環太平洋大、笑顔で2年ぶりの優勝 〜全日本学生柔道優勝大会〜
28日、全日本学生柔道優勝大会初日が東京・日本武道館で行われ、女子一部(5人制)は環太平洋大学が明治国際医療大学を決勝で破り、2年ぶり4度目の優勝を果たした。同二部(3人制)決勝は桐蔭横浜大学が広島大学を下して初優勝。男子は1、2回戦のみの実施。連覇がかかる東海大学などシード校は29日から初戦(3回戦)となる。
副将戦に敗れ、1対1となった後、環太平洋大の石岡来望(いしおか・くるみ=4年)は笑顔を見せていた。「元々、明るいキャラ。自分が負けたからと言って泣くということはない。チームのためにというか自然と笑顔になった」。後に控える大将の椋木美希(むくのき・みき=4年)は創志学園高校時代から苦楽を共にしてきた。
「“最後にやってくれる”と信じていた」
環太平洋大は初戦から苦しい勝ち上がりだった。2回戦は早稲田大学に2対1、3回戦は淑徳大学に3対1。準々決勝は龍谷大学相手に0対0で決着付かず代表戦にまでもつれた。準決勝は筑波大学に2対0。決勝は準決勝で前回優勝の東海大学を破った明治国際医療大が相手だ。
初優勝を目指し、勢いに乗る明治国際医療大に対し、環太平洋大は先鋒の荒川清楓(あらかわ・さやか=3年)、次鋒の山下明純(やました・あずみ=2年)が踏ん張った。引き分けで相手に流れを与えなかった。中堅の前田凛(2年)が支え釣り込み足で技ありを奪い、そのまま寝技に移行し、合わせ技一本で先手を取った。
あと1勝で優勝が決まる場面だったが、副将の石岡は残り13秒で小外掛けをくらった。有効を奪われ、判定負け。勝負の行方は大将戦へと委ねられた。引き分けでも優勝の環太平洋大。「前に出て攻めるのが自分の柔道」と大将・椋木が積極的に攻め、小外刈りで一本。2年ぶりの王座奪還を決めた。
今年度は石岡を主将に「王座奪還」をスローガンに戦ってきた。今大会競ることを想定していたという矢野智彦監督は「選手たちも試合をイメージし、場面練習をしてきたことで、動揺せずに戦えかなと思います」と振り返る。2回戦は先取点を取られ、準々決勝の代表戦までもつれた。くじ引きの結果、次鋒が選ばれた。
ゴールデンスコアで決着が付く代表戦。先に指導2つで追い込まれたのは山下の方だった。
「少し押されて一瞬、無理かもしれないと過りましたが、その時に仲間の顔が浮かんだ。“ここで負けられない”と思ったら勝手に体が動いていました」
4分50秒、小外刈りで有効を奪い、準決勝進出に貢献した。矢野監督は「地力はある選手でしたが、彼女の成長を感じました」と称える。「明純は身体能力が高い。追い込まれた時に自分を奮い立たせ、強くなれる逞しい選手。最後まで信じていました」とは片桐夏海コーチ。MVP級の活躍とは言えないまでも殊勲の1点だった。
王座奪還を達成した今年度の環太平洋大を矢野監督はこう評する。
「石岡中心に明るいチームですね。暗いと、こちらも疲れてしまう。ワクワクしている方が私たちも前向きになれますしね。片桐コーチがサポートしてくれ、チームは明るく前向きにやっていました。ただ、その中でも調子に乗らなかったのが良かったです。明るいチームで怖いのは過剰に興奮したりする面がありますから」
主将の頑張りは、環太平洋大女子柔道部の1期生であり、主将を務めた片桐コーチも認めるところだ。
「石岡がかなりチームを引っ張ってくれた。目標をきちんと言語化し、どういうチームにしたいかを整理していたと思います。そこで自分の価値観を押し付けるだけでなく、みんなが“一緒に頑張りたい”と思えるような雰囲気をつくってくれた」
その石岡は股関節を痛め、大会前の稽古を満足に積めなかったという。当日も万全な状態ではなかったが、「やるしかない」との気持ちで臨んだ。ただ、それを感じさせない戦いぶりだった。決勝こそ失点したが、2回戦、3回戦、準決勝と1点を取り、チームに貢献した。
「4年間の集大成というか、先生、同期や仲間にお世話になったので、感謝の想いを示したかったし、主将として背中で見せたいと思っていました。優勝が決まって、今はうれしいのとホッとしている気持ち両方です」
石岡自身、環太平洋大で一番成長した点は「精神面」だという。
「1年生の時は負けるのを恐れて柔道をしていました。それが“自分の良さを出したい”と思えるようになった。いい部分も悪い部分も受け入れてやっていけるようになりました。恐怖心に打ち克つことをIPUで学ばせていただきました」
彼女の成長を支えたのが片桐コーチだ。「つらい時期を乗り越えられた経験もあるので、話に重みがある。的確なアドバイスを言ってくださるし、自分の気持ちも聞いてくれる。片桐先生からは、いろいろな考え方の引き出しを増やしてもらった」と石岡。片桐コーチは「石岡は何でもできる器用な選手。元々は波がある選手でしたが、成長したことによって本来の柔道の良さに磨きがかかってきた」と成長に目を細める。
環太平洋大は2年ぶりの王座奪還を達成したが、これがゴールではない。10月に兵庫・ベイコム体育館で行われる「全日本学生柔道体重別団体優勝大会」で12年ぶりの団体2冠を目指す。
(文・写真/杉浦泰介)
※BS11では「全日本学生柔道優勝大会」の模様を6月29日(日)18時から放送します。男子の解説は全日本柔道連盟強化委員長のSBC東京医療大学・山田利彦部長兼総監督が、女子は世界柔道金メダリストである東京女子体育大学・佐藤愛子監督が務めます。ぜひ中継をお楽しみに!