MESSENGERS、卓抜のダンススキルでCYPHER ROUND初制覇 4チームがCS進出決定 ~D.LEAGUE~

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 29日、日本発のプロダンスリーグ「第一生命D.LEAGUE 24-25 REGULAR SEASON ROUND.12」が神奈川・横浜BUNTAIで行われた。年に1度のCYPHER ROUNDはDYM MESSENGERS(ディーワイエム メッセンジャーズ)が制覇。2位のValuence INFINITIES(バリュエンス インフィニティーズ)は連覇を逃した。MESSENGERSとINFINITIESはCSP(チャンピオンシップポイント)4ポイントを積み上げた。3~6位のCyberAgent Legit(サイバーエージェント レジット)、dip BATTLES(ディップ バトルズ)、KOSÉ 8ROCKS(コーセーエイトロックス)、SEPTENI RAPTURES(セプテーニラプチャーズ)の4チームは3ポイントを獲得。この日の結果により、1位から4位までのLegit、KADOKAWA DREAMS(カドカワ ドリームズ)、INFINITIES、RAPUTURESが2ラウンドを残し、6位以上を確定させ、チャンピオンシップ(CS)出場が決まった。ROUND.12のMVDは1st CYPHERを制したINFINITIESのTSUKKIが選ばれた。

 

 ストリートの雄、MESSENGERSが個の力で他を圧倒。5つあるCYPHERのうち4つを制した。


 CYPHER ROUNDは通常ラウンドと起用する合計人数は同じである。だが、1チーム8人によるショーケースを1対1の対戦形式で行う通常のラウンドと違い、各チーム代表の8人が1人のSOLO(3回)、2人組のDUOと3人組のTRIO(1回)の計5回に分かれて戦う。各CYPHERは「スキル」「クリエイション」「完成度」と「臨場感とインパクト」という視点から5人のジャッジが各10点満点で評価。そのポイントにオーディエンスジャッジ(得票票数に応じたポイントを付与)を加え、1CYPHERで最高60点満点。5回の合計得点で順位が決まる。

 

 1stCYPHERはSOLO。昨年チームのトップバッターを任され、CYPHER ROUND制覇に貢献したTSUKKIをはじめ実力者が集まった。BATTLESはディレクターのKENSEIを起用。リーダーはDREAMSのKISA、MESSENGERSのFOOL、8ROCKSのYOUTEE、LIFULL ALT-RHYTHM(ライフル アルトリズム)CHIHIRO、FULLCAST RAISERZ(フルキャスト レイザーズ)のINFINITY TWIGGZの5人が出場した。

 

 この猛者揃いの中、得意のブレイキンでパワームーブを披露したのがTSUKKIだ。両足をプロペラのように旋回し、空中を舞うエアートラックスで他を圧倒した。54点のハイスコアをマーク。2位に代名詞のポッピンで弾けんばかりに踊ったKENSEIが52点、3位には力強いワックで魅了したCHIHIROが47点で入った。TSUKKIは「今年もバリュエンスが獲るんで、皆さん見ておいてください。マジでヤバイんで」と後続にバトンを繋いだ。

 

 2ndCYPHERはDUO。INFINITIESの連覇か――その流れをひっくり返したのが、坊主頭で揃えたというKeitrickとAITOだ。提案者のKeitrickは「坊主でやったら、だいぶ破壊力ありそうだなというのと、なんかいい感じにもハマるなって思った」という。同じDUOにはパリオリンピックブレイキン女子金メダリストのAMIが姉のAYUと参戦。INFINITIESはフランスからの助っ人ROCHKAを起用したが、「それぞれジャンルは違いますが、このステージでは同じ土俵。オレはオレ、KeitrickはKeitrick。金メダリストは金メダリスト。全く怖くなかった」とAITO。ゴー・マイ・ウェイな姿勢はダンスにも表れていた。

 

 どこか人を食ったような踊りを見せるAITO。Keitrickをも食わんばかりの勢いがあったが、対立構造というよりは、共鳴し合うような不思議な魅力を帯びていた。「それぞれ自分の好きなものを突き詰めていくスタイルなんで、そこが混じり合うところがすごいワクワクした。化学反応が生まれ、想像通りの出来になった。それが本番のテンションに合わさった」。踊った順番でビジョンに得点が表示される。4番目のMESSENGERSに「56」が表示された。「すげえ安心した。みんなにいいパス回せるし、良かったなと」とAITO。2ndCYPHERはSEIYAとROCHKAのINFINITIESが49点、Ryo-spinとRENと演舞した8ROCKSが48点で続いた。暫定順位はINFINITIEが103点でトップ、MESSENGERSが99点、BATTLESが98点と僅差となった。


 高得点を挙げた後の3rdCYPHERは、Takuyaが登場。「もうこれは“やるしかねえ”と思い、自分に集中しました。わずかな時間でしたが、今までにないくらい集中し、目を閉じて踊りをイメージして舞台に臨みました」。ゆるやかに乗っているようで見えつつも、流れる音楽の沁み込み具合が抜群だった。身体をウェーブさせ、抜け感が際立つ踊りだったが瞬間的に決めるところ決める。派手なムーブはなくとも観る者を惹き付けるパフォーマンスだった。

 

 TakuyaはMedical Concierge I'moon(メディカル・コンシェルジュ アイムーン)ディレクターのMIZUE、LegitのリーダーTAKUMI、List::X(リスト エクス)のリーダーのTenjuのほか、DREAMSのKELO、RAPURESのMiYU、昨年のCYPHER ROUND MVDのKILLA TWIGGZ(RAISERZ)という顔ぶれの中、55点を叩き出し、リードを広げた。2位はTAKUMIとKELOが49点で並んだ。前者はポッピンで、後者はアニメーションという自身の武器で観客を沸かせた。この結果により、ハーフタイム中に発表された暫定順位でトップに躍り出たのがMESSENGERS(154点)だ。9点差でBATTLESが2位、12点差でINFINITIEが3位、18点差でLegitが4位、20点差で8ROCKSが5位。

 

 4つ目のCYPHERはTRIOだ。MESSENGERSはここでも50点台(53)をマークし、トップを取る。Yu-mah、Yoshiki、TAKUTOがロッキンで共鳴。冒頭で3人の静止からスタートし、Yoshiki、TAKUTO、Yu-mahの順に動き出していく。2位は49点で3チームが並んだ。地獄、KANATO、SPダンサーのJENESによるパントマイムのようなコミカルな振りを採り入れたLegit。2GOOとディレクターのSHUVANに加え、SPダンサーのWINGZEROが遊び心満載のアロハシャツを羽織り、波乗り要素を織り込んだ8ROCKS。TsUmU、HOKUTO、Kouuuuuの高速ステップを披露したBATTLES。MESSENGERSが2位のBATTLESとのリードを13点に広げた。

 

 ラストはSOLOで締めくくる。MESSENGERはロッキンを得意とするHANAが登場。「もう足が震えそうでした」という緊張感で迎えたが、彼女らしさ全開のロッキンで観客を魅了した。SEGA SAMMY LUX(セガサミー ルクス)のCanDoo、ALT-RHYTHMのcalin、8ROCKSのISSEI、Legitのena、DREAMSの颯希といったチームならびにリーグの顔とも言えるような面子の中でHANAの得点は54点。ここでもMESSENGERが制し、合計スコアは261点。2位のINFINITIESに20点差を付ける圧勝劇だった。3位のLegitは236点、4位のBATTLESは233点、5位の8ROCKSは226点だった。

 

 これでCSPを4ポイント加えたMESSENGERSは計17ポイントで、順位が10位から7位に浮上した。この日4枠が埋まったため、CS出場はあと2枠。5位の8ROCKSとは5ポイント、6位のBATTLESとは4ポイント差。Yu-mahも「今日、優勝でき、(MESSENGERSは)心がひとつになったと思います。ラストまで頑張りたいと思います」とコメント。2季連続のCSへ、次戦はROUND.13(5月8日)はBATTLESとの直接対決だ。

 

 卓越したダンススキルはもちろんだが、音楽との共鳴、共存、共生がこのチームの魅力だ。「みんな音楽が大好きで、いつも音楽を聴きながら、遊んで踊っている。踊りが遊びみたいなんですけど、その繰り返しが今日の結果に繋がったと思います」とTakuya。リーグでも独特のオーラを放つチームは、己のこだわりを貫きながらも勝利を目指す。

 

 CYPHER ROUNDはダンサーのカラーが際立つリーグでは希少なラウンドだ。今季初参戦となったAMIはCYPHER ROUNDの印象を「出ているダンサー全員が、それぞれ違う色を持っていて、それをジャッジするのは難しいと思う。だからこそ面白いとも感じました」と語ったが、そのスタイルウォーズ感が通常のラウンドよりも色濃く表れる。


 また、このラウンドの特異な点は、ステージでパフォーマンスをしているダンサーに対するDリーガーのリアクションが観客席からも見られるところだ。1stCYPHERに出場したINFINITY TWIGGZのように他のダンサーの振りに合わせ、一緒に踊る選手がいれば、相手を称えるポーズを取る選手もいた。会場で観ていてDリーガー側の席が沸いたのは、4thCYPHER、I'moonのパフォーマンスだったか。SPダンサーに周平を起用し、miyuとNanaがEDMに乗りながら挑発的なダンスを踊り、会場全体を盛り上げた。得点こそ伸びなかったとしても、観る者の記憶に残るパフォーマンスを魅せた選手たちにも拍手を送りたい。

 

(文・写真/杉浦泰介)

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