第813回 NPB、ルーズベルトゲーム再現
昨季、セ・リーグで最も得点の少なかった球団が中日(373)、下から2番目が広島(415)だった。
その両チームが対戦するのだから、今季初の3連戦はロースコアのゲームが予想された。3試合とも接戦となったが、やはりホームランはゼロ。お客さんからすれば、せめて1本くらいは打球が外野スタンドに飛び込むところを見たかったのではないか。
参考までに3試合の結果を紹介しておく。8日、中日1対1広島(延長12回)。9日、中日3対1広島。10日、広島2対1中日(延長11回)。
3試合で記録した得点は中日が5で広島が4。スコアだけ見れば、サッカーの試合のようだ。
そんな中、スポーツ各紙に「魚雷バット」の大見出しが躍った。MLBで話題を呼んでいる新型バットが、早ければ今季中にもNPBに導入されるのではないか、との見方を示していた。
この「魚雷バット」については、先週号の小欄でも触れた。ヤンキースの元アナリストで物理学者のアーロン・リーンハートが開発したバットで、従来のバットより、スイートスポットがグリップに近い位置にある。
その形状がトルピード、すなわち「魚雷」に似ていることから命名された。
ヤンキースは3月29日(現地時間)のブルワーズ戦(ヤンキースタジアム)で、球団新の9本塁打を記録した。そのうちの5本が、この新型バットから生み出されたものだった。
NPBは近年、“投高打低”が続いていた。昨季の本塁打数は12球団合わせて975本。本塁打数が1000本の大台を割ったのは、12年の881本以来、12年ぶりだった。
だが観客動員数は、本塁打の減少と反比例するかのように伸び続け、昨年は前年比6.4%増の約2668万人を記録した。
観客は接戦を望んでいるのか、それとも派手な打撃戦か。「8対7が一番おもしろい」と語ったのは、野球好きで知られた第32代米国大統領フランクリン・ルーズベルトである。
<この原稿は2025年5月5日号『週刊大衆』に掲載されたものです>