ONEフェザー級暫定王者・野杁正明、“最強”への道「僕の1個上にいる選手は1人。今のところ目標はそこだけ」 ~ONE~
アジア最大級の格闘技団体「ONE Championship」の「ONE172」(23日、さいたまスーパーアリーナ)で、フェザー級キックボクシングの暫定世界王者に輝いた野杁正明(team VASILEUS)が25日、都内の所属ジムで会見を行った。タワンチャイ・PK・センチャイ(タイ)戦から2日経った現在の胸中を語った。
チーム名のVASILEUSはギリシャ語で“王”を意味するバシレウス(Basiléus)に由来する造語だ。“王の集団”である拠点にONEのベルトを初めて持ち帰ってみせた。
「やっとという感じですね。いろいろな選手がいる中、ONEのベルトはまだなかった。(トレーナーの渡辺)雅和さんに持ってもらえて、ようやく証明できたかなとは思います」
タワンチャイ戦はミドルを警戒がしていたが、野杁は「ローキックとインローの方が衝撃でした」と振り返った。
「今まで僕、ローをくらって“痛い”と感じたことはなかったけど、試合中でも、今も痛い。特にインローに関しては躊躇なく蹴ってきて、一発目をもらった時、”これはやばいな”と思いました」
それでもプレス掛け続けた野杁。「我慢比べだったら絶対僕の方が強いと思っていた」。そこは「お腹と足では絶対倒れない」という自信があったからだ。タワンチャイからダウンを奪った左フックについて、「とっさの閃き。あのヒザ蹴りに対してのフックは松倉(信太郎)くんとやってきた。練習でやってきたことのひとつではありましたが、あれでダウンを取るというパターンではなかった」と説明した。
世界最強を目指すためにONEのリングに飛び込んできた。その道程はどこまで来たのだろうか。
「世界を見てみたら、まだまだいろいろな選手がたぶんいると思うんですが、僕の1個上にいる選手はあと1人。今のところ目標はそこだけですね」
暫定王者は野杁だが、この階級には正規王者がいる。スーパーボン・シンファ・マウィン(タイ)との統一戦をクリアすることで“最強”の道に近付く。
そのための伸びしろは、自身でも「まだまだ全然ある」という。
「僕は結構前から言ってるんですが、試合で100パーセント、100点満点が出た試合はない。もし100点満点が出たら、その時、たぶん僕は引退すると思っている。今回は全然まだまだ足りないですし、まだまだ成長できると思っています」
タワンチャイ戦の自己採点は「勝ってベルトを巻いたので、ちょっと高めにつけますが」と前置きしたが、「70とか65」と辛口だった。それだけ自身への期待値が高いとも言えよう。
また、共に練習してきた武尊について、「僕がVASILEUSに来たのもONEに参戦した理由も武尊君と揃ってベルトを獲ることが目標なのは今でも変わらない。武尊君の試合後に本人も話をした。今後は武尊君が決めること」と想いを口にすると、「これを話すことで後から怒られることもあるかもしれないんですけど」と前置きした上で話し始めた。
「本当に万全な状態じゃなかったんです。ずっと調子が良く、追い込みも最高の状態をつくっていた。試合の2週間前に実は2カ所骨折していたんです。あばらと胸骨。もちろん練習はできないですし、呼吸すらままならなかった。でもジムに来て軽く動いたりするんですけど、すぐうずくまって、動けない状態がずっと続いていた」
関係者によると医師の診断は全治7週間で、試合にはドクターストップがかかっていたという。
「武尊君はあんなもんじゃない。まだまだ全然できるし、武尊君はONEのベルトを巻ける人間だと思ってる。武尊君は試合終わって『実は2カ所折れていたんです』とは絶対言わない。でも誰かが言わないと、それって分からないことじゃないですか。いろいろ言われるのは見てて苦しい。この後、武尊君から連絡があって『何で言うの?』って言われるかもしれないですけど、それを覚悟の上で僕は皆さんにお伝えできればと思ったんです」
ロッタンも左拳を痛めていたというが、野杁とすれば万全な状態で観たかったというのが本音であり、SNS等で武尊が「脆くなった」と言われることが許せなかったのだろう。賛否両論あるかもしれないが、野杁の盟友を慮った言動にteam VASILEUSの絆を感じさせた。
(文・写真/杉浦泰介)