逆襲を誓った後期も開幕は6連敗。11連敗と大きくつまづいた前期の悪夢が蘇りかけました。しかし、ここで悪い流れに歯止めをかけたのが、途中加入した元中日の野口茂樹です。7月16日の愛媛戦で5回無失点と好投。2番手以降が打たれて一時は逆転を許したものの、打線が奮起して逆転サヨナラ勝ちを収めました。ひとつ勝って以降はチームは5勝3敗2分と盛り返し、まずまずの戦いができています。
 その大きな要因は何といっても先発陣の安定でしょう。先にあげた野口に、香川から移籍した前川勝彦の元NPBコンビはしっかりとゲームをつくってくれます。「2人が投げれば負けない」という雰囲気がチーム内に出てきました。特に前川は移籍後4試合に先発し、3試合で完投。三重は中継ぎ以降の投手が弱いだけに、非常に助かっています。

 そして彼ら2人に勝るとも劣らない投球を見せているのが、右腕の糸川諒(四日市大)です。ストレートとスライダーのコンビネーションで的を絞らせず、後期は2勝(2敗)を挙げています。度胸があり、ピンチでも慌てない点も彼の長所です。結果が出ていることで自信を掴んだのでしょう。強気のピッチングにさらに磨きがかかっています。

 先発3本柱が揃ったことで、他チームとも互角の戦いが可能になってきました。これまで先発だった洪成溶を後ろに回し、その時の調子や、相手との相性で若い村上和也、経験豊富な藤井了らを使い分けながら、勝ち星を重ねていきたいと考えています。

 当面の目標は勝率5割。そのためには打線の奮起が欠かせません。8月に入り、先発が頑張っている反面、得点力が低下しているのは気がかりです。ヒットはそこそこ出ていますが、つながりが悪くなっています。

 ポイントになるのは、やはり主軸の働きでしょう。4番を任せている金城雅也の当たりがここにきて止まっています。なかなか結果が出ないため、14日の愛媛戦では7番に降格せざるを得ませんでした。彼は沖縄出身らしくのんびりした性格ですが、この不振にはさすがに悩んでいるようです。しかし、壁をブチ破れるかどうかは自分次第。どうすればスランプを抜け出せるか自ら考えない限り、成長はありません。

 トップバッターの宮田良祐にも、もう少し出塁率を向上してほしいと感じています。現状は打率.242と切り込み隊長としては物足りない数字です。彼は香川から横浜に入団した大原淳也同様、走攻守3拍子揃ったタイプ。持っている能力は大原と遜色ないと見ています。打率3割、本塁打10本以上の成績を残してもおかしくはないでしょう。盗塁にしても、わずか4つと少なすぎます。ひとつひとつのプレーに対する意識をもっと高くすれば、スカウトに注目してもらえる選手になれそうなだけにもったいないです。

 前期はひどい成績に終わり、ファンやスポンサーの方に申し訳ない思いをさせてしまっただけに、後期は何より勝ちにこだわって戦っています。それだけに借金を抱えている現状には満足できません。早く借金を返済し、そこから本当の戦いに挑む。こういyた状況を早く迎えたいものです。残り15試合、いい野球をファンの皆さんにはお見せします。まだまだ暑い日が続きますが、応援よろしくお願いします。  


古屋剛(ふるや・つよし)プロフィール>:三重スリーアローズ監督
1970年4月13日、東京都出身。駿台甲府高、拓大、新日鉄君津を経て1997年、ドラフト7位で内野手として西武に入団。翌年、1軍デビューを果たし、8年間のプロ生活で79試合に出場した。04年限りで戦力外通告を受け、現役引退。通算成績は打率.187、1本塁打、6打点。09年から長崎のコーチとなり、10年5月からは長冨浩志前監督の解任に伴い、監督に昇格。11年は再び長富監督の下、三重のコーチに就任する。だが、長富監督辞任の後を受け、5月17日より監督代行として指揮を執る。7月より監督に昇格。
◎バックナンバーはこちらから