日本のエース・北島が、まずは100メートル平泳ぎでの五輪出場権を獲得した。
 北京五輪代表選考会を兼ねた競泳の日本選手権第2日は4月16日、東京・辰巳国際水泳場で3種目の決勝ほかが行われた。注目の男子100メートル平泳ぎ決勝では、五輪2連覇を目指す北島康介(日本コカ・コーラ)が五輪派遣標準タイムを突破する59秒67で9連覇を達成。日本記録の更新はならなかったが、予選、準決勝を含め3レース連続で1分を切った。2位の末永雄太(チームアリーナ)も1分0秒72で派遣標準タイムを破り、初の五輪代表入りを決めた。
 日本新記録更新への期待も集まった北島だが、準決勝まで泳ぎにわずかに狂いが出たようだ。「予選、準決勝で良い泳ぎができていたが、泳ぎを修正しようと決勝の前に話し合った。昨日のままの泳ぎで行かせた方が良かったかなと個人的に悔やんでいる」と平井コーチ。北島もレース後「もう一度泳ぎたい。これでは北京で金メダルは獲れない」と自己評価は厳しかったが、3レース連続の59秒台に「3回、同じようなレースができたということは、ベースができたということかな、と」と収穫も口にした。
「200メートルもあるので、そこで良いレースを見せたい」。今シーズン、重点を置いて取り組んでいるという残る200メートルでの記録が楽しみだ。
 2位に入り初の五輪代表入りを決めた末永は「大学の試合が終わり引退も考えたが、多くの人に支えられてここまで来れた。もう半年、水泳ができる幸せを感じている。北京では、初めてのオリンピックで右も左も分からないと思うが、予選から全力でいって康介さんとワン・ツーフィニッシュしたい」と力強く語った。 

 混戦となった女子100メートルバタフライ決勝は、アテネ五輪200メートルバタフライ銅メダリストの中西悠子(枚方SS)が終盤に驚異的な追い上げを見せ、58秒52の日本新で優勝、58秒55で2位に入った加藤ゆか(山梨学院大)とともに五輪代表入りを決めた。準決勝で58秒59の日本新記録を出した土肥亜也子(KONAMI)も派遣標準タイムを突破したものの3位で代表入りはならなかった。
 中西は「まさかこんなに良いタイムが出るなんて、びっくり」と笑顔。前半型の加藤らが飛ばす中、3番手につけるも一時は身体1つ分ほど離されたが、「調子が良かったのであせらずいこうと思った。接戦になると思ったので、最後のタッチまで気を抜かないように、と」と第一人者の底力を見せた。
「200メートルでも予選、準決勝、決勝とまた気持ちを上げていって、決勝ではまた自分がびっくりするようなタイムで泳ぎたい」。得意とする200メートルでも記録の期待が高まる。
 
 男子100メートル背泳ぎ決勝は、この種目のアテネ五輪銅メダリスト・森田智己(セントラルスポーツ)が54秒03で7連覇を果たし、2大会連続の五輪代表入りを決めた。
「アテネから長かったし、辛かった。でもオリンピックに行ってナンボ。ここまでいろんな人に支えられた。感謝しています」
 レース後、ホッとした表情でこう語った森田。ここぞという場面ではきちんと結果を残しながらも、アテネ五輪後は怪我など決して順調ではなかった。「何回、水泳をあきらめようと思ったか分からないが、オレがいなきゃダメでしょと思いたかった」。2大会連続の五輪で、メダルへの期待も高まるが「4年間で世界はすごく動いている。こんなタイムがすごくないことも分かっている。200メートルも残っているので、100メートルで決まったからといって浮かれないようにいきたい」と堅実な言葉が続いた。
 
 同種目で2位に入り五輪代表入りを決めた宮下純一(ホリプロ)は感極まって涙も見せた。最後の接戦をものにしたのは、気持ちの強さだった。「(五輪出場が決まり)小さい頃から言い続けてきてやっとかなった。ただただ、嬉しい。最後の挑戦と決めていたので、20年間泳いできたすべてをこのレースに詰め込もうと思って、死ぬ気で泳ぎました。北京を水泳人生の最後を飾る舞台にしたい」。

 女子100メートル背泳ぎ予選で日本人としてこの種目で初めて1分を破る59秒96を出した中村礼子(東京SC)は、準決勝では1分00秒05で決勝進出を決めた。レース後には「もう一度59秒台を出してモノにしたかったので悔しい。予選より力みが出てしまった。落ち着いてレースをすればもっと記録が出ると思うので、自分を信じて頑張りたい」と17日に行われる決勝に向けて意気込んだ。