E-1連覇。川辺駿に青山敏弘を見た
日本代表の底力を示した2連覇であった。
韓国で開催された東アジアE-1選手権。7月15日、同じく2連勝の韓国代表と最終戦で対戦し、前半8分にジャーメイン良の奪った得点を守って1-0で勝利した。圧倒したわけではなかったものの、ゲームを終始コントロールしていたのは日本であり、したたかに勝ち切った印象が強い。
勝利を得るためにピッチもベンチもひとつになっていた。今大会は国内組26人で臨み、そのうち代表デビューを飾ったのは15人。ターンオーバーを使い、全員がピッチに立った。来年の北中米ワールドカップに向けてそれぞれ個のアピールに走るのではなく、組織に自分の持ち味を落とし込もうとしていた。〝即席チーム〟とは思えないほど、意思統一が図られていた。
5得点を挙げて大会MVP、得点王となったジャーメイン、韓国戦を含めて3つのアシストを記録した相馬勇紀、圧倒的なフィジカルとポテンシャルの高さを示した望月ヘンリー海輝ら多くの選手が評価を高めた大会になったことは間違いない。欧州組と個々に比べてどうこうではなく、彼らがまとまって成すべきことをやり遂げた意義は非常に大きいのではあるまいか。
グイと心を引き寄せられたのがボランチの川辺駿である。
この日前半早々、相手のクリアミスがこぼれてくるとワンタッチで前線のジャーメインに向けて縦パスを送った。うまく合わなかったが、青山敏弘の姿が重なった。隙があったら、グサリと縦パス。サンフレッチェ広島の青山敏弘が身につけた「6」を継承した男は、そのプレー、そのマインドも受け継いで自分のものにしているように映った。
ジャーメインの先制点も演出している。相手のダブルボランチのうち1枚が高い位置で構えているところを見逃さず、その背後にポジションを取ってGK大迫敬介からボールを呼び込んだ。トラップは流れたが、下がってきた垣田裕暉の落としを受け取って左サイドの相馬に展開してクロスからゴールが生まれた。
その2分後には味方のパスが相手に当たってペナルティーエリア前で危機に陥ると、川辺が猛然と戻ってきてファウルで止めた。イエローカードを受けてゴール前で直接FKを与えてしまったのは反省点としても、先制点を奪って気を緩めかけたチームに対して引き締めることにもなった。後半19分にはペナルティーエリア内でイ・ドンギョンのシュートをブロックしている。困ったときに頼れるこういった泥臭さにこそ、青山との共通項がある。
攻から守、守から攻、トランジションは常に集中し、常にアラートを発動させる静かなる凄味があった。スイス、ベルギーで3シーズンにわたってプレーし、昨夏からサンフレッチェに復帰。欧州を経験してよりタフに、より勝負勘に磨きが掛かっており、選手としてひと回りスケールアップしたことをあらためて証明した感がある。
筆者は昨年12月、青山の引退セレモニーを取材するために広島を訪れた。
北海道コンサドーレ札幌とのホーム最終戦。5-1の勝利の後、マイクの前に立った青山は川辺を呼び入れ、自分が長年背負ってきた背番号6のユニフォームを手渡した。
バンディエラは囲み取材で、嬉しそうに言った。
「(川辺は)チームが優勝したら(6番を)つけさせてほしいと(クラブに)言ったらしいので、その前に渡すから優勝してくれ、と。そういう思いを託せる選手だと思っているし、広島への思いというのも伝わってくる。僕自身も嬉しいし、これから彼がどうなっていくか期待していきたい」
サンフレッチェの逆転優勝とはならなかったものの、川辺はその悔しさを胸に宿しながら今シーズン、プレーでチームを引っ張っていることは言うまでもない。
思い起こせば青山も2013年のE-1選手権(当時は東アジアカップ)優勝に貢献して、翌年のブラジルワールドカップのメンバーに選出された。29歳の川辺にもその可能性がないわけではない。
森保ジャパンのボランチはキャプテンの遠藤航を筆頭に守田英正、田中碧、旗手怜央、佐野海舟、藤田譲瑠チマら多士済々のメンバーがそろう。ここに割って入るのは大変だが、9月の米国遠征(7日メキシコ代表戦、10日アメリカ代表戦)でも見てみたいと思わせてくれた川辺のパフォーマンスだった。