日体大・葛城玲央奈、阿部詩のアドバイスで成長 ~全日本学生柔道優勝大会~

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 大学柔道の団体日本一を決める「羽田タートルサービスpresents 2025年度全日本学生柔道優勝大会」(全日本学生優勝大会)が6月28日からの2日間、東京・日本武道館で開催される。注目は女子1部(5人制)の日本体育大学だ。表彰台には2007年度の第16回大会以来、遠ざかっているが、今年は東京学生柔道優勝大会で2年連続優秀選手賞に輝いた葛城玲央奈(かつらぎ・れおな)ら4年生に好選手が揃う。副主将を務める葛城に話を聞いた。

 



“ケガの功名”

 

――週末に全日本学生優勝大会を控えています。現在のコンディションは?

葛城玲央奈: 昨年秋にケガをしたので気持ち的に落ちていたのですが、今年5月の都学(東京学生優勝大会)は調子が良かった。全学(全日本学生優勝大会)も、この調子で頑張りたいです。

 

――ケガは稽古中に?

葛城: はい。昨年の全学個人(全日本学生柔道体重別選手権大会)が終わってすぐケガをしてしまいました。全学で初戦負けをしてしまい、落ち込んでいる状態で稽古した際、左ヒザを痛めたん。一時は「柔道を辞めたい」と思うほどでした。ただ今はケガ前よりも動きが良くなっていると手応えを感じています。

 

――“ケガの功名”ということですね。

葛城: そうですね。殻が破れたような気がします。

 

――具体的には?

葛城: 森和輝コーチからは「ケガした原因が負ける原因だった」と指摘されました。左足の位置が前に出ていたから、技を返されたり、ケガをしていたということです。それまでは“投げたい”気持ちばかりが先行していました。昔から優勢勝ちが少なく、投げて勝つことにこだわっていました。今は一本にこだわる柔道から我慢を覚え、コツコツ攻めていく戦い方に変えました。

 

――スタイルを変えることに抵抗はなかった?

葛城: 最初はやりにくかったですが、段々慣れてきました。今では、新しいスタイルが自分のモノになってきている実感があります。今は前よりも柔道が楽しく感じ、好きになっている気もします。

 

――ケガした時に支えになった人はいますか?

葛城: 友達に明るく励ましてもらいましたし、森コーチと阿部詩先輩にもすごく助けられました。特に森コーチと詩先輩の2人には、ケガしたことを重く捉えていた私に対し、「大丈夫だよ」と声を掛けてくれました。それに詩先輩との乱取りは楽しいので、そこをモチベーションに復帰を目指しました。いつも私が投げられてばかりですが、時々、私が投げることもある。その瞬間がとてもうれしいんです。ケガから復帰し、久々に詩先輩と乱取りした際、「全然、力落ちていないよ」と言ってもらえた。それも自信になっています。

 

――3学年上の阿部選手は女子52kg級の東京オリンピック金メダリストで、先日の世界選手権でも5度目の優勝を果たしました。

葛城: 選手としても人としても尊敬しています。私は詩先輩が稽古で必死に努力している姿を、間近で見ていきました。詩先輩と出会うまでラントレを気合いで走っていました。ある日、ランニング中に詩先輩が「試合だと思って走るんだよ。一番きついところで、試合のゴールデンスコア(延長)をイメージして」とアドバイスしてくれました。それを聞いてから、ランニングに対するモチベーションが上がりました。日体大に来て良かったと思うのは、詩先輩の存在が大きい。私がケガや勝てなかった時期を乗り越えられたのも詩先輩のおかげだと思っています。

 

個人戦で日本一に

――元々、日体大に憧れがあったとうかがいました。

葛城: 柔道を始めた時の道場からは、日体大に進んだ先輩が多かった。小中高で柔道を教わった先生方は皆さん日体大出身。私自身は覚えていないのですが、小さい時から「日体大に行きたい」と口にしていたそうです。高校で柔道はやり切ったという気持ちもありましたが、周囲から「続けた方がいい」と言っていただけましたし、「日体大に行けるなら続けようかな」という思いで進学しました。

 

――その日体大で迎える最後の全日本学生優勝大会になります。目標は?

葛城: 大好きなみんなと一緒に戦えるのが楽しみです。優勝を狙うのはもちろんですが、まずは入賞を目標にしています。稽古に来ていただける実業団の選手からも「(今年の)日体大は強いよ」という声をもらっているので、上位に入る自信はあります。

 

――葛城選手は57kg級。先鋒か次鋒を任される予定です。

葛城: 自分がチームに貢献できるよう、1点(1勝)でも多く取り、いい流れを持っていきたい。一本でなくても、技ありでもいいので、1点を取りたいと思っています。

 

――今年のチームカラーは?

葛城: 個性豊かな一人ひとりが集まると、賑やかになり、とても明るいチームだと思います。この明るさを試合で強さに変えていきたい。

 

――主将は田中輝乃選手。葛城選手は副主将を任されています。

葛城: 彼女はいてくれるだけで心強い。私は自分のことばかり見て、周りのことに気を配れるタイプではないんです。彼女は自分も周りも見えているし、結果も残している選手なので、みんなが付いていきたくなるんだと思います。

 

――葛城選手の得意技は内股ですが、今日練習していた下から相手を引き込む柔術のような技は?

葛城: 技の名はわからないんですが、インスタの動画で流れてきたのを見て、最近見よう見真似で挑戦しています。長身選手が対戦した際、相手が頭を下げてきて、自分が下になる体勢になると、そこからの展開に苦労していたので、練習に採り入れてみました。

 

――最後に個人としての今後の目標は?

葛城: 個人戦で日本一になりたいと思っています。講道館杯(講道館杯全日本柔道体重別選手権大会)にも出場したい。昨年は個人戦の都学(東京学生柔道体重別選手権大会)3位で、ギリギリ出場権を得られなかった。今年こそは都学で優勝し、講道館杯の出場権を獲得したいです。柔道家としては、強い選手になることはもちろんですが、人から応援されるような選手になりたいと思っています。

 

葛城玲央奈(かつらぎ・れおな)プロフィール>

2003年12月31日、広島県生まれ。日本体育大学4年。57kg級。4歳の時に母と姉の影響で柔道を始める。広島市立中広中学、広島皆実高校を経て、2022年に日体大に進学した。広島皆実3年時には全国高校総合体育大会(インターハイ)の57kg級でベスト8入り。日体大では1年生ながら全日本学生柔道優勝大会に出場している。東京学生柔道優勝大会では2年連続で優秀選手に選出された。今年度から副主将を務める。身長158cm。得意技は内股。オフのリフレッシュ方法は、おいしいものを食べることと買い物。好きな言葉は「初志貫徹」。

 

(取材・構成・写真/杉浦泰介)

 

BS11では「全日本学生柔道優勝大会」の模様を6月29日(日)18時から放送します。男子は連覇がかかる東海大学を軸に、天理大学、日本大学などの強豪校に注目が集まります。女子5人制も東海大が連覇に挑みます。対抗は前々回大会優勝の環太平洋大学、龍谷大学、帝京大学などの実力校。今回特集した葛城選手が所属する日本体育大にも注目です! ぜひ中継をお楽しみに!

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