始まりがあれば終わりもある。それが記録というものだ。
 イチロー(マリナーズ)のシーズン200安打記録がついに途切れた。11年連続の達成はならなかった。

「去年やっといて良かった。これが9だとしんどい。2ケタに乗せたのは、やっぱり良かった」
 これを受けて、オリックス時代にイチローを指導した新井宏昌現2軍監督が興味深い感想を朝日新聞に寄せていた。
<自分の経験と重ね合わせても、今年は1日に空振り三振を三つやっている結果などからすれば、加齢によって視力や反応が少し今までと違ってきているのかなとも感じます。>(9月30日付)

 イチローと言えば代名詞はインフィールド・ヒット、すなわち内野安打が持ち味だが、昨季の64本から今季は42本にまで減った。今季の安打数は184本。単純計算だが、昨季と同数の内野安打を放っていれば、記録は11年連続にまで伸びていた。
 内野安打の減少も新井が指摘するように、年齢による視力や反応の減退が原因なのか。
 しかし考えてみれば、イチローも37歳なのだ。衰えない方がおかしい。生き馬の目を抜くメジャーリーグで、これまで大きなケガをすることなく常に第一線でプレーを続けてこられたことに改めて敬意を表するべきだろう。

 MLBの多くの偉大な選手やOBがイチローを称えるなか、ひとりクールなコメントを寄せたのがピート・ローズだ。
「気持ちはよくも、悪くもない」
 ローズと言えば、“ビッグレッドマシン”と呼ばれ、圧倒的な強さを誇ったレッズのリードオフマン。通算4256安打はメジャーリーグ史上最多だ。

 イチローが11回目の200安打を達成すれば、単独トップ(ローズは10回)に躍り出るところだっただけに、抑え気味のコメントになったと考えるのは、うがち過ぎか。
 ちなみにローズは38歳のシーズンに208安打を放っている。来季、イチローはこの数字を目標にしたらどうか。

<この原稿は2011年10月24日号『週刊大衆』に掲載されたものです>

◎バックナンバーはこちらから