ゴルフ界に新しいスターが台頭しつつある。日本では彗星のごとく現れた石川遼に刺激され、同世代のライバルたちがしのぎを削り始めた。その筆頭が松山英樹だろう。まだアマチュアではあるが、4月のマスターズでは初出場ながら、4日間をアンダーパーでまとめ、最高成績を収めたアマチュア選手に贈られる「ローアマチュア」に輝いた。先日開催された三井住友VISA太平洋マスターズでは最終日に2打差を逆転し、史上3人目のアマチュア優勝を成し遂げた。

“大物感”漂う松山

 松山にとって、マスターズは初めての大舞台。そこで華々しいデビューを飾ることはスーパースターの第一条件である。日本人メジャーリーガーのパイオニア・野茂英雄は1995年、ロサンゼルス・ドジャースでのデビュー戦で5回1安打無失点に抑え、ファンの心をつかんだ。98年にイタリア・セリエAのペルージャに海外移籍した中田英寿も、開幕戦で強豪ユベントスを相手に2ゴールをあげ、一瞬でチームの仲間入りを果たした。

 加えて体型にも風格が漂う。身長180センチは近年、小粒になった印象のある日本人トッププロの中で大きい部類だ。今もなお大きな存在感を示しているAON(青木功、尾崎将司、中嶋常幸)は体格も堂々としている。尾崎は181センチ、青木と中嶋は180センチ。野球界のスーパースター、長嶋茂雄や王貞治が170センチ台(長嶋178センチ、王177センチ)だったことを思えば、AONは他のスターアスリートと並んでも決して見劣りしなかった。

 野球界では松井秀喜(アスレチックス、188センチ)、ダルビッシュ有(北海道日本ハム、196センチ)、サッカー界でも吉田麻也(VVVフェンロ、189センチ)など、最近は欧米の選手と見劣りしない体格の持ち主が増えてきた。しかし、ゴルフ界ではなぜか大型選手が少ない。片山晋呉が171センチ、石川遼も174センチといった具合だ。今季の国内男子ツアーの賞金ランキング(11月末現在)でも上位10人野中で身長180センチ台の選手はひとりもいない。

 スポーツは体格だけですべてを語ることはできないが、それでもプレーを左右するひとつの要素にはなる。現役ビック3と呼ばれるタイガー・ウッズ、フィル・ミケルソン(ともに米国)、ビジェイ・シン(フィジー)は皆、185センチを超えている。松山英樹はアジアアマチュア選手権を連覇し、来年のマスターズ出場権も獲得した。2年連続のオーガスタで今年以上の結果を残し、名実ともにビッグな選手へ成長を遂げてほしいものだ。

 ライバルの存在は、これまで世代をリードしてきた石川にもプラスの影響を与えるだろう。今季は最終戦を残して未だにツアー優勝はないが、マスターズでは3度目の出場で初めて予選を突破した。最終日にも2つスコアを伸ばし、通算3アンダー、20位タイと他のメジャー大会も含めて最高の成績を収めた。これから10年、20年と高いレベルで競うことで日本男子全体の実力も上がることは間違いない。

 総合力がある韓国勢

 女子では24歳の有村智恵が快挙を成し遂げた。7月のスタンレーレディスゴルフトーナメント初日、8番でアルバトロスを達成すると、16番ホールではホールインワンを決めた。1ラウンドでアルバトロスとホールインワンを同時に達成するのは女子の世界主要ツアーでは初めて。漫画の出来事かと錯覚するほどのスーパープレーだった。

 しかし、有村はゴルフ史に残る偉業にも決して浮かれなかった。その夜から携帯電話の電源を切り、自らの快挙を報じるテレビや新聞にも目を向けなかったという。すべてを断ち切り、心をリセットすることで2日目以降、また新たな気持ちでティーグラウンドに立ったのだ。これで邪念や、余計なプレッシャーから解放されたのではないか。結果は最終日まで首位を守りきっての完全優勝。快挙に花を添えた。

 ただ、男女通じて、国内ツアーは今年もコリアン旋風が巻き起こった。男子ではベ・サンムン、女子はアン・ソンジュがいずれも最終戦を待たずして、賞金王、賞金女王を決めた。これで男女とも2年連続の韓国勢独占だ。

 特に2年連続賞金女王に輝いたアンの充実ぶりが目立つ。平均ストローク、パーオン率、平均パット数、パーセーブ率、平均バーディ数……各種ランキングでいずれもベスト3に入っている。10月の日本女子オープンで初のメジャー制覇を果たした馬場ゆかりは韓国人選手について、「おそらく日本人以上にハングリー精神があるのでしょう。“自分がしっかりやって稼がなきゃいけない”という思いが強い。だからこそ練習も一生懸命するし、小技などのテクニックもうまい。ショット、パッティングを含めた総合力があると感じます」と語っていた。有村や馬場、横峯さくらといったランキング上位に入っている“なでしこ”たちに来季は奮起を望みたい。

 日本に限らず、米国でもアジアのパワーが吹き荒れている。09年にシン・ジエ、10年にチェ・ナヨンと2年連続で韓国勢がツアーを制し、今季は台湾出身のヤニ・チェンが2位以下に大差をつけて賞金女王の座を射止めた。メジャー2勝(全米女子選手権、全英女子オープン)を含む7勝。世界ランキングでも1位を誇る。10月にはサンライズ台湾LPGA選手権が開催され、熱狂的な歓迎ムードの中、凱旋を果たした。

 世界で活躍する石川世代

 この流れに本来なら日本勢も乗りたいところだが、積極的に海外ツアーに参戦する他国の選手と比べると、宮里藍、宮里美香、上田桃子らが目立つくらい。20代の若い実力派ゴルファーたちが多くあらわれてきた割には、やや“内向き志向”の感がある。

 グローバル化で海外の情報が容易に入手できる昨今、ファンも世界を基準にスポーツを観るようになっている。つまり、世界で存在感を示してこそ一流なのだ。国内で勝つだけではファンを満足させることはできない。他の競技をみても、サッカーの香川真司(ドルトムント)は22歳、テニスの錦織圭は21歳。競技によって事情は異なるが、年齢だけみれば石川たちがもっと海外に打って出ても何ら不思議ではない。

 現にゴルフ界でも6月の全米オープンで通算16アンダーと記録的な圧勝をおさめたローリー・マキロイ(北アイルランド)は22歳。昨年のマスターズで史上最年少で予選通過したマテオ・マナセロ(イタリア)は、その時、16歳11カ月だった。世界のものさしでみれば石川や松山が若すぎるということはないのだ。

 マキロイらと石川や松山がメジャー大会の最終日を最終組で回る――そんな夢が現実になる日を楽しみにしている。

 6月の全米オープンにてメジャー初優勝を果たし、その実力を証明したローリー・マキロイ選手と、彼と同世代で日本人初のメジャー制覇を目指す石川遼選手がついに日本で激突!

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<放送概要>
◆出演者
ローリー・マキロイ、石川遼
◆放送日時
プレー第1部:12/30(金)18:00〜他
プレー第2部:12/31(土)18:00〜他
対談:2012年1/1(日)18:00〜他
◆放送チャンネル
BSスカパー!:BS-241ch(スカパー!e2)
スカチャン5:ch.185(スカパー!)、ch.195(スカパー!HD)
◆視聴条件
スカパーe2:16日間無料体験を申し込みされた方、またはご契約の方(BSスカパー!を2012年9月30日まで無料でご覧いただけます)
スカパー!、スカパー!HD:いずれかチャンネルまたはパック・セット等のご契約をされた方は無料でお楽しみいただけます。

※このコーナーではスカパー!の数多くのスポーツコンテンツの中から、二宮清純が定期的にオススメをナビゲート。ならではの“見方”で、スポーツをより楽しみたい皆さんの“味方”になります。
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