票が多かったこと(ワイルドカード)で行けましたが、ダンスの力だけで行けたわけじゃないので、自分的にはあまり満足していません。だから今季はちゃんとダンスで認められ、必ず6位以内に入り、I'moonの逆襲劇を見せたいですね」
 そう目に闘志の炎を宿すRiho。I'moonの逆襲劇は、彼女自身の逆襲劇でもある。

 

>>ROUND.8のショーケース

 

(文・写真/杉浦泰介)

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