開幕からの4試合は香川に連敗、福岡ソフトバンク3軍に1分1敗。まだ今季の初勝利をあげられていません。しかし、打線は15日のソフトバンク戦で13安打を放つなど、決して状態は悪くないと見ています。それでも勝てない要因は攻守ともに大事なところでミスをしているからです。
 特に守りにおいては、やらなくてもいい失点をたくさんしています。3−10と大敗した8日の香川戦では先発の山崎慎一郎野原慎二郎がムダな四球を出して大量失点を喫しました。特に山崎は5回までまずまずの投球をしていただけに、もったいないの一語です。さらに今季2度目の登板となった15日のソフトバンク戦では、2−0とリードしながら不用意な1球で同点2ランを許してしまいました。

 打たれた場面は4回2死三塁。打席に入ったのは4番の外国人ジョシュ・ショートです。まだ塁も空いていることを考えれば、慌てて勝負する必要は全くありません。際どいところを突いて、最悪、四球でもやむを得ない状況でしょう。

 ところが山崎は初球で簡単にストライクを取りに行き、一発を浴びてしまいました。これは防げたと言っていい失点です。もちろん被弾の原因はキャッチャーにもあります。新人捕手の屋宜宣一郎はどうして初球から勝負する配球を選択したのか。痛い失敗を糧に学習してほしいと感じます。

 屋宜はキャッチャーとしてのみならず、バッターとしても素質のある選手です。しかし、リードで頭がいっぱいなのか、4試合を終えて打率.154と苦しんでいます。打席のなかで考え過ぎているため、なかなかバットが出てきません。野球というスポーツは積極性を失うと、いい結果には結びつかないものです。まだ経験も実力もないのですから、失敗は仕方ない。そう本人には伝えています。

 打席では狙い球を絞り、どんどん振っていく。そういう気持ちがまず彼には必要でしょう。真っすぐを狙っていて、変化球で空振り三振してしまうのは今はOKです。なぜ相手が変化球を投じてきたのか、それをよく分析し、切り替えて次の打席に臨めばいいだけです。バットを出さない限り、そういった勉強もできません。失敗をたくさんして、見つけた課題をひとつひとつクリアしていく。思い切ったプレーを屋宜には望んでいます。

 今季の高知は米独立リーグからやってきた新外国人のキース・ブラックオーを中心にしたオーダーを組んでいます。キースはパワーもあり、軸がぶれない好打者。日本の野球に適応すれば、どんどんホームランも増えてくるでしょう。3年前、リーグ史上最高の18本塁打を放ったフランシスコ・カラバイヨ(元オリックス)と比較しても、外野の守備力、走力は上です。

 あとはどのくらいNPBのスカウトにアピールできる長打力を示せるか。ガラバイヨは日本の野球にすぐ慣れて結果を残しました。キースは変化球への対応もまずまずですから、日本のストライクゾーンを早く身につけて打ちまくってほしいものです。

 キースの後を打つ5番の曽我翔太朗もこのオフ、ドラフト指名を狙っています。彼は昨季、打率.316を残し、今季もチーム第1号ホームランを放ちました。打撃に関しては充分、上のレベルでやれる力を持っています。課題は年間通してケガなく働ける体づくりと守備です。今季、曽我にはあえてショートでの出場機会を増やしています。NPBに行くには“打てる二遊間”との触れ込みも必要だと感じたからです。
 
 もちろんショート、セカンドのセンターラインは牽制があり、フォーメーションも複雑です。一人前になるには、やらなくてはいけないことがたくさんあります。しかし、僕も高校から南海に入団してサードからショートに移った人間です。ひたすら2軍でノックを受け、試合に出るなかで勝手に体が反応するところまで到達できました。曽我にもぜひ、高知でそのレベルまでたどりついてほしいと願っています。

 投手では左腕エースの吉川岳が、14日のソフトバンク戦で左肩に違和感を訴え、1イニングで交代となりました。肩の不調を訴えたのは初めてのため、しばらくは無理をせず、ローテーションも1回飛ばす方針です。となると、この試合にロングリリーフをこなした山中智貴を先発に回すことも考えなくてはいけないでしょう。5月のゴールデンウィークにかけて試合が続きますから、ピッチャーの頭数はどうしても必要です。 

 その点、短いイニングを任せられる中継ぎとして2人の新人に期待しています。以前もとりあげた孫一凡吉岡憧平です。孫はキャンプで出遅れていましたが、このところブルペンでも100球以上投げられるようになり、状態が上がってきました。間もなくデビュー登板の機会は巡ってくるでしょう。またサイドスローの吉岡もソフトバンク相手に1イニングをピシャリと抑えています。

 彼ら2人が1イニングずつしっかり投げてくれれば、抑えには愛媛から移籍した井川博文がいますから、先発はかなりラクになります。6回くらいまで頑張れば、後ろのピッチャーに託せるからです。井川は連投もでき、投げるのが大好きなタイプでクローザーに向いています。変則フォームですから、結果を出せばNPBからも注目されるでしょう。孫と吉岡は、その井川につなぐ役割をぜひ果たしてほしいと考えています。

 今回、ソフトバンクと2試合やってみて、3軍の選手でも昨年よりレベルが上がっていることを実感しました。ここ数年、育成面に力を入れた成果で若手が順調に伸びているようです。それが昨季の日本一につながったのでしょう。ただ、育成に関してはアイランドリーグも負けるわけにはいきません。昨季はソフトバンクには1勝7敗と大きく負け越しました。今季はソフトバンク戦の成績も順位や個人記録に加算されますから、少なくとも対等に戦えるよう、日々、選手たちを鍛えていきたいと思っています。

 18日には高知球場で今季2度目のナイトゲーム(対徳島、18時〜)が開催されます。ここで、まずは今季初勝利といきたいものです。新しい照明設備の下、仕事帰り、学校帰りに、たくさんの皆さんに応援していただけるよう頑張ります。


定岡智秋 (さだおか・ちあき)プロフィール>: 高知ファイティングドッグス監督
 1953年6月17日、鹿児島県出身。定岡三兄弟(次男・正二=元巨人、三男・徹久=元広島)の長男として、鹿児島実業から72年、ドラフト3位で南海(現ソフトバンク)に入団。強肩の遊撃手として河埜敬幸と二遊間コンビを形成した。オールスターにも3回出場し、87年限りで現役を引退。その後、ホークス一筋でスカウトや守備走塁コーチ、二軍監督などを歴任。小久保裕紀、松中信彦、川崎宗則などを指導し、現在の強いソフトバンクの礎づくりに貢献した。息子の卓摩は東北楽天の内野手。08年より高知の監督に就任。現役時代の通算成績は1216試合、打率.232、88本塁打、370打点。
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