後期はここまで2位・徳島とわずかな差ながら首位。借金4に終わった前期と比較すると投打のバランスがよくなっています。打線は1〜5番まで打率3割前後を打っていますし、投手もムダな失点を与えず踏ん張っています。泣いても笑っても残り9試合、お互いがカバーし合って、最後はトップでシーズンを終えたいものです。
 他球団と比べても、香川は打線が強力です。このところ本塁打が増えてきた4番の中村真崇らクリーンアップの前に走者がたまれば、得点の可能性は大いに高まります。それだけに、その前を打つ1、2番の出塁が重要です。このところは1番には亀澤恭平、2番には水口大地が入っていますが、彼らにはヒットはもちろん、四球でもエラーでも塁に出ることが求められます。

 ルーキーの亀澤は最初に見た時から素晴らしい足の速さを持っていました。転がせばヒットになる確率が高いだけに、ピッチャーや内野手にプレッシャーを与えられる選手です。香川に来た頃はリードやスタートなど走塁技術の面で課題がありましたが、それも試合に出ることで少しずつ学習し、良くなってきています。現在、26盗塁はリーグトップタイ。さらに投手のクセや配球を勉強すれば、もっと盗塁を増やせるはずです。
 
 そして守りでも亀澤はショートを任され、重要な役割を担っています。こちらも1年目にしては、大きなミスもなく、よく守っていると言えるでしょう。欲を言えば、もう少し全体を見渡し、内外野へ指示を出せるようになるといいですね。まだ自分のプレーで精一杯の状況ですから、いい意味での余裕を持ち、ワンランク上の内野手を目指してほしいと考えています。

 亀澤と1、2番を形成する水口はバットコントロールもよく、打った後に1塁まで駆け抜ける速さが目立つ選手です。しかも、亀澤とは二遊間コンビを組み、守備の面でも欠かせない選手になっています。昨年、長崎でプレーしていた頃から、攻守に素晴らしい選手だと感じていました。長崎の活動休止で救済ドラフトが実施された際には、「水口が欲しい」と球団や監督にお願いしたほどです。

 ただ、長崎時代は能力があるにもかかわらず、ボールへの執着心があまり感じられない点が気になっていました。香川に来てからは監督と僕で意識面での話を何度も繰り返し、球際に強くなったように感じています。プロとアマの守備で大きく異なるのは、この“球際の強さ”でしょう。プロの一流選手はピッチャーやバッターの調子から打球方向を予測し、打球に対する一歩目の反応が速いものです。もちろん、ベンチからデータに基づいてコーチはポジショニングの指示を出しますが、自分でそれらを考えるようにならなくては本当に守備はうまくなりません。

 その点では水口、亀澤の二遊間コンビに、キャッチャーの西森将司も含めた守りの連携が試合を重ねることで良くなってきました。前期で負け越しを喫した悔しさも選手たちにあるのでしょう。チャンスでの打撃、ピンチでの守りによりこだわって野球をするようになってきました。今、チームで取り組んでいることを最後までやりきれば優勝は自ずと見えてくると思っています。

 残り9試合は今まで以上に1つのミスも、1つの負けも許されない戦いです。こういった勝負どころで力を発揮できる選手が真のプロでしょう。秋のドラフト会議を前に、NPBのスカウトに個々人の能力をアピールするチャンスでもあります。1試合1試合を集中して戦い、チームとしても個人としても結果を残す。そんなシーズンの締めくくりにしたいものです。ファンの皆さんにも、ぜひ球場で彼らを後押ししていただけるとうれしいです。応援、よろしくお願いします。 


前田忠節(まえだ・ただとき)プロフィール>:香川オリーブガイナーズコーチ
 1977年10月4日、和歌山県出身。PL学園時代は投手として福留孝介(現インディアンス)らと甲子園に3度出場(最高は3年夏のベスト8)。東洋大を経て、2000年にドラフト3位で近鉄に入団。1年目から巧守の内野手として100試合に出場した。チームがリーグ優勝した2年目(01年)には113試合に出場したが、以降は出番が減少。05年には近鉄球団消滅に伴って東北楽天へ移籍するも、すぐにトレードで阪神に移った。09年限りで戦力外通告を受け、現役を引退。翌年より香川のコーチに就任。現役時代の通算成績は426試合、打率.194、2本塁打、27打点。
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