“嘘から出た実”一夜限り!?のスペシャルライブ ~D.LEAGUE~

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 4月1日、日本発プロダンスリーグ「D.LEAGUE」のValuence INFINITIES(バリュエンス インフィニティーズ)の公式SNSで<【重大発表】バンド結成のお知らせ>という投稿があった。

<この度、 Valuence INFINITIESはさらなる可能性を追い求め、企業理念にある「好きを、究めよ。」を体現するべく、ダンスを手放し、音楽でトップを目指すこととなりました。バンドチームを結成し好きな表現を追い求めるべく、バンド名「夢弦(むげん)」として活動いたします>

 

 エイプリルフールによるスポーツ団体の競技シャッフル・転向発表は、それほど珍しいことではない。だがINFINITIESの場合は、その先が違った。6日後、実際にバンドライブを行うというのだ。

 

 4月最初の月曜日、渋谷のStudio Freedomで行われた「Valuence INFINITIES LIVE 2025 “夢弦”」には約200人の観客が詰め掛けた。その中にはINFINITIES以外の現役Dリーガーの姿も見つけられた。この日の目玉コンテンツは「夢弦」によるライブパフォーマンス。1曲目の『Hello』はドラムを務めたKEINとボーカル&ラップのKODEE ONEが作詞作曲を担当した。ギターはMAKO、ベースはMASSA、キーボードはSEIYA。レゲエ調のメロディーを奏で、KODEE ONEが歌声を響かせた。

 

 2曲目は夢弦を脱退したとされるメンバー、ラッパーBERGMAN(RENTA)が登場。KODEE ONEと共にノリノリで、KODEEとRENTAが作詞、SEIYA(CVLoops)が作曲した『U saw days』を披露した。アンコールを受け、ボーカルがKEIN、ドラムがSEIYAに代わり、カバー曲『Stand by me』を演奏した後、夢弦は解散という運びとなった。

 

 INFINITIESの“ワンマンライブ”はバンド演奏だけではなかった。ここからは“本業”のダンスを中心としたプログラムだ。メンバーのダンスバトル、そして『LIMITED SUPER BATTLE』と銘打ったスペシャルゲストを呼んでのエキシビションバトルだ。後者はフジテレビ系列で放映されたR4SDでMAKOと同じ“谷口クルー”(グローバルボーイズグループの『DXTEEN』の谷口太一をREPとしたクルー)の一員だったavex ROYALBRATS(エイベックス ロイヤルブラッツ)のJUMPEI(リーダー)、FULLCAST RAISERZ(フルキャスト レイザーズ)ディレクター兼ダンサーKTR、SEGA SAMMY LUX(セガサミー ルクス)のリーダーTAKIが参戦。INFINITIESのメンバー(RENTA、MASSA、KODEE ONE、KEIN)と“谷口クルー”による4対4のチーム戦を行った。

 

 普段のショーやR4SDのショーに比べると、ライブハウスのステージは狭いが、それでも彼らはステージを目一杯に使った。各々のスキルに加え、相手を挑発するようなアクションやオリジナルのムーブで観客を煽りに煽る。会場の熱量をグッと引き上げていった。

 

 その後はINFINITIESらしくクイズコーナー、シグネチャームーブを観客と一緒に踊る緩く和気あいあいとした時間を過ごした。約2時間に及ぶ遊び心満載のイベントは盛況のうちに終了。終演後、メンバーがそれぞれ挨拶をした。無限のベーシストも務めたMASSAは「本気の遊び、いかがだったでしょうか? メンバーのみんな、お客さん、そしてスタッフのみなさん、会社の方々に支えられていることをもう一度実感できたと思っています」と感想を述べた。

 

 STICHが「会社の皆さんを含め、遊びの延長にすごく力を入れているなと思ったんですが、ここまで盛り上がってくれるお客さんがたくさんいてくれて、とても素晴らしいなと思いました。ありがとうございました」と言えば、LÓNは「本気で遊びもダンスもやるチーム。一緒にこういったかたちで残せてうれしいです」と振り返った。

 

 本気の遊び、遊びの延長……。メンバーが揃って口にしたのは「遊び」。それがINFINITIESのチームカラーであり、魅力でもある。

 INFINITIESの企画の仕掛け人が、チームの母体企業であるバリュエンスジャパンの砂田帆司郎氏だ。ROUND.6のMAKOのお面大作戦など、一風変わった企画を手掛けてきた。
「チームのオーナーである嵜本晋輔代表に『人が“何それ”と思うようなことじゃないと新しくなかったり、面白くないから』と日頃から言われているので、僕自身、結構自由に考えて提案させていただいています。やっぱり選手たちが主体的になり、楽しんでやれることが一番重要。会社の熱量と選手の熱量が合わさり、掛け算のようになった時がいい企画になると思っています」

 

 エイプリルフールネタは1年目がサッカーチーム、2年目がバスケットボールチームへの転向だった。では今回のバンド結成は?

「バンドネタというのは選手からのアイディアでした。彼らがチームやファンを盛り上げることに対し、主体的になってくれたと感じ取れた。もうこれは“絶対面白くなるな”ということは、その時に確信しましたね。実際にイベントをやってみて、こんなにお客さんに来ていただけるとは正直想像していませんでした。また、お客さんがバンドのパフォーマンスに対して、ものすごく盛り上がってくださったことがうれしい衝撃であり、感動したシーンでした」

 

 また“解散”したばかりの夢弦のメンバーに改めて話を聞いた。人前で演奏するのは「15年ぶり」と言うギターのMAKOは「ちょっと緊張しつつ、あの頃の感じも思い出した。今の仲間たちと、ひとつのことに取り組めたのが最高でした」と笑顔で振り返った。「CVLoops」名義で音楽制作も行うSEIYAが、今回の発案者でもある。

「なんか自分たちが好きでやりたいことを、いろんな人に見てもらった。悪く言うと、お遊戯の延長のような感じなんですが、でも自分たちは結構しっかりやってきた。ベストは出せたかなと思う。今日は達成感でいっぱいです」

 

 この日、ゲスト参加したDリーガーにイベントの感想を聞いた。

「Valuence INFINITIESにしかできない個性溢れるライブで本当に楽しかったです! D.LEAGUEのシーズン中にやるリスクも、もちろんあったと思うのですが、ファンの皆さんのためにINFINITIESさんにしかできないことを本気で、自分たちが楽しんでやる姿に感銘を受けました!」(KTR)

「何事も本気でやり切れば成せるということを、再確認できる本当に最高のイベントでした! すごく楽しかったです!」(JUMPEI)

「ダンスだけではないエンターテインメントも含まれていて、すごく刺激になりました」(TAKI)

 

 チームのリーダーやディレクターを務める3人も大いに刺激を受けたようだ。
「是非やってみたいです! そしてファンの皆さんもみたいと思うだろうなと思いました! 演者が楽しんでないと見ている人たちも楽しくないでしょうし、それを体現していたなと思いました」(KTR)

「自分たちのチームでもダンス以外のエンタメに挑戦したい気持ちにはなりました!」(JUMPEI)

「今回は、谷口クルーとしてダンスバトルに参戦させていただきましたが、そのステージでしか見られないスペシャルなものをSEGA SAMMY LUXのイベントでもやってみたいと思いました」(TAKI)

 

 今回のイベントを含め、Dリーガーの混成チームによるショーケースはレギュラーラウンドとは違った趣がある。個人的にはD.LEAGUEで、まだ実施されていないオールスターラウンドへの期待が高まる。それについて、選手たちの声を聞いてみた。

「ぜひやりたいですし、みんなも求めているとも思うのでやった方がいいと思います」(KTR)

「とっっっても大変そうですがやってみたいです!」(JUMPEI)

「ぜひやりたいです!」(TAKI)

 

 日程や会場の確保など簡単なことではないが、普段のラウンドでは見られないショーケースも期待できる。ディレクターの色が濃く表れるのか、スペシャルなディレクターを招聘しチームを選出するのか、リーグやディレクター推薦でのSPダンサー起用など、実施した際のレギュレーションも興味深い。

「今、リーグは全国からダンサーが集まっていますが、オールスターになれば世界規模になってくるんじゃないかと思います。今やってるショーケースの振り幅だけじゃ足りないと思う。もっとこう視野広げてみると面白いかもしれないですね」(SEIYA)

「それこそ僕はR4SDに出させていただきましたけど、めっちゃ大変だった。でもその代わりに視野が広がったし、普段自分たちがやっているものの良さも改めて気付けた。それこそSEIYAも言ったように規模がでかくなり、世界と渡り合うようなものになっていくと思う。もし実現できるなら、ぜひ今シーズンの終わりぐらいからでもやってみたいです」(MAKO)

 

 ファン投票などで人気の可視化ができる。ランク入りすることで、チーム、選手、ファンのモチベーションアップに繋がるかもしれない。レギュラーラウンドやCSの緊張感とは違った、お祭り感の強いイベントとなるはずだ。一夜限りのスペシャルイベントは、INFINITIESの魅力を再認識すると共に、Dリーグオールスターを見てみたいと感じたのは嘘、偽りではない。

 

(文・写真/杉浦泰介)

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