二宮: 新年最初のゲストは雲海酒造の地元でもある宮崎県出身の井上康生さんをお招きしました。そば焼酎「雲海」を一緒に楽しみたいと思っています。
井上: 雲海酒造には以前からお世話になっています。宮崎で結婚披露宴を開いた際には、雲海酒造のお酒を各テーブルごとに置いていただきました。宮崎の結婚式は長時間で途中から飲み会みたいになります。最初はおいしくいただいていたんですが、途中からだいぶ酔っ払ってしまいました(苦笑)。


二宮: 宮崎に帰ると、よく行くお店もあるでしょう?
井上: 「夕顔寿し」というお寿司屋さんで雲海酒造の芋焼酎「日向木挽」などをいただきますね。長嶋茂雄さんや巨人の選手もよく来ているお店です。

二宮: 好きな焼酎の種類は?
井上: 芋を中心に麦、そばを飲みます。雲海酒造さんの焼酎は口当たりがいい。僕はお酒があまり強いタイプではないので飲みやすくて好きですね。

二宮: 柔道家というとお酒にも強いイメージがありますが、井上さんは意外とすぐに酔っぱらうタイプでしょうか?
井上: そうですね(笑)。うちの家系は父も含め、基本的にお酒は強くない。でも実家でも、飲むとしたらビールか焼酎でしたよ。二宮さんはお酒は毎晩?

二宮: ほぼ毎晩ですね。昔はビールとかワインをメインで飲んでいたんですけど、年々、焼酎や日本酒が好きになってきています。食事も和食がメインになってきましたから、たぶんお寿司とか煮物に合うお酒が好みになってきたのでしょう。でも柔道では飲み会も多いですから、飲めないと大変なのでは?
井上: 柔道をやっている人間は本当にお酒が強いですね。山下(泰裕)先生はじめ、よく飲まれます。私はいつも一番最初に潰れるタイプ(笑)。でも、大勢で飲むのは楽しいですよ。

 五輪に魔物はいない

二宮: さて今年はいよいよロンドン五輪です。全日本男子のコーチとして、日本勢の現状はいかがですか? 特に重量級は昨年の世界選手権はメダルゼロに終わり、少々心配です。
井上: 僕は重い階級を担当しているので、まさに責任重大です。でも大変、大変と言っていられないので、まずは目前の五輪でどう勝たせていくかを考えています。と同時に、その先の世界選手権や五輪で戦える若手の育成も視野に入れなくてはいけないでしょう。

二宮: 日本にとって重量級は花形です。軽量級が好成績でも、重量級が振るわないとどうしても尻すぼみの印象を受けてしまいます。とはいえ、重量級では外国人の強豪が次々と出てきていますから、その中で勝ち抜くのは容易ではない。
井上: 100キロ超級では世界柔道4連覇中のテディ・リネール(フランス)、90キロ級にはイリアス・イリアディス(ギリシャ)が安定した強さをみせています。100キロ級の穴井隆将(天理大職員)には意地をみせてほしいと感じています。

二宮: ズバリ、金メダルの目標数は?
井上: 男子で何とか3つは獲りたいですね。客観的に一昨年、昨年の世界柔道を分析してみると、66キロ級は一昨年が森下純平(筑波大)、昨年が海老沼匡(明治大)と2年連続で日本勢が連覇しています。73キロ級もそうです。一昨年は秋本啓之(了徳寺学園職員)、昨年は中矢力(東海大)が優勝した。そして90キロ級では西山大希(筑波大)が2年連続で2位に入っている。この3階級では金を狙いたいし、確実に優勝したいと考えています。もちろん全階級でチャンスはありますから、1個でも多く金メダルが獲れるよう、選手とともに頑張るつもりです。

二宮: 60キロ級は野村忠宏が3連覇して以降、日本勢が伸び悩んでいますね。
井上: ランキング1位のリショド・ソビロフ(ウズベキスタン)が世界柔道を連覇して、今は頭ひとつ抜けています。何とか彼を倒せるように指導していきたいですね。

二宮: 今回は指導者として迎える初の五輪になります。選手時代と比べて、いかがですか?
井上: 選手と指導者は立場が全然、違いますからね。選手時代も刺激がありましたけど、コーチになっても日々、刺激を受けています。ひとつ変わったことがあるとすれば、選手の時は自分自身のことしか考えていませんでしたが、コーチになったら、いかに選手たちをいい状態で畳に上げるか、全体を見られるようになったと思います。

二宮: 山下泰裕さんから聞いて感銘を受けたのは「五輪に魔物はいない」という言葉です。「強ければ勝つ。弱ければ負ける。ただ、それだけだ」と。
井上: その通りだと思います。本当に強い者は強いんですよ。ケガして負けたら、それは自分が弱かったから。現に山下先生だって、古賀(稔彦)さんだって、ケガを押して金メダルを獲りましたからね。

 亡くなった母が力をくれた

二宮: 井上さんのシドニー五輪での金メダルも苦難を乗り越えてつかんだものでした。前年にお母さんが急死されて、その悲しみから立ち直った。
井上: 母が亡くなった99年は大スランプの時期だったんです。試合で一本負けするは、初戦敗退するは、全く調子が上がらなかった。ところが母が亡くなって以降は、自分の何かがガラリと変わった気がします。世界柔道で優勝し、五輪でも金メダルを獲れた。今になって振り返れば、母が自分の命と引き替えに私に力をくれたのではないかと思います。

二宮: とはいえ気持ちを切り替えるには時間が必要だったでしょう?
井上: 私の場合、亡くなって3日後に大学の大会を控えていました。出場するかどうか迷いましたけど、団体戦でチームの核でしたから、“オレが出なきゃダメだ”と自分を奮い立たせて畳に立ったんです。結果的にはそれが良かったのでしょう。もし試合に出なかったら、母が亡くなったショックを引きずって立ち直れなかったかもしれない。悲しい気持ちを抑えて、“大会に出る”というスイッチを入れたことで前を向けた気がします。

二宮: どんなに悲しんでも、選手である以上、畳の上からは逃れられないと?
井上: 今回、フィギュアスケートの浅田真央ちゃんがお母さんを亡くされましたけど、全日本選手権で優勝しましたよね。真央ちゃんもお母さんから大きな力をもらっているのではないかと思っています。気持ちは簡単に切り替えられないかもしれませんけど、ぜひ頑張ってほしいですね。

二宮: 井上さんの座右の銘はお母さんからもらった言葉だとか。
井上: はい。「初心」です。亡くなる前に書いた手紙に「すべて初心に返って頑張ってください」とありました。その言葉通り、初心に返ることで「自分は柔道が好きなんだ」「強くなって勝ちたいんだ」という思いを蘇らせることができました。これからも初心を忘れず、柔道と向き合っていきたいと考えています。

二宮: 引退してから約4年になりますが、現役復帰したいと思う気持ちも時には起きるのでは?
井上: さすがに今はないですよ(笑)。学生に稽古をつけていて、「まだまだいけるな」と思っていたんですが、先日、僕が投げようとしたら、学生が明らかにわざと倒れた。「オレも気をつかわれるようになったら終わりだな」と寂しくなりました(苦笑)。

二宮: 本気で投げられたんじゃないと、すぐに分かりましたか(笑)。
井上: はい。「今のはない。わざと投げられたろ?」って説教しましたね。そのうち、組んだら学生が勝手に飛ぶようになるんじゃないかと心配しています(笑)。
 私が大学生の時は佐藤(宣践)先生によく稽古をつけてもらったんですけど、まともに組んだのは大学1年生くらいまででしたね。その後は「オマエは片手だけで組め」とか「オレは裸でやるから、オマエは柔道着着てやれ」とかハンデをつけて稽古をしました。でも、それはそれでおもしろかったですよ。世界と戦う上ではまともに組めないケースのほうが多い。そんな時、裸になった先生相手にどれだけ力を発揮できるか、いろいろ考えましたから。佐藤先生はアイデアマンで、柔道着を半袖にして袖をつかめない状態でどうやって勝つかという練習もしましたね。

二宮: そば焼酎「雲海」はいかがですか。同じ焼酎でも東京で飲むと、また違った味わいがあるのでは?
井上: 昔から付き合いのある二宮さんと外で飲むと新鮮な感じがしますね。すっきりとしていて、香りもさわやかです。改めていただいてみて、やっぱりおいしいなと感じました。

(後編につづく)

<井上康生(いのうえ・こうせい)プロフィール>
1978年5月15日、宮崎県出身。5歳のときに父・明氏の影響で柔道を始める。東海大相模高を経て、東海大時代の00年、シドニー五輪100キロ級で金メダルを獲得。99年、01年、03年と世界選手権100キロ級で3連覇を果たす。01〜03年の全日本選手権では3連覇(史上4人目)。04年アテネ五輪は4回戦で敗退し、その後、100キロ超級に転向する。08年北京五輪代表を逃し、現役引退を発表。同年から2年間、スコットランドに英語と柔道指導研究のため留学。帰国後、綜合警備保障を退職し、東海大学体育学部武道学科専任講師、同男子柔道部の副監督に就任。また全日本男子のコーチも務める。現役時代の得意技は内また、大外刈り。身長183センチ。五段。
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★今回の対談で楽しんだお酒★[/color]

日本初の本格そば焼酎「雲海」。時代とともに歩み続ける「雲海」は、厳選されたそばと九州山地の清冽な水で丁寧に仕込まれた深い味わい、すっきりとした甘さと爽やかな香りが特徴の本格そば焼酎の定番です。
提供/雲海酒造株式会社

<対談協力>
銀座 羅豚 はなれ
東京都中央区銀座8−10−8 銀座8丁目10番ビル1階
TEL:03-6808-1555
営業時間:
ランチ  11:30〜15:00(月〜日)
ディナー 17:00〜23:30(月〜金)、16:00〜22:00(土、日、祝日)

☆プレゼント☆
井上康生さんの直筆サイン色紙を本格そば焼酎「雲海」(900ml、アルコール度数25度)とともに読者3名様にプレゼント致します。ご希望の方はより、本文の最初に「井上康生さんのサイン希望」と明記の上、下記クイズの答え、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)、このコーナーへの感想や取り上げて欲しいゲストなどがあれば、お書き添えの上、送信してください。応募者多数の場合は抽選とし、当選は発表をもってかえさせていただきます。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。
◎クイズ◎
 今回、井上康生さんと楽しんだお酒の名前は?

 お酒は20歳になってから。
 お酒は楽しく適量を。
 飲酒運転は絶対にやめましょう。
 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

(構成:石田洋之)
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