クボタスピアーズ船橋・東京ベイ、レガシー受け継ぐジャージーで快勝 ~リーグワン~

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 22日、「NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25」ディビジョン1の第12節が東京・スピアーズえどりくフィールドで行われ、3位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイが6位の横浜キヤノンイーグルスを41-24で破った。スピアーズは3トライ差以上によるボーナスポイント1を加えた勝ち点5を獲得し、上位2チーム(東芝ブレイブルーパス東京、埼玉パナソニックワイルドナイツ)との差を詰めた。

 

 0ー0の均衡を破ったのはスピアーズの司令塔だ。前半11分、自陣から右足で左サイド奥に蹴り込んだ。ライナー性のボールは数回バウンドし、タッチラインの外へ。「50:22」(自陣から蹴ったボールが敵陣22mラインを越え、間接的にタッチラインの外に出た場合、蹴ったチームのラインアウト)でチャンスを演出。一度はイーグルスに防がれたが、23分には左足で陣地回復を狙ったボールが不規則に弾み、22mライン内まで転がって外に出た。再び「50:22」でチャンスをつくると、ラインアウトでトライエリア(インゴール)に迫ると、WTB根塚洸雅が左隅にトライを挙げて先制した。

 

 きっかけをつくったフォーリーは試合後、こう振り返った。

「キヤノンが(前に)人数をかけてくるので(裏に)1人しかいないことは事前にわかっていた。ターンオーバーからスペースを見て蹴った。2本目(23 分)も(50:22を)狙っていた。それは冗談で、ラッキーだった」

 先制トライの根塚も「あの時間帯で先に取られていたら違う流れになっていたかもしれない。その意味でいいトライになったかと思います」と胸を張った。

 

 

 スピアーズは34分にPGで3点を返されたものの、37分にはFWで近場を攻め、最後はLOデーヴィッド・ブルブリングがねじ込んだ。フォーリーがコンバージョンキックを決め、10-3。前半は今季安定しているディフェンスが冴え、イーグルスにトライエリアを割らせなかった。

 

 後半に入ってもスピアーズペース。3分、センターライン付近でのスクラムで押し勝つと、SH藤原忍、フォーリー、WTBハラトア・ヴァイレアに繋ぎ、ヴァイレアが右サイドのタッチライン際を突破。サポートに走っていたフォーリーにボールを返した。フリーでパスを受けたフォーリーは抜け出してトライ。その2分後に左サイドで根塚が突破。藤原がパスを受けると、最後はCTBリカス・プレトリアスがトライエリア左中間にボールを運んだ。いずれもフォーリーがコンバージョンキックを決め、リードを広げる。

 

 スピアーズは12分に1トライ1ゴールを返されたが、すぐさま取り返す。センターライン中央やや左でボールを持ったフォーリーがチップキック。これに反応したのがヴァイレアだ。今季好調の背番号14はイーグルスWTBブレンダン・オーウェンのタックルをステップで切ると、追いすがるFB小倉順平を引きずりながらトライエリア左隅に飛び込んだ。24分にはフォーリーがPGを決め、この日最大の24点差に。

 

 SO田村優のアシストでオーウェンが連続トライを奪われたものの、終了間際に途中出場のLOメルヴェ・オリヴィエにもトライが生まれた。41ー24でノーサイド。えどりくの連勝記録を22に伸ばし、計6トライを挙げ、3トライ差以上によるボーナスポイントを獲得した。30分遅れでキックオフした2位の東芝ブレイブルーパス東京vs.1位の埼玉パナソニックワイルドナイツの直接対決で後者が敗れ、首位が入れ替わった。ブレイブルーパスが勝ち点46、ワイルドナイツが同45で、43のスピアーズは両チームとの差を詰めた。

 

 この日は今季、えどりく最多の4680人が集まり、スタンドをスピアーズのチームカラーのオレンジに染めた。だがピッチ上の選手たちのジャージーデザインはオレンジではなく白と黒のボーダー。襟付きでクラシックスタイルのサードジャージーは1978年創部当時のデザインをイメージした“復刻版”だ。グッズ売り場で限定販売されたジャージーは30分でほぼ完売。売り場担当のスタッフによれば完売が遅れたのはサイズが大きいジャージーが余っていたためだという。それでも1時間で売り場からは消えたそうだ。

 

 さらにはこんな取り組みも。OB有志がボールパーソンを務めた。スピアーズの歴史を感じさせる試合に選手が発奮しないわけがない。キャプテンのNo.8ファウルア・マキシが「このジャージーには特別な思いがあります。感謝の気持ちを込めて試合に臨みました」と口にすれば、藤原は「(これまでプレーしてきた人たちの)思いを背負いながら、ラグビーができる、このジャージーを着て9番としてプレーできることは、本当に幸せなこと。すごくありがたいことですし、もっと頑張らないといけないな、と思う」と話した。根塚は「このジャージーの意味は、今日のみんなのプレーに表れていたかと思います」と振り返った。

 

 フラン・ルディケHCも「このジャージーに関しては、レガシーを感じる。OBの方々に感謝している。彼らのハードワークがあったから今、自分たちがラグビーができている」と先人たちへの感謝を忘れない。「試合後のハドルにOBの方もいらっしゃっていたのですが、すごく喜んでくれた。試合後、そのジャージーの価値が上がるようなプレーを毎試合しようと、みんなも思ってるはず。僕らも次の世代に繋いでいでいきたい」とFL末永健雄。ジャージーに誇りを付与するには、当然結果や内容が求められることになろう。その点はオーストラリア代表で76キャップのフォーリーにも「OBの人たちに試合を見てもらい、彼らのチームが“大きくなってきた”と思ってもらえたらいいし、誇りに思ってもらえたならうれしい」とモチベーションとなっているようだ。

 

 キックオフ前、地下鉄・東西線「西葛西駅」から、会場のえどりくまでの道中、総合レクリエーション公園には、石川充ビジネススポンサーシッププロデューサーと新任のスタッフがフォトスタンドを持って、ファンを待ち受けていた。記念撮影に応じるなど非日常感を演出。途中のベンチにはマスコットのスッピーのぬいぐるみがベンチに腰掛けていた。スピアーズにとって、えどりくの連勝記録を22に伸ばしたイーグルス戦は、通り道に過ぎないのかもしれないが、新旧が入り混じった風景は、チームの歴史に刻まれるべき1ページのようにも映った。

 

(文・写真/杉浦泰介)

 

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