第217回 高井幸大には丸々2試合のチャンスを

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 森保一監督率いる日本代表は、6月にアジア最終予選を2試合残しています。もう、W杯本戦出場は決めている森保ジャパン。この2戦をどう使うのか、発表されたメンバーから狙いを感じ取ることができました。

 

 サッカー日本代表は、6月5日にアウェーでのオーストラリア代表戦、10日にインドネシア代表戦を控えています。発表されたメンバーを見ての感想を問われたのですが、「特にありません」というのが正直なところです。

 

「前回から14名入れ替えた」とか「7名が初招集」という報道を見聞きしましたが、「そりゃあ、そうなるよな」と思います。

 

 いわゆる“常連組”と“若い世代”をつなぐリーダーとして森保監督は、久保建英を指名したようです。初招集の選手や、久々に声がかかった選手にとっても大事な時期となりますが、久保にとってもある意味、試される場面となっているようです。どちらに転ぶのか想像がつきにくいですが、彼がどう振舞うのかも楽しみです。とはいえ、キャプテンの遠藤航も招集されていますから、あまり気負わずやってほしいかなと思います。

 

 森保監督は常々、パリ世代をいつ組み込むか頭を悩ませていたと思います。パリ五輪が終わったすぐ後に大量にその世代を入れ過ぎても、これまで築き上げてきた連係などが崩れてしまう。それがゆえに、日本史上最速でW杯出場を決定させた意味は、大きい。

 

 特に、藤田譲瑠チマにとっては、大チャンスです。長らく代表に招集されながら、これまでA代表の試合出場数は「2」にとどまっています。ボランチは遠藤と守田英正がレギュラーであり、ここに割って入るのは難しい。しかし、彼はパリ五輪の予選とパリ五輪で好パフォーマンスを披露していたことも事実です。今回は、守田がいない分、彼にチャンスが巡ってくるはず。今までのうっ憤を晴らすような、パフォーマンスを見せてほしいものです。

 

 そして3月下旬の小欄でも述べたように高井幸大にも引き続き期待したいです。彼には、この6月の丸々2試合、出場機会を与えてもいいと思っています。彼はまだ20歳と若いですが、今、チャンスを与えないと伸び盛りを逃すかもしれない。それは日本サッカー界にとっても損失になる気がしてしょうがない。

 

 あの若さにして良いものを持っている。フィジカル的にも恵まれ、足元の技術は川崎フロンターレ仕込みのすばらしさがある。20歳にして、どんな相手と対峙し、何を感じ、何を得るか。しかも、他国はまだW杯行きを決め切れていません。ひりついた中での国際試合を経験できるまたとないチャンスです。今回はたくさんのセンターバックが招集されていますが、高井には2戦フルで出てほしいと願うばかりです。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。

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