戸田中央・後藤希友「新天地では不安よりもワクワク」 ~女子ソフトボール~
女子ソフトボールの「JD.LEAGUE」は4月12日、2025シーズンが開幕する。注目は昨季、東地区3位で初のプレーオフ進出を果たした戸田中央メディックス埼玉だ。2連覇中のトヨタレッドテリアーズから日本代表エース後藤希友が加入。24歳のサウスポーに、移籍の理由、今季の意気込みを聞いた。
――昨年オフ、移籍のニュースが報じられた時は、多くのファンが驚きました。「挑戦したい」という気持ちが、6シーズンプレーしたトヨタを離れる決断に至ったのでしょうか?
後藤希友: そうですね。高校卒業後、トヨタに行ったことは正解だったと思っています。今でもトヨタが会社のサポート体制を含め、一番いい環境だと感じています。それでも私の中で、“知らない世界を知りたい”という気持ちが大きくなっていったんです。
――海外移籍を含め、いくつかある選択肢の中から、戸田中央を選んだ理由は?
後藤: 一番は昔からの恩師、福田(五志)さんが監督を務めていることです。福田さんと監督と選手という関係でプレーするのは初めてですが、自分が中学生の時からずっと目をかけてくれていた。自分のことを深く理解してくれる福田さんのチームへ行くことに迷いは、全くありませんでした。
――海外からのオファーは?
後藤: 毎年あったのですが、代表合宿の兼ね合いなどで移籍することはありませんでした。ただ今回はアメリカに行き、(日本でもプレーしたことのある元アメリカ代表の)ミシェル・スミスに直接教わりました。
――帰国後、1月に戸田中央に合流しました。戸田中央というチームの印象は?
後藤: みんなが私をすぐ受け入れてくれました。結構、キャラクター的にみんな濃くて、めっちゃ明るい人がたくさんいます。その人たちと自分も楽しくソフトボールができているので、ここに来て良かったと思います。
――自分の選択は間違いじゃなかった、と?
後藤: そうですね。福田さんと話をしていても、すごく自分のことを理解してくれていると感じます。福田さんは“選手ファースト”で、選手がどうしたいか、意見を聞いてくれる。
――戸田中央を強豪に引き上げたいというミッションもあるのでは?
後藤: チームは昨年の全日本総合選手権で優勝しています。戸田は打力があるチームなので、それぞれの役割をみんなが果たすために、自分は自分の役割を遂行すればいい、と。もちろん、一緒に優勝したいという気持ちが強くて、ここに来ています。ただ優勝というのは、どこのチームにいても目指すべきものだと考えています。
「自分は自分」
――昨季まで所属していたトヨタでは、日本代表でもバッテリーを組む切石(結女)選手がマスクを被ることが多かった。戸田中央はあまりキャッチャーを固定していません。
後藤: それは自分次第だと思っています。気にする、しないというよりも自分が合わせられるかどうかが大事なんです。
――個人としての目標は?
後藤: チームにはいいピッチャーが揃っていますから、私がどういう起用をされるかはわかりません。強いて言うなら、防御率は0点台を目指したいと思っています。
――戸田中央には昨季東地区最多勝の増田侑希投手、同最優秀防御率のジョージナ・コリック投手の二枚看板がいます。
後藤: 私自身、先発に強くこだわっているわけではありません。リリーフでも試合の大事な場面で起用されたら、それはそれで燃えるタイプ。ジョージや増田さんがチームにいることに対しては、ライバルというよりは、違うタイプのピッチャーがいると感じています。あくまで2人は2人、自分は自分と考えています。
――開幕が近付いています。今の心境は?
後藤: 不安よりもワクワクの方が強いですね。東地区の強打者との対戦が楽しみです。
――日本のエースとしての自覚は?
後藤: リーグでプレーしている分には、自分は自分のやるべきこと、プレーに集中しています。ただ代表の時は別ですね。まだ、その自覚は足りていない。それは上(野由岐子)さんの姿を見ていて強く感じます。
――ソフトボーラーとしての理想像は?
後藤: そこまで明確にこうだというのはありません。今の上さんくらいの年齢まで自分がプレーできるとも思っていません。ただソフトボール選手のトップに立てるような人間でありたい。若手が“ついていきたい”、“見習いたい”と目標になるような存在ではありたいと思っています。
――次の目標は28年のロサンゼルスオリンピックでの“連覇”でしょうか?
後藤: ロスはもちろんそうですし、欲を言えば、その先も金メダルを狙っていきたいと思っています。上さんはオリンピック3大会(04年アテネ、08年北京、21年東京)で2個の金メダルを取っているので、それを超えたい。そんな簡単なことじゃないのはわかっていますが、まずはロスしか見ていません。自分がどういうふうに取り組み、どう成長していくのかに集中したい。ロスより先のことは考えず、ロスが終わった時にまた考えようと思っています。
<後藤希友(ごとう・みゆ)プロフィール>
2001年3月2日、愛知県出身。小学4年生でソフトボールを始める。東海学園高を経て、19年トヨタ自動車入社。高校2年時には日本代表強化指定選手に選ばれ、日米対抗に出場した。東京オリンピックでは5試合に登板し、防御率0.00の活躍。日本の金メダル獲得に貢献した。JD.LEAGUEでは、2度のMVPを獲得するなど3シーズン中2度の優勝に導いた。今季より戸田中央メディックス埼玉に移籍。身長175cm。左投げ左打ち。背番号17。
※BS11では2025年シーズン開幕戦にあたる第1節、昨シーズンのダイヤモンドシリーズ・セミファイナルで敗れ、王座奪還を目指す初代女王のビックカメラ高崎ビークイーンと、昨シーズン東地区7位の大垣ミナモとの一戦を、4月12日(日)19時~放送します。ぜひお楽しみに。
(取材・構成・写真/杉浦泰介)