誕生のうたが促す最期からの逆算 ~高木正勝さんの「Nova」~
プロフィギュアスケーター・羽生結弦が総指揮を執り、出演したYuzuru Hanyu ICE STORY 3rd “Echoes of Life” TOURのエンドロールに使用された楽曲が11月8日、インターネット上で公開された。
この楽曲の作者は、NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』のドラマ音楽、『おおかみこどもの雨と雪』『バケモノの子』の映画音楽、CM音楽などの作曲家であり、執筆活動でも活躍する高木正勝さんだ。
楽曲名は「Nova」。Echoes of Lifeで、羽生が演じた主人公の名前に由来する。
Echoes of Lifeの幕開きとなった2024年12月7日、私はエンドロール曲をさいたまで聞いた。柔らかい音に、心地よさを覚えたことはいまも記憶に新しい。それと同時に、「あぁ、終わってしまった」と少しの寂しさも。
作曲した高木さんは、この曲について<誕生のうた>と短くXで述べた。
低い音階は、木々、葉、動物たちの脈がうずいている様子を想起させた。高い音階は、雨のしずくが葉っぱの先から滴り落ちる様子を想起させた。小鳥のさえずりは、植物だけでなく動物も育っている様子を伝えた。
軽やかな旋律は、Novaの足取りの軽さ、機嫌の良さをイメージさせた。悩んだ末に出した「答え」を、植物や蝶、小鳥たちと喜んでいるようだ。時に悩むことはあるものの、一歩ずつ前進するNovaが筆者のまぶたの裏に映った。
この曲は最初、単音で始まり、和音になる。最後の方、またしても単音に戻り、キーがあがる。そしてゆっくり、優しく、温もりに包まれるように終わる。
まるでゆっくり、優しく、温もりに包まれながら息をひきとるように。キーがあがるあたりに、命が天にのぼる絵を頭に描いた。
どのように過ごせば、そんな最期を迎えるのだろう。
一般論的に、死を迎えるにはまだ早いと言われる筆者が、この問いに対して完全解答を出すのは難しい。ただ、若輩者でもわかることはある。それは、今を懸命に生きることだ。日々、目標に向かい、すべきことをする。ストイック過ぎても心が疲弊する。時には趣味に時間を割いたり、友人との会話を楽しんだり――。これらの繰り返しこそが、温もりのある最期への道な気がする。
この楽曲から、命の流れをありありと感じた。いまの筆者にとって、それが高木正勝さんの「Nova」である。
<誕生のうた>ながら、終わりまで考えさせられた。誕生は終わりの始まりだからだろうし、<誕生のうた>をエンドロールに使った逆説的演出もまた、そうさせたのだろう。
パーソナリティの根源である“わたし”の命に、温もりのある最期を迎えさせてあげたい。
(文/大木雄貴)