第109回 村山哲二代表「日本のプロ野球界に革命を起こす!」
5年目のシーズンが終了しました。今季は石川ミリオンスターズが独立リーグチャンピオンシップで四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックスを破り、BCリーグの球団としては初めて独立リーグの頂点に立ちました。また、プロ野球ドラフト会議では育成選手として新潟アルビレックスBCから雨宮敬(山梨学院大付高−山梨学院大)と渡辺貴洋(鶴岡東高)、群馬ダイヤモンドペガサスからは聖哉(前橋育英高)と清水貴之(世田谷学園高−日本大−全足利クラブ)の計4人が指名を受けました。BCリーグにとっては、大きな実りのあるシーズンとなったと思います。
今年3月11日に起きた東日本大震災で岩手、宮城、福島の3県を筆頭に、日本列島は甚大な被害を受けました。BCリーグが受けた影響も決して小さくはありませんでした。特に影響したのが集客の面です。ひとつは開幕でした。開幕は大きな集客を見込める重要なコンテンツです。ですから、どの球団も最も収容人数の多い球場を抑えています。しかし、今季は電力需要の都合上、1週間遅らさざるを得ませんでした。もちろん、その時には既に日程が組まれていましたから、当初予定されていた会場ではできず、1週間後に組まれていた収容人数が小さい球場での開幕を余儀なくされた試合もあったのです。
さらに前半戦はナイターを行なうことができず、振替えの試合は平日の昼間に行なわれました。そのため、4〜7月の観客動員数は前年を下回ってしまったのです。特に4、5月の減り幅は大きく、正直、「今季はどうなるのだろう……」と不安が募る毎日でした。それでも8月以降は徐々に盛り返し、10月のプレーオフに関しては前年比33%アップの1試合平均1,335人を動員。そのおかげでシーズンを通しては、なんとか体裁を整えることができました。
ただ、今季は確かに震災が大きく影響したものの、では震災がなければ観客動員数は伸びたかというと、正直、そうとは言い切れません。独立リーグの魅力をどのようにして高めるかという、根本的な部分での課題克服というところまでは至っていないのです。試行錯誤しながら、さまざまな取り組みを行なってはいますが、なかなか大きく前進するような改善策が見つかりません。
独立リーグの魅力を出すためのモデルとして高校野球を挙げ、2010年シーズンから最重要課題として取り組んできたのが試合時間の短縮です。今季は1試合の平均時間を2時間半という目標を掲げ、そのための対策として「イニング間でのイベントの短縮」「監督からのサインの短縮」「審判による円滑な進行」の3点に取り組んできました。フロント、現場(監督・コーチ・選手)、審判と、それぞれが努力し、今季はある程度、達成したという感触はありました。しかし、結果は昨季と同じ3時間だったのです。この3つだけでは、試合時間を目標の2時間半にすることはできないことを痛感させられました。今後はより大胆な発想の対策を講じていく必要があるのだと思います。
その一方で、BCリーグの魅力が徐々に浸透してきていることが感じられた嬉しい出来事もありました。ある2人の高校野球の指導者が私にこう言ったのです。
「BCリーグの選手たちのプレーは高校野球のお手本になる。一生懸命にプレーする姿や野球に対するひたむきさが感じられるようになった」
実は昨季までは選手の言動に対して、厳しいご指摘をいただくことも少なくありませんでした。少年野球の指導者からは「BCリーグの選手の態度は悪すぎる。これでは子どもたちには見せられない」とまで言われたこともあったほどです。そこで09年シーズンから「BCリーグ憲章」を掲げ、BCリーグは地域と、地域の子どもたちのために存在しているという理念を6球団の監督やコーチ、選手に徹底させてきました。それだけに、先の言葉は本当に嬉しいものでした。まだ完璧とは言えませんが、着実にBCL憲章を実行してくれている選手たちの割合が増えているという何よりの証でしょう。
さらに、最近ではファンにもこの憲章が浸透してきているんだな、ということを感じています。例えば、選手への処分に対して、ファンから「村山さん、BCL憲章に反しているんだから、もっと厳しい処分を科さなくちゃダメだよ! これじゃ、何のための憲章かわからない」とお叱りの声をいただくことも結構あるのです。これは、ファンが憲章を意識しているからこその声に他なりません。現場のみならずファンまでもが「その言動がBCLの憲章に反しているのか否か」ということを自然と考えるようになってきた。そう感じられたことが、今季における最大の収穫でした。
経営の面では、昨季3球団がなんとか単年度黒字を達成しましたが、今季もその数字に近づけるべく最終の調整をしています。しかし、フロントやスタッフ、監督やコーチに対して十分な報酬が与えられていないという状況は何ら変わっていません。その打開策として、他のプロ野球リーグとの業務提携を来年度の最重要課題としました。実は昨年から複数のMLB球団から、あくまでも非公式の話として「BCリーグに東アジアから集めた若手のコーチと選手を送り込んで、育成できないか」という相談を受けているのです。BCリーグで結果を出せば、メジャーに昇格することができる。つまり、BCリーグを育成の拠点として位置づけ、選手の派遣や育成、コーチ修行の場にしたいと言うのです。もし、これが実現すれば、指導者や選手の報酬は先方が負担してくれますから、経営の面においてはプラスになりますし、選手のレベルも飛躍的に上がるはずです。非常に魅力的な話ですが、実現するためには球団ではなくMLBとの交渉が必要になります。
しかしBCリーグはやはり、日本野球の発展のための存在であることが望ましいことは言うまでもありません。ですから、NPBにも同じ要望を出していこうと考えています。しかし、現状ではNPBと独立リーグとの関係性はないに等しい。それどころか、せっかく苦労して育てた優秀な選手をNPBに送り込むだけで、BCリーグには何のプラスにもならない。指名を受けた選手からは契約金の一定金額が支払われますが、それはあくまでも選手からであって、NPBの球団からではありません。これではBCリーグを存続させることはできません。ですから、こちらからNPBにもMLBにも同様の業務提携を提案すべきだと考えています。
しかし、独立リーグとの業務提携に積極的に取り組んでいただいている球団もあります。例えば、福岡ソフトバンクは3軍制を取り入れ、四国アイランドリーグplusと年間を通じて交流戦を組んでいただいています。このように、育成という点において、独立リーグとの業務提携が選手のレベル向上につながるというメリットを感じ、リーグの価値を高く評価している球団もあるのです。
BCリーグをより魅力あるコンテンツにするために、MLBやNPBと連携した事業を展開し、この日本のプロ野球界に革命を起こすこと。そして運営を安定させ、さらなる地域貢献へと役立てる。これが来季以降、BCリーグの最重要課題です。一筋縄ではいきませんが、四国アイランドリーグplusの鍵山社長と連携しながら取り組んでいきます。ファンの皆さんには、これからもBCリーグと四国アイランドリーグplusを応援していただきながら、日本のプロ野球界を一緒に盛り上げてもらいたいと思っています!
<村山哲二(むらやま・てつじ)プロフィール>:BCリーグ代表
新潟県出身。柏崎高校では野球部に所属。同校卒業後、駒澤大学北海道教養部に進学し、準硬式野球部主将としてチームを全国大会に導いた。2006年3月まで新潟の広告代理店に勤め、アルビレックス新潟(Jリーグ)の発足時から運営プロモーションに携わる。同年7月に株式会社ジャパン・ベースボール・マーケティングを設立し、代表取締役に就任した。著書に『もしあなたがプロ野球を創れと言われたら――「昇進」より「夢」を選んだサラリーマン』(ベースボールマガジン社)がある。
今年3月11日に起きた東日本大震災で岩手、宮城、福島の3県を筆頭に、日本列島は甚大な被害を受けました。BCリーグが受けた影響も決して小さくはありませんでした。特に影響したのが集客の面です。ひとつは開幕でした。開幕は大きな集客を見込める重要なコンテンツです。ですから、どの球団も最も収容人数の多い球場を抑えています。しかし、今季は電力需要の都合上、1週間遅らさざるを得ませんでした。もちろん、その時には既に日程が組まれていましたから、当初予定されていた会場ではできず、1週間後に組まれていた収容人数が小さい球場での開幕を余儀なくされた試合もあったのです。
さらに前半戦はナイターを行なうことができず、振替えの試合は平日の昼間に行なわれました。そのため、4〜7月の観客動員数は前年を下回ってしまったのです。特に4、5月の減り幅は大きく、正直、「今季はどうなるのだろう……」と不安が募る毎日でした。それでも8月以降は徐々に盛り返し、10月のプレーオフに関しては前年比33%アップの1試合平均1,335人を動員。そのおかげでシーズンを通しては、なんとか体裁を整えることができました。
ただ、今季は確かに震災が大きく影響したものの、では震災がなければ観客動員数は伸びたかというと、正直、そうとは言い切れません。独立リーグの魅力をどのようにして高めるかという、根本的な部分での課題克服というところまでは至っていないのです。試行錯誤しながら、さまざまな取り組みを行なってはいますが、なかなか大きく前進するような改善策が見つかりません。
独立リーグの魅力を出すためのモデルとして高校野球を挙げ、2010年シーズンから最重要課題として取り組んできたのが試合時間の短縮です。今季は1試合の平均時間を2時間半という目標を掲げ、そのための対策として「イニング間でのイベントの短縮」「監督からのサインの短縮」「審判による円滑な進行」の3点に取り組んできました。フロント、現場(監督・コーチ・選手)、審判と、それぞれが努力し、今季はある程度、達成したという感触はありました。しかし、結果は昨季と同じ3時間だったのです。この3つだけでは、試合時間を目標の2時間半にすることはできないことを痛感させられました。今後はより大胆な発想の対策を講じていく必要があるのだと思います。
その一方で、BCリーグの魅力が徐々に浸透してきていることが感じられた嬉しい出来事もありました。ある2人の高校野球の指導者が私にこう言ったのです。
「BCリーグの選手たちのプレーは高校野球のお手本になる。一生懸命にプレーする姿や野球に対するひたむきさが感じられるようになった」
実は昨季までは選手の言動に対して、厳しいご指摘をいただくことも少なくありませんでした。少年野球の指導者からは「BCリーグの選手の態度は悪すぎる。これでは子どもたちには見せられない」とまで言われたこともあったほどです。そこで09年シーズンから「BCリーグ憲章」を掲げ、BCリーグは地域と、地域の子どもたちのために存在しているという理念を6球団の監督やコーチ、選手に徹底させてきました。それだけに、先の言葉は本当に嬉しいものでした。まだ完璧とは言えませんが、着実にBCL憲章を実行してくれている選手たちの割合が増えているという何よりの証でしょう。
さらに、最近ではファンにもこの憲章が浸透してきているんだな、ということを感じています。例えば、選手への処分に対して、ファンから「村山さん、BCL憲章に反しているんだから、もっと厳しい処分を科さなくちゃダメだよ! これじゃ、何のための憲章かわからない」とお叱りの声をいただくことも結構あるのです。これは、ファンが憲章を意識しているからこその声に他なりません。現場のみならずファンまでもが「その言動がBCLの憲章に反しているのか否か」ということを自然と考えるようになってきた。そう感じられたことが、今季における最大の収穫でした。
経営の面では、昨季3球団がなんとか単年度黒字を達成しましたが、今季もその数字に近づけるべく最終の調整をしています。しかし、フロントやスタッフ、監督やコーチに対して十分な報酬が与えられていないという状況は何ら変わっていません。その打開策として、他のプロ野球リーグとの業務提携を来年度の最重要課題としました。実は昨年から複数のMLB球団から、あくまでも非公式の話として「BCリーグに東アジアから集めた若手のコーチと選手を送り込んで、育成できないか」という相談を受けているのです。BCリーグで結果を出せば、メジャーに昇格することができる。つまり、BCリーグを育成の拠点として位置づけ、選手の派遣や育成、コーチ修行の場にしたいと言うのです。もし、これが実現すれば、指導者や選手の報酬は先方が負担してくれますから、経営の面においてはプラスになりますし、選手のレベルも飛躍的に上がるはずです。非常に魅力的な話ですが、実現するためには球団ではなくMLBとの交渉が必要になります。
しかしBCリーグはやはり、日本野球の発展のための存在であることが望ましいことは言うまでもありません。ですから、NPBにも同じ要望を出していこうと考えています。しかし、現状ではNPBと独立リーグとの関係性はないに等しい。それどころか、せっかく苦労して育てた優秀な選手をNPBに送り込むだけで、BCリーグには何のプラスにもならない。指名を受けた選手からは契約金の一定金額が支払われますが、それはあくまでも選手からであって、NPBの球団からではありません。これではBCリーグを存続させることはできません。ですから、こちらからNPBにもMLBにも同様の業務提携を提案すべきだと考えています。
しかし、独立リーグとの業務提携に積極的に取り組んでいただいている球団もあります。例えば、福岡ソフトバンクは3軍制を取り入れ、四国アイランドリーグplusと年間を通じて交流戦を組んでいただいています。このように、育成という点において、独立リーグとの業務提携が選手のレベル向上につながるというメリットを感じ、リーグの価値を高く評価している球団もあるのです。
BCリーグをより魅力あるコンテンツにするために、MLBやNPBと連携した事業を展開し、この日本のプロ野球界に革命を起こすこと。そして運営を安定させ、さらなる地域貢献へと役立てる。これが来季以降、BCリーグの最重要課題です。一筋縄ではいきませんが、四国アイランドリーグplusの鍵山社長と連携しながら取り組んでいきます。ファンの皆さんには、これからもBCリーグと四国アイランドリーグplusを応援していただきながら、日本のプロ野球界を一緒に盛り上げてもらいたいと思っています!
<村山哲二(むらやま・てつじ)プロフィール>:BCリーグ代表新潟県出身。柏崎高校では野球部に所属。同校卒業後、駒澤大学北海道教養部に進学し、準硬式野球部主将としてチームを全国大会に導いた。2006年3月まで新潟の広告代理店に勤め、アルビレックス新潟(Jリーグ)の発足時から運営プロモーションに携わる。同年7月に株式会社ジャパン・ベースボール・マーケティングを設立し、代表取締役に就任した。著書に『もしあなたがプロ野球を創れと言われたら――「昇進」より「夢」を選んだサラリーマン』(ベースボールマガジン社)がある。