第14回「“楽しい”が上達のカギ」ゲスト大島伸矢氏

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二宮清純: 今回のゲストは、一般社団法人スポーツ能力発見協会(DOSA)理事長の大島伸矢さんです。DOSAは子どもたちの身体能力を正確に計測し、得意・不得意を見つける測定プログラム「SOSU」を開発し、子どもたちのスポーツ能力の向上をサポートしています。

大島伸矢: 本日はよろしくお願いいたします。

 

伊藤清隆: よろしくお願いします。測定会はどのような目的で?

大島: 主に各自治体から事業を委託されています。目的は子どもの運動実施率向上や人材発掘です。全国で測定会を行い、運動能力と生活習慣などを分析し、どうすれば運動能力が向上するかを日々研究しています。得意なことを見つけることで、子どもたちの自信を数値化する。また苦手なことを弱点のままにするのではなく、遊びを通じて伸ばしていくことも、我々は重要視しています。

 

二宮: DOSA設立は2014年。ここまでの歩みを振り返っていかがですか?

大島: 我々が測定会を通じて集めたデータを分析していくと、運動能力が高い子はどういう特徴があるのかが見えてきました。骨格や筋肉は遺伝子の影響を受けますが、運動能力は違う。これはまだ仮説の段階ですが、6歳ぐらいまでに遊ぶ内容で概ね決まってくるんじゃないかと言われています。どんな遊びをしているかによって、伸びる運動能力も異なる。例えば右利きの人が左手で箸を使う感覚に近いですね。最初はぎこちなくても習慣化すれば使えるようになります。ただ小学校に上がってから伸ばしていくのは容易ではない。理想は0歳から6歳まで。この時期に遊び指導に力を入れていくことで運動能力を伸ばす。それが今、我々が目指していることです。

 

二宮: 0歳から6歳の子どもたちにきちんと遊ぶ機会を与えれば、運動能力は伸びていくということですね。リーフラスは、スポーツスクールを運営していますが、対象年齢は何歳からでしょう?

伊藤: 2歳からです。弊社の場合、6歳ぐらいまでは、ひとつのスポーツだけでなく複合型を勧めています。多種目スポーツスクール「JJMIX」(ジェイジェイミックス)では、サッカーや野球、バスケットボールなどの運動要素を取り入れた多種目スポーツスクールです。簡単に言うと、子どもたちに「走る」「跳ぶ」「蹴る」「投げる」など体を動かすことの楽しさを感じてもらいながら、運動の基礎を身に付けてもらうという取り組みです。

 

二宮: やはり早く始めた方が、子どもたちの運動能力は高まっていくのでしょうか?

伊藤: そう思います。加えて、いろいろなスポーツや遊びに触れることで、さまざまな体の動かし方を覚えることができる。日本ではひとつのスポーツに絞りがちですが、JJMIXは基本的には週に1回の活動で、1週目がサッカーだったら、翌週はバスケットボール、次の週は野球と複合的にやっていくようなかたちにしています。

 

“好き”の中身を見極める

 二宮: DOSAでは、子どもたちの向き不向きを見つけ、「このスポーツが向いているんじゃないの」とナビゲーションも行っているのでしょうか?

大島: いえ、向いているスポーツというのは、あくまでも指標に過ぎません。そのスポーツをやりなさいということよりも、一番重要なのは本人のやりたい気持ち。例えばサッカーもバスケットボールも野球も下手だから「運動をしたくない」という子どもに対し、「別にボールを使わなくても、あなたは体幹がすごくいいんだから、ダンスやボートをやってみたらいいんじゃない?」と提案します。我々としては、きっかけづくりを重視しています。

 

二宮: 向き不向きを見つけた上で、本人には好きなことができるよう、やりたいことができるようなアドバイスを送るというスタンスですね。

大島: その通りです。大切なのは、そのスポーツが好きかどうかです。一方で、その“好き”の中身を見極める必要もある。例えば「サッカーが好き」と言う子は、本当にサッカーが好きなのか、あるいは指導者や友だちが好きなのか。また「サッカーが嫌い」と言う子は、サッカーが嫌いなのか、それともチームメイトや練習グラウンドの土が嫌いなのか。往々にして子どもは気の合わない友だちがいるから「サッカーが嫌い」と言ってしまうんです。それは本質的にサッカーが嫌いというわけではないですし、環境さえ合えば伸びていく可能性は十分あります。だから私は友だちやチームが、まず子どもの時はすごく重要だと思っています。

 

二宮: 友だちの影響が大きい。チームプレーが大切だというのは、リーフラスも同じ考えでしょうか?

伊藤: そうですね。我々のスクールでも、特に幼少期はチームスポーツを勧めています。空手や剣道もありますが、なるべくなら団体の方がいいと。例えば協調性のない子どもには、あえて新入会生や小さい子の面倒を見させるようにしています。そういう場面を意図的につくることで、いわゆる非認知能力が身に付くと考えています。

 

二宮: 他の子どもの面倒を見ることによって、本人に気付きや学びがあるんでしょうね。責任感を持ったり、とか……。

伊藤: それが狙いです。もちろんすぐに身に付くものではないんですが、継続していくことで、協調性は身に付くと思っています。リーダーシップに関しては、我々のスクールは勝つことが目的ではないので、チーム内で上手じゃない子にもキャプテンを任せます。キャプテンという役割を任されることで、リーダーシップが養われていく効果が認められています。

 

ポジションが仕事に反映!?

二宮: その点、大島さんはどうでしょう。

大島: 私も伊藤社長と同じ、個人競技でもチームスポーツでもいろいろな経験をさせることが必要だと思っています。それが社会に出た時に生きてくる。特に中高大でやってきたスポーツ、そのポジションが仕事のスタイルに影響してくると感じます。例えばサッカーだと、雨の日も風の日もプレーし、どんなシチュエーションになっても対応できるような柔軟性、フレキシブルさが必要となります。それが仕事においても表れている気がしますね。ポジションで言えば、昔のゴールキーパーの人たちはゴールを守ることに重きを置いていたので、経理や保守・管理に向いている。だから「学生時代、何のスポーツをやっていましたか? どこのポジションでしたか?」と聞くと、職種とリンクしていることが多いですね。

 

二宮: わかります。例えばJリーグ初代チェアマンの川淵三郎さんはフォワード。彼の突破力が日本サッカーの未来を切り拓きました。

伊藤: 今の話を聞いていて興味深かったのは、弊社の管理職にはサッカー経験者が多いことです。これは社風がいわゆるボトムアップ型で、トップダウン型ではないことと関係があると思われます。逆に体育会系の会社だったら別の競技の方が出世していたかもしれませんね。

 

二宮: それは面白いデータですね。

大島: その意味でも、いろいろなスポーツを経験することはすごく重要だと感じますね。

 

二宮: ところで今の子どもたちは、スマホやゲームばかりしていると言われています。外で遊ぶことが当たり前だった昔の子どもたちとは、違う環境に置かれている。成長過程において問題はないのでしょうか?

大島: まさにそこですね、今は好きなことをやらせるとゲームやYouTube、SNSにいきます。それはそれで悪いことではないのですが、それだけになってしまうと健康的に良くない。ゲームやSNSを使う時間を制限しなくても、他に面白い遊びを提供すれば喜んでやるんですよ。いかに楽しい遊びを提供してあげられるかがカギになります。

 

二宮: リーフラスは、スポーツをする前の準備運動に遊戯性を取り入れたりしていますよね。

伊藤: そうですね。鬼ごっこみたいなこともやります。我々のスポーツスクールは楽しむことを主体にしている。我々が大事にしているのは、“認めて、褒めて、励まし、勇気づける”指導です。運動が苦手な子でも取り組めるのがうちのスクールなので、みんなで楽しく取り組んでいます。

 

二宮:まずは認めてあげる。それが子どもの個性を伸ばすことにつながるんでしょうね。

大島: 少しでも、いいことをしたら褒める。その繰り返しで、だんだん褒められたスポーツのことが好きになっていくでしょうしね。子どもって夢中になる時は脳がすごく活性化し、どんどん吸収していく。どれだけ夢中になる時間を多くつくっていくかがすごく重要だと思っています。

伊藤: リーフラスでは、全種目にいわゆる昇級テストがあります。それをクリアしていくことの連続が問題、課題から逃げずに自分なりに工夫して取り組んでいくことにつながると考えています。合格したら次の課題と向き合う。そこでやり抜く力が付く。また課題解決能力の向上にもつながります。

 

(鼎談構成・写真/杉浦泰介)

 

大島伸矢(おおしま・しんや)プロフィール>
1970年、福岡県出身。大学卒業後に就職・企業を経験した後、07年に能力の精密測定を事業化、知育面で活用するプライム・ラボを設立。14年には一般社団法人スポーツ能力協会(DOSA)を設立し、理事長に就任。プロが使う測定ツールで子どもたちの身体能力を正確に計測し、得意・不得意のスキルを共有して早く「好きで得意なこと」に出会える場を提供する測定プログラム「SOSU」を開発。子どものスポーツ能力の測定や向上をサポートしている。DOSAのアスリート支援プログラム「DOSAパラエール」、リクルートキャリアとのコラボ「障がい者アスリート応援プロジェクト」などパラスポーツの支援も行っている。著書に『子どもが伸びる運命のスポーツとの出会い方』(枻世出版)。

 

伊藤清隆(いとう・きよたか)プロフィール>

1963年、愛知県出身。琉球大学教育学部卒。2001年、スポーツ&ソーシャルビジネスにより、社会課題の永続的解決を目指すリーフラス株式会社を設立し、代表取締役に就任(現職)。創業時より、スポーツ指導にありがちな体罰や暴言、非科学的指導など、所謂「スポーツ根性主義」を否定。非認知能力の向上をはかる「認めて、褒めて、励まし、勇気づける」指導と部活動改革の重要性を提唱。子ども向けスポーツスクール会員数は3年連続国内No.1、部活動受託校数も国内No.1(※1)の実績を誇る(2024年12月現在)。社外活動として、スポーツ産業推進協議会代表者、経済産業省 地域×スポーツクラブ産業研究会委員、日本民間教育協議会正会員、一般社団法人日本経済団体連合会 教育・大学改革推進委員ほか。

 

二宮清純(にのみや・せいじゅん)プロフィール>

1960年、愛媛県出身。明治大学大学院博士前期課程修了、同後期課程単位取得。株式会社スポーツコミュニケーションズ代表取締役。広島大学特別招聘教授。大正大学地域構想研究所客員教授。経済産業省「地域×スポーツクラブ産業研究会」委員。認定NPO法人健康都市活動支援機構理事。『スポーツ名勝負物語』(講談社現代新書)『勝者の思考法』(PHP新書)『プロ野球“衝撃の昭和史”』(文春新書)『変われない組織は亡びる』(河野太郎議員との共著・祥伝社新書)『歩を「と金」に変える人材活用術』(羽生善治氏との共著・廣済堂出版)、『森保一の決める技法』(幻冬舎新書)など著者多数。

 

※1

*スポーツスクールの会員数3年連続 国内No.1

・スポーツ施設を保有しない子ども向けスポーツスクール企業売上高上位3社の会員数で比較

・会員数の定義として、会員が同種目・異種目に関わらず、複数のスクールに通う場合はスクール数と同数とする。

*部活動受託校数 国内No.1

・部活動支援事業売上高、上位3社の2024年の受託校数を比較

株式会社 東京商工リサーチ調べ 2024年12月時点

 

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リーフラス株式会社

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サッカー、野球、バスケットボール、ダンスなどのスポーツスクール事業を展開している リーフラス株式会社とのタイアップコーナーです。 日本のスポーツ、教育の現場における様々な社会課題解決に取り組む同社代表取締役の伊藤清隆氏が、 スポーツ界の有識者やご意見番をゲストに迎え、スポーツの未来を展望します。 司会進行は当HP編集長・二宮清純が務めます。

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