7月30日、31日のソフトバンク3軍との交流戦では8月、9月の戦いを見越して若い選手も多く起用しました。結果は連敗。ソフトバンク戦は4月以来でしたが、総じて愛媛よりも、NPBの選手たちのほうに成長が感じられ、指導者として反省させられた2試合でした。
 たとえば1番ショートとしてスタメン出場した育成の牧原大成は初戦ではホームラン、2戦目は3安打3打点。春と比較すると随分、力をつけていました。彼は高卒1年目ながらセンターラインを守っていることもあり、4月に対戦した時から気になっていた選手のひとりです。打撃はもちろん、守りも守備のポジショニングや動き出しなど細かい部分でも上達が見られ、順調に伸びていることを実感しました。

 残念ながらアイランドリーグでは、現状ここまで高い次元で野球に取り組んでいる選手はいないように映ります。どうしてもNPBより全体のレベルは落ちるため、突き詰めてプレーしなくても活躍できてしまうからです。しかし、我々が目指すべきところは、NPBの1軍でも通用する選手を育てること。特にこのリーグの選手たちは特別パワーがあったり、ずば抜けたセンスがあるわけではありません。そう考えるとNPBの選手以上に細かい野球を徹底する必要があります。投手や捕手、打者のちょっとした動きを見逃さず、プレーに生かす――野村克也監督がよく言っていた“無形の力”を、このリーグの選手にも植え付けたいと強く思いました。

 後期も前期と変わらず、しっかり準備をし、個々人がやるべき仕事をやってベストを尽くすスタイルで戦うつもりです。ただ、前期を振り返ると基本ができていないプレーが目立ちました。キャッチボールがしっかりできていれば勝てた試合が3つはあったはずです。この点は、選手たちも痛感したことでしょう。最近の練習では基本のキャッチボールをより重視して取り組むようになりました。「ウォーミングアップも技術練習の一環である」。キャッチボールの重視をきっかけに、もっとチーム内に意識を浸透させたいと考えています。
 
 もうひとつ、前期の反省は投手陣が3つ目のアウトを簡単に取れなかったことです。2死からムダな四球や安易な被安打、被本塁打が少なくありませんでした。この課題はチームの勝ち頭である能登原将にも当てはまります。萩原淳コーチの指導による厳しいトレーニングの成果か、このところの能登原はキレのあるボールを投げています。しかし、それが結果に直結しないのは詰めが甘いからです。簡単に2死をとって下位打線に出塁を許したり、5回までは好投しながら6、7回に不用意な失点をしたり……。これらは意識すれば改善できる部分です。いかに3者凡退のイニングを増やして、流れを良くするか。上を目指すには単に抑えるだけではなく、高いレベルを追及してほしいと感じています。

 もちろん3アウト目で苦労しているのは投手だけの責任ではありません。バッテリーを組む捕手も、もっと考えて野球をしなくてはいけないでしょう。前期は同じカウントで打たれたり、過去の配球を生かせなかったりとリード面で首をひねる場面も目立ちました。監督就任以降、捕手陣には試合中、試合後とノートを付けるように伝えているのですが、それすら忘れてきた選手もいました。これでは守りの要として試合に出る資格はありません。「名捕手あるところに覇権あり」との言葉もあるように、このポジションの選手が頑張らずして好成績は望めません。彼らには厳しいことも言ってきましたが、後期は奮起に期待したいところです。

 シーズンが終われば、NPBにドラフト指名される選手以上に、ユニホームを脱ぐ人間が大勢出てしまうのが独立リーグの宿命です。どのような道に進むにせよ、せっかくアイランドリーグでプレーしたのですから、正しい野球を学んでほしいと願っています。そのためにも残りのシーズン、練習、試合、ミーティングを通じて伝えるべきことを着実に伝えていきたいと考えています。その上で勝ち星を積み重ねることが理想です。愛媛のみなさん、引き続き、応援、よろしくお願いします。


星野おさむ(ほしの・おさむ)プロフィール>:愛媛マンダリンパイレーツ監督
 1970年5月4日、埼玉県出身。埼玉県立福岡高を経て、89年にドラフト外で阪神に入団。内野のユーティリティープレーヤーとして、93年に1軍デビューを果たすと、97年には117試合に出場。翌年には開幕スタメンで起用される。02年にテストを経て近鉄へ。04年に近鉄球団が合併で消滅する際には、本拠地最終戦でサヨナラ打を放つ。05年に分配ドラフトで楽天に移籍し、同年限りで引退。06年からは2軍守備走塁コーチ、2軍打撃コーチなどを務めた。11年より愛媛の監督に就任。
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