二宮: メジャーリーグのロッカーにはアルコール類も用意されていますよね。向こうの選手はお酒も強いでしょう?
上原: ザルですね(笑)。先発ピッチャーは降板したら、試合中でもクラブハウスでお酒飲んでいます。ベンチで飲まなければ基本的にはOKです。そのまま酔っ払って、試合後はチャーター機に乗って遠征という感じですね。


二宮: 選手たちはどんなお酒を好みますか?
上原: アメリカ人はビールが多いですね。あとはウイスキーやブランデー。ロッカーにコーラがあるので、それで混ぜて飲んでいます。ラテン系はウイスキーがほとんどです。

二宮: 日本では投手会とか野手会といった飲み会を開催することがあります。メジャーリーグでは?
上原: アメリカでは飲みにいくという文化はあまりないですね。お酒を飲んだとしても全部ロッカールームで済ませて、さっさと帰る。試合数も多いですから、そういう部分は選手たちも気をつけています。意外と日本の選手たちよりマジメですよ。

 「100%の自信がなければメジャーに来るな」

二宮: 上原さんはプロ入りの際に、日本球界のみならず、メジャーリーグからも誘いがありました。近年は田澤純一(レッドソックス)、菊池雄星(埼玉西武)など、アマチュアの有望選手が国内か米国行きかで熟考するケースが増えてきています。上原さんは、その先駆けと言えるのではないでしょうか?
上原: そうかもしれません。メジャーの球団からはいくつか話がありました。最終的にはエンゼルスか巨人かでギリギリまで迷っていたんです。あの時、日本の球界はきちんとアマチュア選手のメジャーリーグ行きについてルールを決めておくべきだったと思いますね。そうすれば田澤君や菊池君のような騒動は起きなかった。

二宮: 最終的に巨人入りを決断した理由は?
上原: 親が渡米に反対でしたし、極東スカウトの方からは「来てほしいけど、もし100%の自信がなければ成功しない。99%の自信なら来るな」という言葉をいただきました。やはり、まだ当時は不安がないと言ったらウソでしたから、メジャー行きを断念したんです。今、振り返れば、そのアドバイスはありがたかったですね。

二宮: その巨人では1年目に20勝をあげて投手部門のタイトルを総ナメにしました。そして08年オフ、FA権を取得して晴れて念願のメジャーリーグ挑戦を果たします。メジャーリーグでプレーした選手たちからは、日本の野球とはいろいろな面で違いがあるという話をよく耳にします。たとえば、ボールの違いはいかがでしたか?
上原: とにかくメジャーのボールは大きくて滑りますね。もうツルッツルです。日本のボールはサインボールでさえもベタベタしている。コントロールするのに今でも悩んでいます。

二宮: 大きく分けて日本人投手がメジャーリーグのボールを持った時の感想は2パターンあります。上原さんのように「合わない」と語る人もいれば、野茂英雄や佐々木主浩は「全く気にならない」と言っていました。
上原: 野茂さんの感覚がうらやましいですね。品質も天と地ほど日本のボールとは違う。縫い目も雑で1個1個違う。なんだか適当につくっているような感じです。試合中、ボールをもらって、「さすがにこれは代えてくれ」というものもありますから。まぁ、ボールは日本よりも飛びませんが、向こうのバッターはパワーがあるので、それでもホームランがめちゃくちゃ出る。

 野村克也がMLBの監督!?

二宮: マウンドはどうですか?
上原: めちゃくちゃ硬いですよ。正直、コンクリートの上で投げているような感覚です。1回、スパイクが刺さったら、そこから動かせない。だから、踏み込みは浅くなるし、歩幅も狭まる。日本では「下半身を使って投げろ」と言われますが、その投げ方では投げられません。日本では球場によってマウンドに違いがありますが、メジャーリーグでは全部一緒です。だから、どこも投げにくい。

二宮: キャッチャーとのコミュニケーションは?
上原: いろんな国から選手が集まってきているので、まず言葉が通じない。サインもあってないようなものです。オリオールズでは2年半やって、だいぶ僕の特徴も分かってくれるようになっていました。でもレンジャーズでは信頼関係を構築するのに時間が足りませんでしたね。

二宮: キャッチャーのリードも初球はストライクから入り、後はピッチャーが投げたいところに投げさせる感じでしょうか?
上原: そんな感じですね。日本みたいにボールから入ったり、配球がどうのこうのというのはあまりない。だから野村(克也)さんがメジャーリーグの監督になったら、おもしろいと思いますよ。まぁ、野村さんの考えについてこられるキャッチャーがどのくらいいるかは問題ですが……。

二宮: アメリカのキャッチャーはワンバウンド捕球を除いてキャッチングも決して上手ではない。上原さんも「うまく捕ってくれればストライクなのに」と感じることが多いのでは?
上原: もう、その点は諦めています。仕方ないですよ。キャッチングに関しては日本の高校生レベルです。ただ、おっしゃるようにコーチはワンバウンドの練習はしっかりさせます。パスボールだけはしないようにする。だから、意外とワンバウンドの捕球に関しては日本より優れていますね。

 化け物だったミゲル・カブレラ

二宮: 海を渡ってから外見もモミアゲを伸ばしたスタイルに変えましたね。その理由は?
上原: 特別なことはないんですけど、まずは見た目で名前を覚えてもらおうと考えたからです。アメリカに行くと日本人も中国人もアジア系はみんな同じように見られてしまう。名前を知ってもらうには何か特徴が必要なんです。「あのモミアゲの長いやつがウエハラだ」という印象を植え付けておけば、「来年、アイツを獲ってみようか」という話になるかもしれない。

二宮: 3年間でたくさんのバッターと対戦したと思いますが、一番、インパクトのあったバッターは?
上原: やはりアルバート・プホルス(来季よりエンゼルス)でしょうね。彼は地上最強です。10年連続3割30本塁打100打点なんて普通の人間ではできないですよ。
 今年、対戦したところではプレーオフで対戦したミゲル・カブレラ(タイガース)です。リーグチャンピオンシップでホームランを打たれて化け物だと感じました。どこへ投げても打たれるような気がして、次の打席では完全に気持ちが逃げてフォアボールを与えてしまいましたからね。13年間、プロで投げてきてこんなことは初めてでした。

二宮: 上原さんも早いもので、来年は37歳になります。同い年では建山義紀、高橋由伸(巨人)、井端弘和(中日)、松井稼頭央(楽天)、金子誠(日本ハム)と活躍している選手も多い。あと5年くらいは、第一線で投げられるのでは?
上原: でも、引退は常に意識していますよ。太ももの肉離れを何度も繰り返しましたし、2年前にはヒジも痛めました。腱の部分断裂だったんですけど、手術が必要なら1年を棒に振らなくてはいけない。この年齢で1年間投げられないと、どこも獲ってくれる球団はなくなります。だから、手術しなくてはいけない状況だったら、引退しようと考えていました。

二宮: 来季はまた日本のエース級が何人も海を渡ります。ダルビッシュ有はレンジャーズが交渉権を獲得し、チームメイトになる可能性が出てきました。後輩たちに何かアドバイスを。
上原: 自分をしっかり持つことが大切ではないでしょうか。全体練習の時間も短いので、その後、どう練習し、調整するかは個々人に任されています。指示を待つのではなく、自分で考えて動けるタイプでないと、いい結果は残せません。言葉を覚えるのは二の次ですよ。野球をしに来ているわけですから、まずは成績を残すことを第一に考えてほしいですね。結果さえ出れば、勝手にチームメイトは寄ってきますし、サポート体制もできてきますから。

二宮: 来季も海の向こうでの快投を楽しみにしています。そば焼酎「雲海」をプレゼントしますので、ロッカールームに置いておいてください(笑)。
上原: 本当においしかったです。やはり焼酎はいいですね。味が繊細で、深みがあります。ありがたく持って帰りたいと思います。でも、荷物を見られたら、「どんだけ飲んべぇや」って言われそうですけど(笑)。

(おわり)

<上原浩治(うえはら・こうじ)プロフィール>
1975年4月3日、大阪府生まれ。東海大仰星高時代は外野手兼投手。1浪して大阪体育大に入学後、投手として頭角を現す。97年のインターコンチネンタルカップでは日本代表に選ばれ、決勝では当時国際大会151連勝中だったキューバ相手に先発で勝利投手となる。99年、ドラフト1位で巨人に入団。1年目に20勝4敗の好成績で新人としては史上3人目の投手4冠(最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率)を達成。新人王と沢村賞を受賞する。04年にアテネオリンピック日本代表に選ばれ、銅メダル。06年のWBCにも出場し、優勝に貢献する。07年には抑えに転向し、球団新記録となる32セーブをマーク。08年オフにFA宣言し、ボルチモアオリオールズへ。移籍2年目の10年にはクローザーも務めた。11年も安定した投球を続け、シーズン途中にテキサスレンジャーズへトレード。チームはリーグ優勝を果たした。今季終了時までの通算成績はNPB276試合、112勝62敗33セーブ、防御率3.01。MLB120試合、5勝9敗13セーブ、防御率3.13。
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 今回、上原浩治選手と楽しんだお酒の名前は?

 お酒は20歳になってから。
 お酒は楽しく適量を。
 飲酒運転は絶対にやめましょう。
 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

(構成:石田洋之)
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