「ひるむことなく、同じ目線」でブラジルを初めて撃破した意義

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「いい守備から、いい攻撃」、その真骨頂であった。

 

 日本代表が14度目の対戦にして“サッカー王国”ブラジル代表を撃破した夜。2点リードされて折り返した後半、反撃は「いい守備」から始まっている。

 

 後半7分、ファブリシオ・ブルーノのパスミスを誘い、南野拓実が奪った1点目を振り返ってみたい。敵陣からのブラジルのスローイン、日本はボールを回収すると鈴木彩艶まで下げて前線で構える上田綺世に向けてフィード。こぼれ球を拾った堂安律のトラップは前に流れ、ボールはルーカス・パケタに渡ったものの、ここをボランチの鎌田大地が出ていって前を向かせない。パケタがバックパスを選択すると同時にプレッシングがスイッチオン。前も後ろも連動してハメ込み、パスの出しどころをつぶしたわけだ。

 

 前半はミドルブロック中心で構えたが、結果的に「自由」を与えたことが失点につながった。ならば、とその自由を奪おうとした。得点シーンの前にも鈴木が敵陣深く蹴り込み、敢えてボールを持たせてからプレッシングで追い込んでいる。9月のメキシコ代表との一戦でも効果を示したハイプレス戦術を準備し、ブラジル相手に成功させたことに意義がある。

 

 ハイプレスには当然リスクが伴う。前から連動してハメ込んでいくため、後ろは数的同数になる。つまりテクニックのあるブラジルに一人かわされてしまえば、一気にピンチを迎えてしまう可能性があるということ。日本は前で抜かれそうになればファウル覚悟で食い止めた。数的同数になっても、それぞれが局面で踏ん張った。個と組織がセパレートではなく、個と組織のハーモニーが日本に流れをもたらし、3ゴールにつながったのだ。

 

 もちろん「いい守備」は「いい攻撃」がセットでなければならない。

 

 0―1で敗れた前回、2022年6月の対戦においてはシュート数が4対18と圧倒的な差があったが、今回は12対10で上回っている。攻撃面において多くチャンスをつくれたことの何よりの証である。

 

 ブラジルは韓国代表との一戦からメンバーを入れ替えてきたとはいえ、世界トップクラスの強豪であることは言うまでもない。ブラジルはブラジルだ。日本開催の親善試合とて、初めてその高い壁を越えたことを純粋に称賛したい。

 

 北中米ワールドカップまで8カ月のこのタイミングで、日本はカナリア軍団から何を吸収しようとしたのか――。

 

 9月下旬に森保監督と話をした際、彼はこう語っていた。

「自分たちがやってきたことに対して自信を深めたいですし、一方で課題を感じたい。その両方得られればいいなとは思っています。ブラジルはワールドカップで最も優勝している国。臨機応変の戦いができるブラジルと対戦することで、我々がワールドカップの優勝を争う国になっていくために必要なものを掴みたい。そのためにはひるむことなく、同じ目線で戦っていきたいですね」

 

 相手がどんなやり方で来ようとも、結局は試合をコントロールしてしまうのがブラジル。手のひらで転がされている現実を突きつけられるのがこれまでだった。

 

 しかし今回はどうだ。

 

 指揮官の言葉どおり、「ひるむことなく、同じ目線」がピッチで体現されていた。ミドルブロックでブラジルの攻撃を阻むのが難しいと感じ取れば、ハイプレスで打開を試みたこともその一つ。ワールドカップ優勝という高い目標が彼らの視座を高くさせ、同じ目線に立って張り合おうとした。対メキシコ、対アメリカを経て、チームとしてきちんと積み上がっていることを証明したとも言える。

 

 森保監督が目指す一つの在り方として参考にしているのが、2022年のカタールワールドカップでベスト4まで勝ち進んだモロッコ代表だと思われる。

 

 カタール大会後にインタビューした際、刺激を受けたチームとして挙げていた。

 

「本当にいいチームだなって思いましたね。個と組織が融合して、強さとうまさの両方を兼ねそろえているから(3位決定戦までの)7試合をしっかりと戦えた。モロッコは自分たちが次に超えていくための(目標にすべき)チームです」

 

 まさに臨機応変という言葉が似合うのがモロッコ。フランス代表との準決勝では敗れたとはいえ、ボールを保持しても個と組織の強みを発揮できていた。その意味では日本も強国相手にボールを保持しつつ、ゲームをコントロールしていく術も高めていかなければならない。今回の失点シーン含め反省点も見つかったのだから、「自信と課題」その両方を手にできたことも大きい。

 

 最後に、どうしても付け加えたいことがある。

 

 3バックの一角に入った鈴木淳之介は3キャップ目ながら今後に期待を抱かせるプレーであった。球際では粘り強く対応し、ボールを刈り取るだけでなく攻撃の起点になることまでがセットだった。ケガ人が続出している最終ラインだが、楽しみな選手が新たに出てくるというのも今の日本の強みと言えるのではないだろうか。

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