第815回 トランプ恩赦でローズの資格回復

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 自分に近い考え方を持つ者、自分に利益を与える者は優遇し、そうじゃない者は徹底して排除する――。民主主義国家を標榜する米国において、ドナルド・トランプ大統領の政治手法は、「縁故主義」(ネポティズム)と呼ばれるもので、きわめて異質である。

 

 

 

 ついにトランプは、野球界にまで口出しし、まんまと自らの意を通してしまった。

 

 トランプが自らのSNSに「たとえ遅すぎたとしても、野球殿堂入りさせるべきだ」と投稿したのは、2月28日(現地時間)のこと。「殿堂入りした選手よりもはるかにすぐれた実績を残しながら、死後にしか殿堂入りできないのは嘆かわしい」と持論を展開し、恩赦を示唆した。

 

 言うまでもなく、昨年9月に83歳で他界したピート・ローズのことだ。通算3562試合出場、通算4256安打のMLB記録を持つ稀代の安打製造機。またケガをも恐れぬヘッドスライディングで人気を博した。

 

 にもかかわらず、ローズはレッズ監督時代の1989年に野球賭博に関与していたことが発覚し、MLB機構から永久追放処分を受けてしまった。

 

 ローズは、後に野球賭博こそ認めたものの、「自分のチームの勝利にしか賭けていなかった」と強弁し、反省の色を見せなかった。

 

 蛇足だが、ローズは日本の野球ファンからも評判が悪い。イチローが日米通算4257安打を達成した際の「(イチローは)次はハイスクール時代のヒットまで加えるのではないか」とのコメントが嫌悪された。

 

 ローズのプレーヤーとしての偉大さに異を唱える者はいない。しかし人格者でなかったことも、また事実のようだ。

 

 そんなローズをトランプが擁護するのは、2016年に大統領選に出馬した際、自らへ支持を表明したからだ。

 

 トランプからの恩赦表明を受け、MLBはローズの資格回復を決めた。早ければ27年12月にも野球殿堂入りの可能性が出てきた。MLBはトランプを敵に回したくなかったようだ。

 

<この原稿は2025年6月9日号『週刊大衆』に掲載されたものです>

 

 

 

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