『ROUND AFTER ROUND.11』月を喰らいセプテーニとしての歓喜の歴史を ~D.LEAGUE~
日本発のプロダンスリーグ「D.LEAGUE」のSEPTENI RAPTURES(セプテーニ ラプチャーズ)は今季(24-25シーズン)で2度目のチャンピオンシップ(CS)出場を決めた。ROUND.12終了時点で6勝3分け2敗、チャンピオンシップポイント(CSP)は26ポイントの4位に付けている。選手ディレクションとなったROUND.11を中心に振り返る。
通常はディレクターのAKIHITOがメインでディレクションを担当するのだが、ROUND.11では選手にディレクションを任せた。その理由をAKIHITOはROUND.11の振り返りを収めたチームの公式YouTubeでこう述べている。
<YUYAのプライドに懸けて戦っていきたいラウンド。かつRAPTURESの中でもクリエイティブ脳を持っているTANUKIとYUYAの組み合わせで、「選手ディレクションに挑戦してみてはどうや?」ということで生まれた>
かくしてTANUKIとエースパフォーマンスを任されたYUYAが作品づくりの中心となった。TANUKIは23-24シーズンからの2季目でROUND.10までは全ラウンドで起用されてきたが、ROUND.11ではチームを俯瞰で見るためにメンバーから外れた。YUYAは20-21シーズンから参戦する初期メンバー。AKIHITOの言う「YUYAのプライドに懸けて戦っていきたい」とは、対戦相手が少なからず関係している。Medical Concierge I'moon(メディカル・コンシェルジュ アイムーン)とは22-23シーズンにYUYAを中心に置いた作品でSWEEP負けを喫していたからだ。昨季は3対3のドロー。2年越しの雪辱の機会と捉えた。だからこそ、このラウンドのショーテーマは「月蝕」。I'moonの象徴でもある月を喰らうというのである。YUYAも「自分のバトルスタイル的にも喰らいにいくというのが合っていた」とハマりが良かったという。
YUYAとAYUMIにROUND.11のショーケースで注目ポイントを聞くと、「冒頭の振りとエース」と口を揃えた。月に見立てた小道具をバックに8人が宇宙服を想起させる衣装で踊る。YUYAが「結構時間がかかった」という振りは、電流が走っているようなバイブレーションでスタートする。シンクロパフォーマンスでは見事な音ハメ。手を望遠鏡代わりに月面を観測するように眺める。そして月に見立てた黄色い布を鉄の輪っかから剥がすと、エースのYUYAが登場。キレのあるムーブで観客の視線を引き付ける。そこから8人のダンスが加速度を上げる。YUYAが鉄の輪っかを掴み、TORAが彼を回す。最後はYUYAを中心にひとつのオブジェのように8人が重なりあってショーの幕を閉じた。
ジャッジの結果は5対1でRAPTURESの勝利。「テクニック」以外の「オーディエンス」「コレオグラフィー」「ステージング」「シンクロパフォーマンス」「エースパフォーマンス」の5票を得た。勝利が決まった瞬間、YUYAはその場にかがみ込み7人のメンバーが彼を囲んだ。その時の心境をYUYAはこう振り返る。
「まずは“みんな、ありがとう”と思った同時に“あと1票取れなかった”という気持ちもありました。過去にSWEEP負けしていたので、SWEEP勝ちでやり返したかった」
これでYUYAは今季エースパフォーマンスを任された全4回で「エースパフォーマンス」票を獲得している。エースパフォーマンスを経験したAYUMIは「本当にすごい。いつもビックリするようなソロを見せるんです」と尊敬の念を抱いている。それだけYUYAのチーム内での存在感は際立っているとも言える。ROUND.11ではMVDも獲得した。
私見を述べれば、今季のRAPTURESの中で、AYUMIの存在感が増しているよう映る。その点について本人は「昨シーズン、RAPTURESにおいて、自分のダンスの強みと弱みが分かった気がします。その強みを生かす瞬間と、弱みを克服しなきゃいけない瞬間を、YUYAやMiYUというずっと先頭で走ってくれている人たちを見て勉強しました」と答える。
その成長ぶりはチームメイトもつぶさに感じているという。YUYAは「上から目線になってしまい申し訳ないんですが」と前置きした上で、「チームとしての武器が多くなったのは、AYUMIちゃんの存在も大きい。彼女の場合、リフトを任せられる。ROUND.11の振り付けも彼女がいたからこそできた部分もある。エースパフォーマンスを担うのもメンタル的はかなり重いものがある。そこは精神面的にも、肉体的にも強くないといけない。仲間として誇らしい」と称えた。そしてこうも付け加えた。
「それはAYUMIちゃんだけに限らず、他のメンバーに対しても思っています。“この仲間たちと一緒に戦っていきたい”と、より一層強く感じているシーズンです」
身長152cmのAYUMIと158cmのYUYAは小柄に分類されるダンサーだ。リフトでは持ち上げれられる役割を担うことが多い。下には下の肉体負担があるように上には上の大変さがあるはずだ。それでもAYUMIは「RAPTURESには力持ちのメンバーが多い」と言う。
「自分のことをリフトしてくれるのが基本的にeigh10(エイト)。そこはもう何回も組んでいるので安心感があります。ヒョイッて感じで乗るだけ」
チームにおける“上下関係”をYUYAが補足する。
「だいたいリフトは、する人とされる側が結構固定なことが多い。そこの信頼関係がしっかり築かれている。オレとTORAさん、AYUMIちゃんとeigh10。オレの場合は“TORAさんだったら、どれだけ力をかけても絶対受け止めてくれるだろう”と任せられる。そこはそれぞれの信頼関係で成り立っている部分は大きいですね」
リフトを組むペアだけでなくチームメイトとの連帯感は高まってきている。AYUMIは「言わなくてもわかるということが増えてきた。それだけチーム一丸となってきていると感じます」と手応えを口にする。YUYAは
「AKIHITOくんが『同盟でいよう』と、いつも言っていた。それは仲間というだけでなく個人が各々戦えることが重要。個性を殺すのではなく、一人ひとりを理解し、踊れたり、制作に打ち込めている。スタメンでもそうじゃなくても一緒に戦っている気がする。AKIHITOくんが言っていたことが最近ようやく理解できてきました」
RAPTURESの今季に懸ける想いが強いのは来季(25-26シーズン)より、チームのオーナーが株式会社セプテーニ・ホールディングスから株式会社チェンジホールディングスに変更となるからだ。SEPTENI RAPTURES という屋号は今季で最後となる。
YUYAはROUND.11の壇上で「来シーズンから新しい名の下でD.LEAGUEに参加しますが、今シーズンは絶対に“SEPTENI RAPTURES”という名前で優勝します!」と誓った。AYUMIは「YUYA、MiYUは5年間、セプテーニを背負ってきた想いがある。私は3年間ではありますが、そのYUYAたちの想いも含め、チーム全員で勝たなきゃいけないと思っています」と語った。
チームとしてのCS出場は3季ぶりだが、AYUMIは初の大舞台となる。
「私個人としては、初めて行くんで、ドキドキするしワクワクするという思いが一番に出てきます。でも行くからには当然勝ちたいし、チームの名前が変わることもそうですが、いい節目であり、ここが獲るべき瞬間な気がしているので、絶対に獲りたいです」
21-22シーズン以来、2度目のCS出場となるYUYAは「自分も一度経験しているとはいえ、初心に帰り、みんなと同じ歩幅で歩むという気持ち。新鮮さの方が大きいですね」と所感を述べる。そして「もう優勝しか考えていない」と語り、こう続けた。
「RAPTURESらしい優勝を見せたい」
YUYAの言うRAPTURESらしい優勝とは何か。
「ただ、優勝という結果を残すのではなく、その歴史に刻めるぐらいの作品をつくり、それを届けたい。RAPTURESの企業名が変わり、新しいチームとなっても、“この時のシーズンのCSはすごかった”と言われるようになるためには、普通の優勝ではダメなんです。今後、D.LEAGUEが続いていく限り、“このCSが一番盛り上がったね”と言われるような作品で、SEPTENI RAPTURESという名前を残していきたい」
2025年6月19日、SEPTENI RAPTURESの名を刻みにいく――。歓喜の記憶と共に。