第222回 遊んだブラジルと諦めなかった日本

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 この10月、日本代表はパラグアイ代表に2対2の引き分け、ブラジル代表に3対2で逆転勝利を収めました。ここでは、ブラジル代表戦に焦点を当てて語りましょう。

 

 緊張の糸が切れたブラジル

 

 ブラジルの後半の出来が少々お粗末な面もあり、評価するのが難しくなったなぁ、というのが、僕の率直な感想です。

 

 まずは前半を振り返りましょう。ブラジルは鮮やかなパスワークで日本の左サイドを切り崩し、易々と先制点を決めました。基本練習で見られる「当てて落として、3人目」を試合中に見せつけられました。あの正確でいて、スピードも速いパスワークは見事でした。

 

 ブラジルの2点目も綺麗なかたちでした。今度は日本の右サイドをパスで崩し、遊び心を感じさせる浮き球のパスでペナルティーエリアに侵入。フリーでシュートを打たれ、ゴールを許しました。ただ、ブラジルの選手たちは「これで十中八九、勝った」と思ったのでしょう。

 

 2点差になり、ブラジルは緊張の糸が切れたように感じました。それは、ハーフタイムを明けてからも同様。簡単に言えば、“遊んじゃったかな”という印象でした。

 

 戦い方を変えた日本

 

 ここからは、日本の良い点を語りましょう。前半を終えてブラジル相手に0対2でも全く諦めなかったメンタリティーは称賛に値します。「目標をみんなで達成するんだ」という姿勢を感じさせたのが、後半の日本。ブラジルだろうが、どこの国と対戦しようが、そういう姿勢を見せられるのは、すごいなと思います。

 

 カタールワールドカップでの経験が、選手たちに相当自信をつけたようです。自分たちには底力がある、ここを凌げば、耐えれば、まだまだいける、という自信がある。日本人持ち前の技術に加え、ボディーコンタクトも強くなってきている。

 

 前半にしても日本は、ミドルブロックを敷いて前から追いかけず体力を温存。そして、後半は一気に前からプレスをかけ、それが日本の1点目に繋がりました。前半から、FW上田綺世はパスコースを慎重に消していた。彼の感覚的なもの、戦術理解度が高いからこそだと思います。ワントップとして、プレスのかけ方を十分心得ているように映ります。彼が痺れを切らし、ひとりで闇雲に追うところを見たことがありません。

 

 この一戦に関して、もう1点。森保一監督は後半9分にMF久保建英に替えてMF伊東純也をピッチに投入しました。従来通りなら、伊東が右ウイングバックに入り、MF堂安律が右シャドーにポジションを移します。しかし、ブラジル戦では堂安はそのまま右ウイングバック、伊東を右シャドーで起用しました。

 

 この采配が17分の2点目を呼び込みました。堂安が右サイドでボールを持つと、前を走る伊東に浮き球のスルーパス。堂安が見事、伊東のスピードを生かしました。伊東は冷静にクロスをファーサイドに供給すると、これをMF中村敬斗がゴールに流し込みました。

 

 最後は左コーナーキックから上田が頭で合わせて、ブラジルを相手に逆転勝利しました。この勝利の後、日本はポッド2が確定し、北中米ワールドカップの抽選で、優位になりました。強豪が複数、同組になるいわゆる“死の組”に入る可能性が低くなりました。これは、喜ばしいことです。目標である優勝に向けて、気を緩めず、前進し続けてほしいものです。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。24年1月、長く務めた鹿島ハイツスポーツプラザを退職。新たな夢の実現のため、日々奮闘中。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。

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