森保監督100試合目。“前線3枚替え”から見えた「共有の成熟度」

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 選手交代が効果を発するか否か。

 

 そのカギを握る一つの要素として、指揮官のメッセージを全員が読み取って共有しつつプレーに落とし込めるかにある。

 

 11月18日、東京・国立競技場で行なわれたボリビア代表との一戦は、森保一監督が2018年に日本代表を初めて指揮してからちょうど100試合目にあたるメモリアルマッチとなった。ベンチとピッチによるスムーズな意思疎通が見えたのは、後半22分、前線の3枚を上田綺世、中村敬斗、町野修斗に一気に入れ替えたシーンだ。

 

 前半4分に鎌田大地のゴールで先制して以降、流れは徐々にボリビアに傾きつつあった。1994年以来、実に32年ぶりとなるワールドカップ出場を目指すボリビアは来年3月に大陸間プレーオフを控えるとあって、モチベーションは高かった。ラインを割りそうなボールを必死に追いかけ、局面のバトルもタフで、ひるまない。後半に入ると、アンカーを引き込んで3バックにしてからは両ストッパーを前で対応させることで守備も落ち着きを取り戻していた。その状況を打破すべく、森保監督が動いたわけだ。

 

 上田をトップに、そして中村、町野をシャドーに。

 

 フレッシュなこの3枚がプレスのスイッチを入れ直し、連動かつコンパクトな守備を促したことで押し込んでいき、チームのモットーである「いい守備からいい攻撃」につなげていく。

 

 交代から4分後だった。

 

 ペナルティーエリア内に深く入って堂安律からパスを呼び込んだ中村のグラウンダーのクロスを、ゴール前に詰めていた町野がひざで押し込んで2点目を奪った。

 

 ボリビアのオスカル・ビジェガス監督はここを分岐点として挙げていた。

「前半20分過ぎからゲームをコントロールでき始め、戦術面に修正を加えて後半は主役としてプレーできたが、いい時間を迎えていたところで2失点目を喫して流れが変わってしまった」

 

 一方、森保監督はどのような考えで“前線3枚替え”に至ったのか。試合後の会見でこう述べている。

 

「前線の選手が悪かったということではありません。2点目を獲りにいくこと、より攻守に迫力を持ってアグレッシブに相手のゴールに迫っていけるように、プレッシャーを掛けていけるようにと考えていました。敬斗はウイングバックで出ることが多いですけど、シャドーとしてもプレーできる。ゴールの近いところで起点になれるし、得点にも絡めるということで(シャドーで)起用したいな、と。マチ(町野)に関してもトップでもシャドーでも使えるというところ、相手にプレッシャーを掛ける、迫力を持って相手のゴールに向かっていくというところを期待していました。綺世に関してはさらに推進力を持てるように、起点としてもボール保持率を上げていけるようにということで交代しました」

 

 前線が息を合わせてエネルギッシュに動くことで、停滞気味だったチームの潤滑油となって攻守にアグレッシブな姿勢を強めた。その先に町野の2点目、中村の3点目があった。

 

 中村をこれまで主に使ってきた左ウイングバックではなく、左シャドーに置いたのもミソだった。このパターンはアップセットを起こした10月のブラジル代表戦にも似ている。後半に伊東純也を投入するにあたってこれまでの右ウイングバックではなく右シャドーに置いて、堂安律を動かさないという判断が当たった。指揮官に尋ねた際、彼はこのように応じていた。

 

「フレッシュな状態の純也を前に置くことで、前線からプレッシャーを掛けながら攻撃につなげていきたい。その判断があったのと、律が守備において対応できていたので崩したくなかったところもあります」

 

 今回も前田大然をそのまま左ウイングバックに残し、フレッシュな中村を前に置いた。守備の迫力をそのまま攻撃のエネルギーに変換させたあのブラジル戦の経験が、ここでも活きた。フレッシュな状態の前線でプレスを強めるだけでなく、攻撃に移れば上田、中村、町野がそれぞれを活かしながら絶妙のハーモニーを醸し出す。特に中村は左に固執しない自在な動きで相手に捕まえさせず、厄介な存在であり続けた。ボリビアに引き込まれつつあった流れを、前線がけん引役となってもう一度日本のペースに引き込んだわけだ。システムを変えることなく、メンバーを入れ替えながら相手の狙いを封じ切ったことにも意義がある。

 

 ベンチの意図をくみ取りつつ、プレーヤーがやりたいことを表現していく。このベンチとピッチの共有から生まれる躍動が、100試合積み上げてきている財産とも言える。来年に控える北中米ワールドカップに向けて、期待を抱くことができた2025年のラストゲームであった。

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