いよいよ、2月15日(日本時間)から欧州チャンピオンズリーグ(CL)が決勝トーナメントに突入する。順当勝ちあり、波乱ありのグループステージを突破した16クラブが頂点を目指して、今度は一発勝負の戦いに挑む。今季の決勝(5月19日)の地はドイツ・ミュンヘンのフスバル・アレナ・ミュンヘン。06年W杯では開幕戦の舞台となったスタジアムでビッグイヤーを掲げるのはどのクラブか――。

 世界王者に死角なし

 優勝候補の筆頭は、やはり昨季の欧州王者・FCバルセロナだろう。昨年末に日本で開催されたクラブW杯でも、圧倒的な強さで2度目の世界一に輝いた。今季はグループステージ初戦でACミランと引き分けたものの、その後は5連勝であっさりと首位通過を決めた。
 
 バルサの特徴として際立つのは、他の追随を許さないボールポゼッションの高さだ。CLグループステージでの平均支配率68%は、もちろんベスト16に進出したクラブ中、断トツの1位。総失点4は2番目に少ない。先のクラブW杯でも準決勝(対アルサッド)、決勝(対サントスFC)は、ともに70%以上を記録した。南米王者・サントスとの決勝戦では、実質プレー時間が45分にも及んでいる。翻ってサントスの同時間は18分。90分のゲームのなんと半分の時間帯をバルサがボールを支配し、プレーしていたというわけだ。。

 これではいくら守備の固いチームといえど、いつかは綻びが出てしまう。バルサの選手たちはそこを見逃さない。3年連続でバロンドールを受賞したリオネル・メッシを筆頭に、ペドロ、アンドレ・イニエスタ、セスク・ファブレガスなどの創造性豊かな攻撃陣が相手ゴールを脅かす。サッカーでは当然のことながら、ボールを持っている限り、攻められることはない。ポゼッションの高さは分厚い攻撃のみならず、守備の安定にもつながる。今のバルサが史上最強と呼ばれるゆえんだ。

 クラブW杯で負傷したストライカーのダビド・ビジャが長期離脱を強いられることになったものの、世界随一の選手層を誇るバルサには、これも致命傷とはならない。国内での試合においても、主力選手の穴をイサーク・クエンカらカンテラ(下部組織)育ちの若手がしっかりと埋めている。
 現行の大会方式になって以降、CLで連覇を成し遂げたクラブは存在しないとはいえ、死角の見当たらないバルサが、歴史を塗り替える可能性は、限りなく高い。

 バルサを追う“白い巨人”
 
 では、バルサの対抗馬となり得るのは、どのクラブか。それは永遠のライバル、レアル・マドリードだろう。レアルは、グループステージを圧巻の6連勝で16強入りを決めた。国内リーグでは、バルサに勝ち点差5をつけて前半戦を首位で折り返している。

 今季のレアルの攻撃力には鬼気迫るものがある。リーグ戦19試合で奪った得点は67。バルサが昨年記録したリーグの前半戦最多得点(61点)を上回った。5点以上の大量得点を奪った試合は実に6試合にのぼる。
 
 攻撃のみならず、守備も盤石だ。グループステージの6試合で許した失点2はバルサを上回り、16クラブ中最少。レアルの象徴でもある“絶対守護神”イケル・カシージャスを最後の砦に、ポルトガル代表のペペらがゴール前に立ち塞がる。鋭い矛に、堅い盾。“白い巨人”の強さは今も健在だ。

 ただし、その強さもバルサとのいわゆる“クラシコ”だけは鳴りを潜めてしまう。敵将にジョゼップ・グアルディオラが就任した08―09シーズン以降、公式戦での対戦成績はバルサの9勝4分1敗。今やヘビににらまれたカエルも同然だ。
 レアルがビッグイヤーを最後に獲得したのは10年前。節目の10回目となる欧州一を目前に足踏みを続けている。彼らが再び頂点に立つためにはバルサを倒さなければならない。昨季はセミファイナルで激突し、1敗1分で敗退している。

 長友のインテルも注目

 また、今季のCLファイナルは日本人選手の活躍にも注目だ。ベスト16進出クラブのうち、日本人が所属しているクラブは4つ。インテル(長友佑都)、CSKAモスクワ(本田圭佑)、アーセナル(宮市亮)、バイエルン・ミュンヘン(宇佐美貴史)だ。これは、ひと昔前、いや、つい2、3年前でも想像できなかったことだ。

 なかでも楽しみなのは長友だ。長友は現在、リーグ戦でチーム3位の出場時間を記録。2試合連続でゴールをあげるなど、今や押しも押されもしない左サイドバックのレギュラーとして躍動している。

 印象的だったのは、昨年12月のレッチェ戦で見せた2アシストだ。後半28分には左サイドをドリブルで深く切り込み、エステバン・カンビアッソへラストパス。その8分後には、一度は相手に倒されながら、すばやく起き上がってリッキー・アルバレスにクロスをあげた。イタリアの『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙が長友に「7.5」の高評価を下すほど、そのプレーは光っていた。実はリーグ戦でのアシストはこの2つのみ。だが、その事実を感じさせないほど、積極的な攻撃参加が相手に脅威を与えている。こうした長友の貢献もあり、チームは昨年末からリーグ戦で7勝1敗と好調だ。攻撃の中心を担うウェズリー・スナイデルが調子を上げてくれば、2年ぶりのビッグイヤー獲得への道も開けてくるだろう。

 本田擁するCSKAモスクワはグループステージを2位で突破したものの、ベスト16ではレアルと当たる。本田にとっては憧れのクラブとの対戦だが、肝心の本人は昨年8月に痛めた右ヒザの負傷が長引き、11月から試合に出ていない。さらにここにきて、セリエAのラツィオからの獲得オファーにクラブ側が合意したとの報道がなされ、本田も移籍に前向きだという。果たして本田はどんな決断を下すのか。

 宇佐美、宮市の出番は?

 そして、今後の日本サッカーを背負って立つ若き才能たちも大舞台のピッチに立つ可能性がある。宇佐美が所属するバイエルンは、ナポリ、マンチェスター・シティ(マンC)、ビジャレアルと同居した「死」のグループを見事1位で通過。宇佐美はグループステージ最終戦のマンC戦に途中出場し、CLにおける日本人最年少デビューとなった。チームにはアリエン・ロッベンやフランク・リベリーなど、スター選手がひしめいており、ここまでリーグ戦出場はわずかに1試合。他クラブへのレンタル移籍も噂されるなど、よほどのことがない限り、出場は難しいだろう。

 11年ぶりのCL制覇へベスト16で激突するのはFCバーゼル(スイス)。グループリーグ最終戦でマンチェスター・ユナイテッド(マンU)をホームで破り、グループステージ敗退に陥れた。戦力的にはバイエルンが優位だが、ジャイアントキリング第2章を狙うバーゼルの勢いは侮れない。

 もうひとりの若手の星・宮市が所属するアーセナルは、イタリア王者のACミランと対戦する。ポイントはアーセナルの守備陣が、ミランのエースストライカー、ズラタン・イブラヒモビッチや、スピードあふれるロビーニョ、アレッシャンドロ・パトらの攻撃陣をどう封じるか。相手を無失点に封じた上でアレッサンドロ・ネスタらを擁する熟練の守りを崩す展開になればおもしろい。

 現状では宮市の出番も残念ながら難しそう。昨季はプレミア・リーグの就労ビザが下りず、オランダのフェイエノールトに期限付き移籍して経験を積んだ。今季から晴れてアーセナルの一員としてシーズンをスタートしたものの、名門クラブの分厚い選手層に阻まれ、ここまでリーグ戦の出場は皆無だ。ただ、負傷者が多いだけに、突然、出番が巡ってくる可能性もないとは言えない。もしピッチに立つことがあれば、最大の魅力である突破力を披露してほしいものだ。

 過去のCLにおいてアジア人で初めて決勝のピッチに立った選手は09年のパク・チソン(マンU)だ。そして昨季、シャルケ04の内田篤人がベスト4の舞台でプレーしたのも記憶に新しい。日本人の「CLファイナル」「ビッグイヤー獲得」は、夢物語ではなくなってきている。夢が現実になる瞬間をスカパー!で堪能したい。


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【UEFAチャンピオンズリーグ決勝ラウンド開幕特番 〜オシム、ザッケローニ、Jリーガーたちの大予想SP〜】
 
2月12日(日) 19:00〜20:30(初回放送)
 欧州の舞台を肌で感じたことのあるJリーガーや監督らを迎えて開幕直前の決勝ラウンドを熱く語る90分!

【決勝トーナメント1回戦1stレグ】

2月14日(火) 28:45キックオフ
バイヤー・レバークーゼン(ドイツ) × FCバルセロナ(スペイン)
オリンピック・リヨン(フランス) × アポエル・ニコシア(キプロス)

2月15日(水) 26:00キックオフ
ゼニト・サンクトペテルブルク(ロシア) × ベンフィカ(ポルトガル)

2月15日(水) 28:45キックオフ
ACミラン(イタリア) × アーセナル(イングランド)

2月21日(火) 26:00キックオフ
CSKAモスクワ(ロシア) × レアル・マドリード(スペイン)

2月21日(火) 28:45キックオフ
ナポリ(イタリア) × チェルシー(イングランド)

2月22日(水) 28:45キックオフ
FCバーゼル(スイス) × バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)
オリンピック・マルセイユ(フランス) × インテル(イタリア)

【決勝トーナメント1回戦2ndレグ】

3月6日(火) 28:45キックオフ
ベンフィカ × ゼニト・サンクトペテルブルク
アーセナル × ACミラン

3月7日(水) 28:45キックオフ
アポエル・ニコシア × オリンピック・リヨン
FCバルセロナ × バイヤー・レバークーゼン

3月13日(火) 28:45キックオフ
バイエルン・ミュンヘン × FCバーゼル
インテル × オリンピック・マルセイユ

3月14日(水) 28:45キックオフ
チェルシー × ナポリ
レアル・マドリード × CSKAモスクワ

(試合開始時刻は日本時間、左チームがホーム、2戦合計で上回ったチームが準々決勝に進出)
>>詳しい放送スケジュールなどはこちら!

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