12日、全日本野球会議の日本代表編成委員会は、12月1〜3日に台湾で行われる北京五輪アジア予選に向けての最終候補選手34名を発表した。
 予定では28名に絞られる予定だった。しかし、NPBではクライマックスシリーズ、日本シリーズ、アジアシリーズが控えており、いつ故障者が出ないとも限らない。実際、クライマックスシリーズ第1ステージを控える中日は森野将彦、井端弘和など主力選手が故障しているとの情報が伝えられている。その中で28名に絞ることは無理と判断し、余裕をもたせるかたちで最終メンバーより10名多い34名を最終候補として選んだ。
(写真:アジア予選への強い意気込みを語る星野仙一監督)
 それでもチームの指揮を執る星野仙一監督は「“野球界のために戦う”という強い気持ちをもった男たちの集まり。今、改めて“このメンバーでやるんだ”という意欲がわいている」と選考への自信をのぞかせた。

 最も注目されたのは投手陣だ。MVPが確実視されているダルビッシュ有(北海道日本ハム)や防御率と勝率の2冠に輝いた成瀬善久(千葉ロッテ)、さらに今季も最多セーブを誇った藤川球児(阪神)などが順当に選ばれた。
 しかし、大物ルーキーとして注目され1年目から11勝を挙げた田中将大(東北楽天)の名はそこにはなかった。一方、アマチュアからただ一人候補に挙がっていた長谷部康平(愛知工業大)が15名の投手枠に入った。

 星野監督は投手陣の選考について聞かれると「(アジア予選は)3試合しかない中で誰を先発にもっていくか。そのことを基準にして選んだ」と述べた。さらに長谷部については8月に行なわれたプレ五輪でのピッチングを高く評価し「プロと比較してみても、彼の力は同等、あるいはそれ以上に値する」と絶賛。不足している左のリリーフ投手として長谷部への期待は大きい。

 一方で今回落選した田中や内海哲也(巨人)に対しては「(五輪の)本戦では試合数が多い。約束はできないが、彼らにも(選ばれる)可能性は十二分にある」と北京五輪出場の際にはメンバーを再考する考えを示唆した。

 また、対戦相手の韓国や台湾については「韓国は李承をはじめ、パワーがあるバッターが多い。正直言って、日本はパワーの面では劣る。しかしそこはチームということを考えれば、十二分に戦える。台湾は中国でオリンピックがあるということで、国をあげて力を入れている。日本は、韓国や台湾に負けないくらいチームとして一つにまとまらなければならない」と慎重な面持ちで語った。

 そのほか、会見では大野豊投手コーチ、田淵幸一ヘッド兼打撃コーチ、山本浩二守備走塁コーチが、それぞれ選考理由や予選での戦い方について語った。

(写真:果たして大野豊コーチはどんな投手起用をするのか……)
―― アジア予選ではどういう投手起用をしていくのか。
大野 : 今回の投手15名には先発メンバーがかなり入っているが、状況によっては当然その中から中継ぎで投げてもらうという選手も出てくる。先発やリリーフの起用法については、ある程度の青写真は描いているが、今後の試合(クライマックスシリーズ、日本シリーズ、アジアシリーズ)や自主トレ、直前合宿を見ながら考えたい。

――どういう攻撃をしていきたいか。
田淵 : 1軍の一流の選手が集まるわけだから、技術どうのこうのではなく、星野監督がどういう指針の中でプレーをしていくか、試合を進めていくかということをまず第一に伝えたい。それは何かというと、1点を取りにいくということ。だから打順に関係なくバントしてもらうし、しつこい攻撃をしていく。また、国際大会の球審は外角のストライクゾーンを広くとるので、逆らわないバッティングでつないでいきたい。

――各チームから選手が集まっての一つのチームになっているということで、連携という面が一番重要になってくると思うが。
山本: 状況に応じて、何をしなければいけないかはわかっていると思う。それよりも気持ちが一番大事。みんなの気持ちを一つにさせるということが我々の仕事。

 11月には宮崎で直前合宿がスタートする。そこでは「チームが一つになるための“ハートのトレーニング”を行なう」と星野監督。台湾出発前にはオーストラリアとの壮行試合が予定されており、そこでチームの結束力が試されることになる。
 アジア予選まで約1カ月半。いよいよ“星野ジャパン”が本格的に始動する。


北京五輪アジア予選最終候補選手

【投手】15名
(パ・リーグ)
 ダルビッシュ有、武田久、武田勝(以上、北海道日本ハム)、杉内俊哉(福岡ソフトバンク)、涌井秀章(西武)、渡辺俊介、成瀬善久、小林宏之(以上、ロッテ)、加藤大輔(オリックス)

(セ・リーグ)
 川上憲伸、岩瀬仁紀(以上、中日)、藤川球児(阪神)、上原浩治、高橋尚成(以上、巨人)

(アマチュア)
 長谷部康平(愛知工大)

【捕手】4名
(パ・リーグ)
 里崎智也(ロッテ)

(セ・リーグ)
矢野輝弘(阪神)、阿部慎之助(巨人)、相川亮二(横浜)

【内野手】8名
(パ・リーグ)
 西岡剛(ロッテ)、川宗則(ソフトバンク)

(セ・リーグ)
 井端弘和、荒木雅博(以上、中日)、宮本慎也(東京ヤクルト)、小笠原道大(巨人)、新井貴浩(広島)、村田修一(横浜) 

【外野手】7名
(パ・リーグ)
 稲葉篤紀(日本ハム)、大村三郎(ロッテ)、多村仁(ソフトバンク)、和田一浩(西武)

(セ・リーグ)
 森野将彦(中日)、青木宣親(ヤクルト)、高橋由伸(巨人)