今季より富山サンダーバーズのプレーイングコーチに就任した松井宏次です。実は3年前、同じ独立リーグの四国・九州アイランドリーグ(現・四国アイランドリーグPlus)でプレーしていました。生活はとても厳しかったものの、野球に専念することができるという点では、非常にいい環境だったと思っています。その後、2年間という短期間ではありましたが、NPBの世界を経験したことで、新たに見えてきたものもありました。もちろん、自分自身ももう一度NPBに戻るという気持ちでいます。しかし、それと同時にコーチとして若い選手たちに自分が経験してきたものを伝えることができたらと思っています。
 昨シーズンのサンダーバーズは、前期は首位の石川ミリオンスターズにわずか0.5ゲーム差の2位だったものの、後期は10勝21敗5分けで最下位でした。最大の敗因は、大事な場面でのミスにあったようです。実際に選手と接して思うのは、マジメな選手が多いということ。これはとてもいいことです。しかしマジメだけでは、ここぞという時に、緊張感でガチガチとなり、動けなくなってしまいます。

 僕自身は、緊張する場面では「当たって砕けろ!」と開き直り、頭でいろいろと考えるのではなく、気持ちで向かっていきます。その方が自分でも後悔しないプレーができるのです。そういう自分の姿を見せることで、若い選手にも吸収していってほしいなと思っています。

 悩みは“頭”ではなく“体”で解決

 3月からは合同自主トレーニング、そして今月1日からはキャンプがスタートしました。チームの戦力を見ても、なかなかの手応えを感じています。もちろん、進藤達哉監督は試合に勝つための組み立てを考えながら選手を起用していくわけですが、もう一つの狙いとしては選手一人一人に「野球を覚えてもらう」ことが挙げられます。個々の能力はあっても、やはりまだ漠然とプレーしている選手が多いのです。野球にはシチュエーションによって、必要な守備や打撃があります。そういう細かいことを一つひとつ理解して身に付けさせていきたいと思っています。

 僕自身は指導者として初めてのシーズンとなります。その僕が選手に求めたいのは、常に元気よく明るく、そして全力プレーをすること。もちろん人間ですから、時には悩むこともあるでしょう。しかし、頭で考えているだけでは何も解決はしませんし、上達はしません。とにかく実際にやって体に覚えさせること。これこそが成功への近道です。ですから、どんな時も下を向かずに、ハツラツと思い切りプレーしてほしいと思います。

 もちろん僕自身も現役プレーヤーとして全力でプレーします。NPB経験者である僕がひたむきな姿勢を見せることで、若い選手たちも自然とついてきてくれると思いますし、ひいてはそれがチームの勝利へとつながるはずです。時にはヒットでつなぎ、時には自らが犠牲となって走者を送り、さらには走塁でかき回す……。とにかくチームの勝利に貢献できるよう、精一杯プレーしたいと思います。

松井宏次(まつい・こうじ)プロフィール>:富山サンダーバーズプレーイングコーチ
1984年12月2日、静岡県生まれ。磐田農業高、東海大出身。卒業後はきらやか銀行、NAGOYA23、長崎セインツでプレーする。2009年、育成ドラフトで1位指名され、東北楽天に入団。昨季限りで自由契約となり、今季より富山のプレーイングコーチに就任した。
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