開幕まで2週間を切り、オープン戦、練習試合も本格化してきました。現状は元NPB組の河原純一(元中日)、橋本将(元横浜)や米独立リーグからやってきた外国人を除き、新人や若手の見極めを行っているところです。
 今回、愛媛はチーム創設8年目で初めて、元NPBの選手を獲得しました。河原、橋本とも1軍で実績を残しているベテランです。彼らの入団は単なる戦力アップのみならず、若手のいい手本になることが期待できます。それは練習に取り組む姿勢ひとつとっても明らかです。

 リーグの選手がウォーミングアップから体を動かし始めるのに対し、河原や橋本は既にアップの段階で準備ができています。30代半ばを過ぎてもプレーできるのは、こういった部分に理由があるのだと愛媛の選手たちは肌で感じたことでしょう。

 ただ、彼らの目標はあくまでもNPB復帰。僕は2人に「若手に指導はしなくていい。選手としてしっかりアピールすることに集中してほしい」と話をしました。コンディションさえ整えば、河原にはどんどん投げてもらいたいですし、橋本にも毎試合、マスクをかぶってもらいたいと考えています。それでも彼らは若い選手たちと積極的にコミュニケーションをとり、アドバイスをしてくれますから、本当にありがたいことです。

 外国人は投手のデイビット・トレイハンと内野手のブレット・フラワーがやってきます。デイビットは映像を見る限り、ボールに力があり、球威で押すタイプの右腕です。ブレットは打撃にクセがなく、日本の野球を教えれば着実に結果を残せるとみています。パワーも日本人とは比べものになりませんから、最終的には4番を任せることになるでしょう。

 元NPB組と助っ人が実力を発揮すれば、当然、今いる選手たちの出番は限られます。とはいえ、昨季から半数以上のメンバーが入れ替わった状態ですから、まだポジションは固まっていません。キャンプから各選手に複数のポジションを試してもらいながら、刺激を与えています。

 たとえばブレットが入りそうなサードとファーストには、山内大樹、三重から移籍した金城雅也、新人の浜咲祐大(日大明誠高−駒澤大)、高橋佑介(天理高−仏教大−アークバリアドリームクラブ)の5人が争っています。また二遊間も高知からやってきた流大輔に、藤長賢司と山内、そして高卒新人の四ッ谷良輔(深谷商高)の競争です。

 特に四ッ谷は高校時代は投手をしていましたが、バネがあり、内野手としての素質を感じます。まだ173センチ、63キロと線が細いため、体力さえつけばNPBのスカウトにも注目される存在になれるはずです。守備、走塁が一定のレベルに達すれば、実戦で使ってみたいと考えています。

 今季はソフトバンクとの定期交流戦もリーグの成績にカウントされるため、出場機会の少ない選手を試す場にはできません。レギュラーを狙う選手たちにとっては、このオープン戦が勝負です。4月1日の開幕戦(対徳島)で誰を使うか迷うくらいの競争を続けてほしいと願っています。

 元NPB選手のベテランに若手、外国人と、今年のチームはバランスのいい陣容になっています。ホーム開幕戦は4月22日(宇和島、対高知)。ぜひ、実際に球場へ足を運んで新しいマンダリンパイレーツを観に来ていただけるとうれしいです。


星野おさむ(ほしの・おさむ)プロフィール>:愛媛マンダリンパイレーツ監督
 1970年5月4日、埼玉県出身。埼玉県立福岡高を経て、89年にドラフト外で阪神に入団。内野のユーティリティープレーヤーとして、93年に1軍デビューを果たすと、97年には117試合に出場。翌年には開幕スタメンで起用される。02年にテストを経て近鉄へ。04年に近鉄球団が合併で消滅する際には、本拠地最終戦でサヨナラ打を放つ。05年に分配ドラフトで楽天に移籍し、同年限りで引退。06年からは2軍守備走塁コーチ、2軍打撃コーチなどを務めた。11年より愛媛の監督に就任。 
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