武尊、ロッタンに無念のKO負け 野杁と若松が世界王者に ~ONE~

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 アジア最大級の格闘技団体「ONE Championship」の日本大会『ONE 172: TAKERU vs. RODTANG』が23日、さいたまスーパーアリーナで行われた。メインイベントのフライ級キックボクシングルールは、武尊(team VASILEUS)がロッタン・ジットムアンノン(タイ)に1ラウンド1分20秒KO負けを喫した。フェザー級キックボクシング暫定世界王座決定戦は野杁正明(team VASILEUS)がタワンチャイ・PK・センチャイ(タイ)を3ラウンド1分55秒KOで下し、暫定王者に就いた。

 

 またフライ級総合格闘技世界タイトルマッチは、同級2位の若松佑弥(TRIBE TOKYO M.M.A)が王者アドリアーノ・モラエス(ブラジル)を1ラウンド3分39秒KOで王座を奪取した。女子アトム級のキックボクシング世界女王のペッディージャー・ルッカオポーロントン(タイ)に挑んだKANA(Team Aftermath)は判定負け。ONEデビューとなった吉成名高(エイワスポーツジム)はラック・エラワン(タイ)に3ラウンド2分40秒KO勝ちを収めた。

 

 1年2カ月前に拳を交えるはずだった両者は、舞台を東京・有明アリーナからさいたまスーパアリーナに変えてリングの上で対峙した。引退をも考えた武尊がONEに戦場を移したのも、キャリアを続けたのも自身の目指す「最強」への道にロッタンがいたからだ。

 2024年1月28日に予定されていた試合はロッタンの負傷により流れた。1年2カ月の間に武尊はスーパーレック・キアトモー9(タイ)に敗れ、ロッタンは計量ミスにより、ONEムエタイ世界フライ級王座のベルトを失っていた。それでもなお運命に導かれるように2人はリングで向き合った。
 
 21時26分、メインイベントの煽り映像が場内のビジョンに流れた。直後、リングアナのコールを受け、武尊が入場。リングイン直前、右手を振り上げ、観客を煽った。武尊の4分後にロッタンが入場。21時41分にゴングは打ち鳴らされた。
 
 武尊の右ストレートを受けたロッタンがバランスを崩した。これはスリップ判定。今度はロッタンの豪腕が唸る。左フックで武尊を後退させると再び左フックで倒した。レフェリーがカウントアップする間、武尊はセコンドに目を向けていた。体力回復を図るためだった。しかし武尊が立ち上がる直前にレフェリーが試合を止めた。わずか1分20秒。それだけダメージは大きかったということだろう。
 
 試合後、武尊はレフェリーの裁定について、「 カウントについてはダメージの回復を待ってはいましたが、立ってもどうなったか分からない。そこについては文句もないし自分が弱かっただけ」と振り返った。
 
 ONEのチャトリ・シットヨートンCEOは「なぜかわからないが、なんとなく武尊とロッタンの試合は1回で終わらないと思っていた」と語ったが、武尊は「とりあえず次のことは考えていない。冷静になってしっかり考え、正式に発表したい」と明言は避けた。この試合を集大成と位置付け、覚悟を持って臨んだ。
 
「日本大会の大将として勝って締められず申し訳ない」と武尊。最後にファンへのメッセージを求められると、「謝ってばかりでもしょうがない。 こんな大会ができたのもファンの人たちのおかげだし、僕が格闘を続けているのもファンの人たちがいるから。本当にずっと変わらず応援してくれたファンの皆さんに、『ごめんなさい』じゃなくて、『ありがとうございました』と言いたいです」と頭を下げ、会見場を後にした。
 

 ONE参戦後1勝2敗ながらタイトルマッチに臨んだ野杁は、ONEムエタイフェザー級王者のタワンチャイを撃破した。

 

 序盤はサウスポースタイルでリーチの長いタワンチャイに手を焼いているように映った。左ミドル、ハイは威力十分。野杁はカーフキックを軸に左ボディで活路を見出そうとした。

 

 試合が動いたのは3ラウンド。左ボディからの左フックでダウンを奪った。さらにラッシュで畳み掛けると、レフェリーが試合を止めた。
「ほとんどの世界中のファンが僕が負けてタワンチャイ選手が勝つと思っていたはず。僕は自分のことを信じていましたし、チームのみんなと一緒にこのベルトを勝ち取ると信じてやってきた」

 

 野杁も「世界最強」を目指し、ONE参戦を決めた1人。暫定王者ということは正規王者がいる。スーパーボン・シンファ・マウィン(タイ)との統一戦が次なる目標か。
「スーパーボン選手との試合は時の流れに任せたい。スーパーボン選手をKOできたら、真のャンピオンだと言えると思うので、次もKOしたい」

 

 3年越しのリベンジを果たした若松は、ONE参戦8年目、13戦目にして、悲願のベルトを巻いた。対戦相手のモラエスは元フライ級王者で、3年前の「ONE X」で判定負けを喫していた。

 

 若松が1ラウンド、左フックでダウンを奪うと、そのままモラエスに襲い掛かる。コーナー際でパウンド。レフェリーが試合を止めた。実力者モラエスを1ラウンドで倒したことをチャトリCEOは高く評価。「ユウヤはフライ級でNo.1だ。他の団体の誰でも勝てる」と語った。

「弱い自分を打ち砕く。相手じゃなく本当の敵は自分」と若松。自身が「世界一」と位置付けるONEの舞台で輝きを見せた。


 ONEデビューとなったムエタイの吉成は、スピード、テクニック、パワーで相手を圧倒した。3ラウンドに左ストレートで仕留めた。慣れないONEのオープンフィンガーグローブにも「スリリングで楽しかった。より自分の強さが引き出される」とアジャストしてみせた。

 

 海外メディアから今後の目標と、2年前に勝利したソンチャイノーイ・ゲッソンリット(タイ)との再戦について問われると、「自分の階級にベルトができたら初代チャンピオンを狙いたい。一度試合しているんですけど、その時よりもソンチャイノーイ選手も強くなっていると思うし、僕も強くなっているので、もう一回やったら面白いと思います」と答えた。

 

(文・写真/杉浦泰介)
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