第810回 みのもんた、アドリブの“危険球”
「平成の視聴率男」「世界一忙しいテレビ司会者」の異名をとったみのもんたさんが、さる3月1日、死去した。80歳だった。
スポニチ紙の報道によると<1月16日、都内の焼き肉店で食事中に牛タンを喉に詰まらせて救急搬送され、一時心肺停止となり治療を続けてきた>(3月2日付)という。
みのさんといえば、プロ野球ファンにはフジテレビ「プロ野球ニュース」の「珍プレー・好プレー」の名調子が思い出深い。茶目っ気たっぷりのナレーションがお茶の間の反響を呼び、たちまち人気コーナーとなった。
私がみのさんの番組に最初に呼んでもらったのは、02年4月にスタートしたTBS系「サタデーずばッと」だ。スポーツ界の不祥事に関する事案で、私は番組スタッフにリーダーの“強権政治”が元凶だと指摘した。概ね台本にも反映された。
「みのさんも“全く同感だ”とおっしゃっています。番組のタイトルらしく“ずばッと”指摘してください」
そして翌日。コーナーがスタートすると、スタジオに微妙な空気が漂い始めた。黙って聞いていたみのさん、“ずばッと”こう言いきったのだ。
「それだけ批判されるってことは魅力的な人なんだろうね。一度、会ってみたいね」
こっちは面目丸潰れだ。コーナーが終わり、ムッとした表情で席を立つと、みのさんが人懐こい笑みを浮かべて寄ってきた。
「いやあ二宮さん、ゴメンゴメン。ああ言った方が盛り上がると思ってさ。まあ、これに懲りずにまた来てよ」
今となっては、みのさんが台本を読んでいたかどうかも疑わしい。想像するに、全てアドリブだったのではないか。正常運転ではつまらないと判断し、あえてハンドルを逆に切ったのだろう。
おかげで、みのさんには随分鍛えられた。それからは、いつ“危険球”が飛んできても対応できるようにと、切り返すカードを何枚も用意するようになった。今は感謝の気持ちでいっぱいである。合掌
<この原稿は2025年3月24日号『週刊大衆』に掲載されたものです>