『AFTER THE SEASON』“新参者”が示した価値 ~D.LEAGUE~
日本発のプロダンスリーグ「D.LEAGUE」2024-25シーズンはCyberAgent Legit(サイバーエージェント レジット)の悲願のチャンピオンシップ(CS)初制覇で幕を閉じた。来季(25-26シーズン)はLDH SCREAM(エルディーエイチ スクリーム)、M&A SOUKEN QUANTS(エムアンドエーソーケン クオンツ)の2チームが新規参画する。24-25シーズンは11位ながら新規参画チームとして確かなインパクトを残したList::X(リスト エクス)は2季目を迎える。参画初年度のシーズンをROUND.14終了後、ディレクターのk-sk(ケースケ)とリーダーのTenjuに振り返ってもらった。
k-skは結成当時からの約1年をこう述懐する。
「僕的には、ホント右も左もわからない状態で始まりました。何から決めていいか分からず、まずは人探し。『リーダーどうする』『メンバーどうする』って。Tenjuにリーダーをお願いし、彼も右も左もわからない中、チームを引っ張ってくれた。ラウンドを重ねるごとに、みんなでD.LEAGUEのことをちょっとずつわかっていく感じでした。いや、今もわかり切ってはいないのかもしれませんが、“こういう感じだよね”というのが徐々に見えてくるような感覚の1年だったと思っています」
リーグにとって未知なる存在だった彼ら自身、未知の世界に飛び込んでいった感がある。
リーダーに指名されたTenjuは、あるD.LEAGUEチームから2年連続でオファーが受けたが断ってきた過去があるという。Xという新興チームのオファーには首を縦に振った。
「D.LEAGUEのことはもちろん知っていたし、チェックもしていました。その上で、“もし僕がこのD.LEAGUEという舞台で踊ることになったら、こういうことがしたい”との思いがありました。k-skさんから話をいただいた時、『チームの方針、をうかがってもいいですか?』とお話させてもらった。ヒップホップの意識が一番強かったので、そこに投資できるんだったら、僕が出る意味があると思えたんです。それでk-skさんに『僕が、ここ入る意味が見出せたなら、挑戦したいです』と返事をしました」
その「入る意味」をXに見出したからこそ今ここにいる。
Tenjuはメンバー集めから関わった。自身の仲間に声を掛け、メンバーオーディションにも審査側として参加した。
「ウチはすごく個性の強いメンバーの集まりです。普段、僕らはアンダーグラウンドのシーンで活動しています。そのメンバーが集まり、いわゆるオーバーグラウンドに近い環境下でどう踊りを落とし込むか。何もわからない、情報がない状態で僕らなりに試行錯誤しながら1年を戦ってきました。ただ、その環境下に合わせるだけでは我々が集まった意味がないと思うんです。せっかく個性のあるメンバーが揃っているからこそ、そこを武器にしたい。じゃあ1年目、何をするかという時、自分たちの提示できること、軸をしっかり決め、信念は曲げずに突き進むしかないと思ったんです」
シーズン成績は4勝9敗で11位。慣れないレギュレーションに苦しんだ面も勝てないフラストレーションに苛まれた時期もあったのではないか。チームを代表してk-skは語る。
「もちろん選手1人1人が、魂を込めてつくった作品だと思うので、負けたラウンドに対し、悔しい思いは絶対に付きまとう。それでも後悔はありません。もっとこうしたらよかったとかは、もちろんありますけど、作品に関してやらなきゃよかったという気持ちは一切ないですね」
Tenjuは「勝ち負けももちろん大事ですし、数字で見やすくなっている時代ではあるんですが、僕らはダンスを見ていただいてる視聴者、ファンの方たちの心に響くような作品を披露したいと、最初から決めていた」と言い、こう続けた。
「振り返ってみると、嬉しい時もあれば悔しい時もあった。悩んだこともあったけど、そこはブレなかった。ROUND.14は結果として負けてしまったんですけど、我々としてはいい終止符の打ち方ができたなと思っています。常に挑戦したかったし、SPという形でMOCCHINさんに参加していただいた。これは途轍もなくすごいことなんですよ。そういう化学反応を僕らは楽しんでいましたし、また来シーズンに向け、“この気持ちはやっぱりなくしちゃいけないな”と、(ROUND.14を)終えてすぐに思いました」
ROUND.2で初白星を挙げ、続くROUND.3でも勝利を重ねた。個人的にはROUND.2のショーケースが印象強い。懐かしさを感じさせるサウンド、ポップで弾けるよう衣装とダンス。チームコンセプトの「old::new」(オールドトゥーニュー)を体現しているように映ったからだ。Xの作品づくりの肝をTenjuが説明する。
「そもそも僕らがワクワクしたかった。そのワクワクが僕らにあれば、見ているお客さんたちも、もっとワクワクしてくれると思ったからです。 そのサプライズ感はダンスをする上で、とても必要な感情です。だから、まずは僕たちがワクワクしてみようよ。そこから“こういう作品をつくろう”“こういうことをやってみよう”とアイデアを出し合いつくっていきました」
2人に印象に残ったショーケースを聞くと、TenjuはROUND.3、k-skはROUND.13を挙げた。ROUND.3はRuna Miuraをエースダンサーに起用し、「natural killer cells the battle contunues」をテーマに、悪性ウイルスとNK細胞を表現した作品だ。
「ラウンドまでのプロセスがすごく記憶に残っているのと、僕の中で個性の強いメンバーが揃っているからこそ、毎ラウンド、誰かのキャラクターを打ち出したかった。もちろんD.LEAGUEのファンの方からしたら、新規参入なので誰のことも分からないかもしれない。その中で、このダンサーはこういうダンサーで、どこういう人間性なんだとかっていうのを知ってもらいたかったっていうのもあったんです。それが一番最初にグッとできた作品でもあった。あの瞬間、Runaのキャラクターが全ダンサーやお客さんに伝わり、以降、彼が出てくるだけ“何をしでかすかわからない”みたいなワクワク感をつくれたのが僕としては、非常にデカかった」
k-skが挙げたROUND.13のエースダンサーはRISAで、テーマは「心火(しんか)」。炎をイメージした白と赤の衣裳を纏い、情熱的に踊った。またXにとっては連敗を5で止めた作品でもある。
「理由としては、負けが続いていて、長い暗いトンネルからやっと出れたということがひとつ。この勝利によって、チームがこうギュッと団結した作品でもあった。RISAが主体の作品だったかもしれないですけど、RISAだけが目立つのではなくて、Tenjuや他のダンサーのいいところも出ていた。それぐらい、いい振り付けができ、いろいろ混じってできた作品、僕はディレクター席で見ていても、ワーッと感動するほど良かった。それは今でも覚えています」
10月に開幕する25-26シーズンは、List::Xにとって“新規参画”の枕詞が取れる。新メンバーにはSPダンサーとして一緒に戦ったYusei、TATSUKIらのほかValuence INFINITIES(バリュエンス インフィニティーズ)からRENTAが加わる。ディレクターもリーダーも勝ち負けにこだわりつつも、それだけに囚われない姿勢は変わらないという。
「CSに出場して優勝するということは変わらない。もちろん、引き続き僕たちがどういう人間かを知ってもらえるような努力をしていくつもりです。もちろん勝ち負け、勝敗つくので、やっぱみんなをワーッて沸かせたいですよね」(k-sk)
「もちろんk-skさんと同じで、この舞台に挑戦するのであれば、その目標は変わらないと思うんです。加えて僕が大事にしてるのは、負けた時に何が残ったか。勝ち負けという点だけで言えば、勝ったチームしか評価は高くならない。だけど、負けた時に何かが残るかが、とても大事なことだと思うんです。僕らは正直、このシーズン、それができたと思っています。勝負としては負けてしまったけど、どこかに何かを届けることができ、伝わっていると。その人間くさいところを踊りで表現できているからこそ。来シーズンも、ここは曲げたくないテーマだとは思っています」(Tenju)
心地良い新風を吹かせた未知なる存在。新シーズンも何を起こすのか。楽しみなチームのひとつである。
(文/杉浦泰介、集合写真/©D.LEAGUE24-25)